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本編
13 別の男のにおいに嫉妬する海ぼうすさん①
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朝起きたら上司の頭が腕の中にあった。ひえっ
見覚えのない部屋に見覚えのないベッド。そして、下着以外を身につけていない俺と上司は、ベッドの上で仲良く抱き合っていた。いやまて落ち着け。昨晩は一体何があった?
たらふく酒を飲まされて泥酔したところまでは覚えてる。問題はその後だ。状況から察するに、自力で帰れないくらい酔った俺を上司がホテルに放り込んでくれたっていう感じか。抱き合ってる意味はわからないけど。
ゆ~っくり上司の背中に回した腕を引き剥がしてベッドからの脱出を試みる。上司から体を引き離そうとしたら、上司の顔が胸元にすり寄ってきて「は!!??!?」とでかい声が出た。女性相手と勘違いしてるんじゃなかろうか。
「……クッ」
「あ、」
でかい声が出た直後、安元さんが堪えきれなかったような笑い声を漏らした。まさか、ずっと起きてました?
「すげぇ慌てっぷり。そんな驚かなくてもいいだろ」
「いや、驚きますって……。その、昨晩は迷惑かけてすみません。ホテルまで用意してくださって……」
「べーつにぃ」
こうなってる原因の大半はあなただってこと覚えてるんですからね、という言葉は噛み殺す。
昨晩はなんやかんやで言いくるめられて、たくさん酒を飲まされた気がする。普段は陽キャな割に部下に無茶なことを言わない人なのだが、昨晩は彼も酔っていたのだろうか。朧気な記憶だが、かなり強引な手口で飲まされたのを覚えている。
「すみませんでした。すぐにホテル出ますので、」
「ああ?今日は休みだろうが。ゆっくりしていけばいいだろ」
言葉を遮って安元さんはそう言うと、身体を起こそうとしていた俺の肩を掴んで自らの方に引き寄せた。裸同士の上半身が触れ合う。びっくりしすぎてまた大きな声が出そうになる。な、なんでこんなに距離が近いんだ。俺を別の誰かと勘違いしてるのか?
「鍵田ぁ」
名前をしっかり呼ばれてる……!
安元さんの肌は俺の不健康そうな色と違い、小麦色に焼けている。こうして密着すると、その違いがよくわかった。
汗をだらだら流していると、俺の背に手を回していた安元さんがもぞりと動いた。ずる、と頭が下に下がっていく。胸元に顔を埋められて、本格的にまずいと思ったのも束の間。
「っひ、」
安元さんが俺の胸に舌を這わせた。生暖かいそれが乳首を優しく一舐めすると、ぐりっと突起を弾かれる。
ちょ、やめ、やめろばか!
「すみません!」
この人、寝ぼけてるんだ。そう思って強めに拳を腹に食らわすと、流石に上司の力が緩む。すみません。でも、お互いのためなんです。ついでにこの拳で正気に戻ってくださると嬉しいです。
「うう……」と上司が呻いているその隙に腕から脱出すると、服を着て急いで部屋から出た。びっくりした。びっっっくりした。
朝っぱらから女性にあんなことをするのが、あの人にとって普通だったりするんだろうか。モテそうな上司だし、チャラそうだし有り得そう。
しかし、と俺は先程のことを思い出す。上司の頭で胸元がよく見えていなかったのだが、感触的に、上司の舌が普通じゃない感じがした。舌が2つあったというか。
もしかしてあの人の舌、2つに分かれていたのか?スプリットタンってやつ?さすが陽キャ。社会人でそんなことをしてるとは、怖いもの知らずだ。
すっかり朝帰りになってしまった。クラゲさんを一晩放置していたことに気づいて、俺は急いで部屋の鍵を開けると風呂場に向かった。
何を考えているのかわかりにくいやつではあるが、感情は豊かなやつであるということを知っている。
「クラゲさん、ただいま。遅くなってごめんね」
「……」
返事はない。やっぱり怒っているみたいだ。クラゲさんは完全に水の状態になっていて微動だにしない。虚空のような金色の目が、天井をじっと見つめていた。
指を入れてみると、クラゲさん(液体)は冷たくなっていた。し、死んでる……
こういうときはクラゲさんとお風呂に入ってあげると機嫌が良くなる。どのみち湯を浴びたいと思っていた俺は脱衣所で服を脱ぐと、すぐに浴室に入った。
「いつもくらいの湯加減で、お願いできる?」
「……」
返事はないが、とりあえず身体を洗うことにする。俺が体を洗っている間も、クラゲさんが動く気配はなかった。
洗い終わってクラゲさんの湯加減を確かめると、いつもと同じくらいの温度に温まっていた。怒っているときでも、俺の言うことは聞いてくれるんだ。そのことが嬉しくて、思わず笑みが溢れた。
やけに大人しいクラゲさんに寄りかかりながら、お湯に浸かる。湯船って最高だなぁ。
クラゲさんがちょっかいかけてこないので、久々に平穏に風呂を楽しめている気がする。彼には悪いけど、偶にはこういうのもいいな。朝風呂ってのもいい。
ただ、今日は休みとはいえ、いつまでもこうしていられるわけではない。洗濯物は溜まってるし、食料品の買い物や掃除もしばらくしていないから、この土日で片付けておかないと。できれば今日の午前のうちに終わらせて、あとはゆっくりしたい。
見覚えのない部屋に見覚えのないベッド。そして、下着以外を身につけていない俺と上司は、ベッドの上で仲良く抱き合っていた。いやまて落ち着け。昨晩は一体何があった?
