白猫の嫁入り

キルキ

文字の大きさ
上 下
22 / 30

22 嫉妬

しおりを挟む
大輝に告白された挙げ句、ちゅーをされてしまった。そして、自分の気持ちを整理した結果相思相愛だったことが判明した。

あの日の次の日、大輝はすっかりいつもの調子に戻っていた。前日ことを覚えているのか今のところわかっていないけど、大輝の体調が良くなったのはとても喜ばしい。心底ほっとした。もう二度と彼には倒れてほしくない。

……キスしたこととか、覚えているのかなあ。平然と一緒にお風呂に入ったりしてるから、忘れてそうな気もするんだけど。ああ、そういえば、あの次の日のお風呂は身体のあちこちに痣を作っていることがバレて怒られたんだっけ。奥さんに手当はされていたものの、しばらく治らなかったなぁ。

怒涛のことに忘れそうになっていたけど、そろそろ使命のことを何とかしないと。

あと、みきちゃんの想いを知っているからちょっときまりが悪いし。よくよく考えたら、将来大輝が彼女と付き合う可能性もなくはないから……え、俺たちって恋のライバルってわけ!?

だって、そうだよねいくら彼が俺の事好きって言ったとしても、いつか変わるかもしれないし。それに、猫である俺よりも人間であるみきちゃんのほうがよっぽど現実的だし。

……なにがどうあれ、使命はちゃんと果たさないとな。そうしないと俺も自由に喋れないし。

「とらまるー、何処にいるの?……ああ、そこに居たんだ」

ちゃぶ台に顎を載せてごろごろしていたら、大輝が部屋に入ってきた。彼は俺を見るなり近づいてくると、俺のすぐ後ろに腰を下ろす。

え、どうしたんだろう。

動いていいのかわからなくてじっとしていると、髪に櫛を通された。

「だいき?」
「新しくとらまるに櫛を買ってみたんだ。猫のときに使っていたブラシはもう使えないし」

赤い櫛を見せてくれる。金色で百合の花がおしゃれな感じで描かれている櫛だった。首輪の色も赤だったし、大輝は赤が好きなのかもしれない。

「きみ、髪の毛がふわふわだから朝の寝癖すごいんだよね。もっと早く買えばよかったなー」

再び髪を梳かれ始める。時々肌に大輝の手が当たってくすぐったい。

でも、なんかこれ、大輝に撫でられているみたいで気持ちいいなあ。

優しい手付きに口をだらしなく緩めてテーブルに溶けていると、縁側の方から誰かの声が聞こえてきた。この声は……みきちゃん?

「大輝くん!とらまるに会いに来たよー」

ビニール袋を片手に持ったみきちゃんが、庭からこちらに手を降っている。俺が手を振替している間に、大輝は慌てたように彼女のもとに向かった。この様子だと、みきちゃんが今日来ることを知らなかったらしい。俺もそんな話聞いてないし、おそらくみきちゃんが事前連絡無しに来たのだろう。

「みきちゃん?いらっしゃい。突然だからびっくりしたよ」
「ごめんね!でも、大輝お兄ちゃん、この前は風邪で倒れたって聞いたから心配になっちゃったの。もう大丈夫なの?」
「うん。もうすっかりね。心配させてごめんよ」
「いえいえ!これ、お見舞いに持ってきたお菓子だよ」

みきちゃんがビニール袋を大輝に渡す。おいおい、すっかりデキる女じゃないか。もしかして俺よりも気が利く……?

「それと、あそこにいる人は友達?見たことない人だけど、だあれ?学校の友達?」
「あー、彼は……えっと」

自分のことを言われていることに気づいて、背筋を伸ばす。
彼女からしたら俺とは初対面だ。怖がらせないようになるべく顔に笑みを浮かべる。年上の男って女の子からしたら脅威だからな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました

ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。 愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。 ***************** 「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。 ※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。 ※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。  評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。 ※小説家になろう様でも公開中です。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼 *全12話+後日談1話

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...