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猫貴族の新たな使命!社交界の荒波に立ち向かうニャ

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 仮面舞踏会での騒動から一週間が過ぎた。
 僕の日常は、以前とは打って変わってしまった。

「ウル様、本日のスケジュールです」

 ジェームズの声で目を覚ます。
 窓から差し込む朝日に、僕の銀色の毛並みが淡く光る。

「ふぁ~あ、おはようジェームズ」
 大きくあくびをすると、尻尾がふわりと広がった。

「午前中は貴族院での会議、午後からは慈善活動の視察です。そして夕方には……」

「にゃんて忙しいんだ……」
 思わずため息が漏れる。

 仮面舞踏会での出来事が広まってから、僕への注目はさらに高まった。
 多くの貴族や政治家が、僕の「影響力」に興味を示すようになったのだ。

 朝食を取りながら、僕は今日の予定を確認していた。
 テーブルの上に座る僕を、執事のジェームズが心配そうに見つめている。

「ウル様、お体に気をつけてくださいませ。無理なさらぬよう」

「ありがとう、ジェームズ。でも、僕にしかできないことがあるなら……頑張らなきゃ」

 そう言いながらも、内心では不安でいっぱいだった。
 小柄な女性ほどの背丈の猫が、偉い人たちと肩を並べて話し合う。
 考えただけでも気が遠くなりそうだ。

 貴族院に到着すると、多くの視線が僕に集まった。
 ささやき声が聞こえる。

「あれが噂の猫貴族か」
「かわいいだけじゃないらしいぞ。不思議な影響力があるとか」
「うちの派閥に引き込めないものかな……」

 僕は少し緊張して、耳をぴくぴくと動かした。

 会議が始まると、様々な問題が議論された。
 僕はできる限り真剣に耳を傾けた。
 時折、意見を求められると、猫らしい視点で答えるよう心がけた。

「お魚の輸入税については、もう少し柔軟に考えてもいいんじゃないかにゃ。庶民の食卓を豊かにすることで、国全体が幸せになると思うんです」

 僕の発言に、多くの貴族が耳を傾けた。
 不思議なことに、最初は反対していた人たちも、僕の言葉を聞いているうちに考えを改めるようだった。

 午後の慈善活動視察では、孤児院を訪れた。
 子供たちは、僕を見るなり目を輝かせた。

「わぁ! 本当に猫の貴族さまだ!」
「触ってもいいですか?」

 僕は優しく微笑んで、子供たちに囲まれた。
 毛並みを撫でられたり、耳を触られたりしながら、僕は子供たちと楽しく過ごした。

 その様子を見ていた孤児院の職員が、涙ぐみながら言った。

「ウル様のおかげで、子供たちがこんなに笑顔になるなんて……本当にありがとうございます」

 その言葉を聞いて、僕は自分の役割を少し理解できた気がした。


 夕方、疲れ切って帰宅した僕を、ロナウドが出迎えてくれた。

「お疲れ様、ウル。大変だったろう?」
「うん……でも、なんだか充実してたよ」

 ロナウドが僕の背中を優しくさすってくれる。
 その温もりに、疲れが少しずつ癒されていく。

「ねえ、ウル」ロナウドが真剣な表情で言った。「君の影響力は、本当に素晴らしいものだと思う。でも、それに振り回されないでね。君はまず、ウルであることが大切なんだ」

「ロナウド……」

 その時、執事のジェームズが部屋に入ってきた。

「ウル様、ムーンブルーム家のリリア様からお手紙が届いております」

「リリアから?」
 僕は少し驚いて、手紙を受け取った。

 封を開くと、そこには優雅な筆跡で次のように書かれていた。

『親愛なるウル様

 お元気でしょうか。仮面舞踏会以来、あなたのことが気がかりでなりません。
 もしよろしければ、明日のお茶会にいらしていただけないでしょうか。
 ゆっくりとお話しできればと思います。

リリア・ムーンブルーム』

 手紙を読み終えた僕の胸が、少しドキドキした。

(リリアと、ゆっくり話せるのか……)

 その夜、窓辺に座って満月を眺めながら、僕は今日一日を振り返った。
 確かに大変だったけど、多くの人の笑顔を見ることができた。
 それは、とても幸せな気持ちにさせてくれた。

(これが僕の新しい役割なのかな)

 そう考えながら、僕は静かに誓った。

(これからも猫貴族として、みんなの力になれるように頑張ろう。でも、ただのウルであることも忘れずに)

 満月の優しい光に包まれながら、僕は新たな決意と共に、明日への期待を胸に秘めたのだった。
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