たらふく酒を飲まされて泥酔したところまでは覚えてる。問題はその後だ。状況から察するに、自力で帰れないくらい酔った俺を上司がホテルに放り込んでくれたっていう感じか。抱き合ってる意味はわからないけど。
ゆ~っくり上司の背中に回した腕を引き剥がしてベッドからの脱出を試みる。上司から体を引き離そうとしたら、上司の顔が胸元にすり寄ってきて「は!!??!?」とでかい声が出た。女性相手と勘違いしてるんじゃなかろうか。
「……クッ」
「あ、」
でかい声が出た直後、安元さんが堪えきれなかったような笑い声を漏らした。まさか、ずっと起きてました?
「すげぇ慌てっぷり。そんな驚かなくてもいいだろ」
「いや、驚きますって……。その、昨晩は迷惑かけてすみません。ホテルまで用意してくださって……」
「べーつにぃ」
こうなってる原因の大半はあなただってこと覚えてるんですからね、という言葉は噛み殺す。
昨晩はなんやかんやで言いくるめられて、たくさん酒を飲まされた気がする。普段は陽キャな割に部下に無茶なことを言わない人なのだが、昨晩は彼も酔っていたのだろうか。朧気な記憶だが、かなり強引な手口で飲まされたのを覚えている。
「すみませんでした。すぐにホテル出ますので、」
「ああ?今日は休みだろうが。ゆっくりしていけばいいだろ」
言葉を遮って安元さんはそう言うと、身体を起こそうとしていた俺の肩を掴んで自らの方に引き寄せた。裸同士の上半身が触れ合う。びっくりしすぎてまた大きな声が出そうになる。な、なんでこんなに距離が近いんだ。俺を別の誰かと勘違いしてるのか?
「鍵田ぁ」
名前をしっかり呼ばれてる……!
安元さんの肌は俺の不健康そうな色と違い、小麦色に焼けている。こうして密着すると、その違いがよくわかった。
汗をだらだら流していると、俺の背に手を回していた安元さんがもぞりと動いた。ずる、と頭が下に下がっていく。胸元に顔を埋められて、本格的にまずいと思ったのも束の間。
「っひ、」
安元さんが俺の胸に舌を這わせた。生暖かいそれが乳首を優しく一舐めすると、ぐりっと突起を弾かれる。
ちょ、やめ、やめろばか!
「すみません!」
この人、寝ぼけてるんだ。そう思って強めに拳を腹に食らわすと、流石に上司の力が緩む。すみません。でも、お互いのためなんです。ついでにこの拳で正気に戻ってくださると嬉しいです。
「うう……」と上司が呻いているその隙に腕から脱出すると、服を着て急いで部屋から出た。びっくりした。びっっっくりした。
朝っぱらから女性にあんなことをするのが、あの人にとって普通だったりするんだろうか。モテそうな上司だし、チャラそうだし有り得そう。
しかし、と俺は先程のことを思い出す。上司の頭で胸元がよく見えていなかったのだが、感触的に、上司の舌が普通じゃない感じがした。舌が2つあったというか。
もしかしてあの人の舌、2つに分かれていたのか?スプリットタンってやつ?さすが陽キャ。社会人でそんなことをしてるとは、怖いもの知らずだ。
すっかり朝帰りになってしまった。クラゲさんを一晩放置していたことに気づいて、俺は急いで部屋の鍵を開けると風呂場に向かった。
何を考えているのかわかりにくいやつではあるが、感情は豊かなやつであるということを知っている。
「クラゲさん、ただいま。遅くなってごめんね」
「……」
返事はない。やっぱり怒っているみたいだ。クラゲさんは完全に水の状態になっていて微動だにしない。虚空のような金色の目が、天井をじっと見つめていた。
指を入れてみると、クラゲさん(液体)は冷たくなっていた。し、死んでる……
こういうときはクラゲさんとお風呂に入ってあげると機嫌が良くなる。どのみち湯を浴びたいと思っていた俺は脱衣所で服を脱ぐと、すぐに浴室に入った。
「いつもくらいの湯加減で、お願いできる?」
「……」
返事はないが、とりあえず身体を洗うことにする。俺が体を洗っている間も、クラゲさんが動く気配はなかった。
洗い終わってクラゲさんの湯加減を確かめると、いつもと同じくらいの温度に温まっていた。怒っているときでも、俺の言うことは聞いてくれるんだ。そのことが嬉しくて、思わず笑みが溢れた。
やけに大人しいクラゲさんに寄りかかりながら、お湯に浸かる。湯船って最高だなぁ。
クラゲさんがちょっかいかけてこないので、久々に平穏に風呂を楽しめている気がする。彼には悪いけど、偶にはこういうのもいいな。朝風呂ってのもいい。
ただ、今日は休みとはいえ、いつまでもこうしていられるわけではない。洗濯物は溜まってるし、食料品の買い物や掃除もしばらくしていないから、この土日で片付けておかないと。できれば今日の午前のうちに終わらせて、あとはゆっくりしたい。
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