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第五幕【ヒーローの夢】
5-12【その心、その志、その雄姿(1)】
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フラムディウスを中段に構え、刃を左に傾ける。
手前の刃に、空いていた左手を添える。
「……行くよ、ロックン」
その言葉に応えるように、刃で燃え盛る炎がアデーレの左手に燃え移り、左腕全体を炎で包む。
アデーレの身体には熱さもなければ、火傷もない。
これは邪悪を焼き尽くす神聖なる聖火。
ヴェスティリアだけではなく、守るべき人々も決して傷つけることはない。
右手に持ったフラムディウスを肩に担ぎ、燃え盛る左腕を魔獣たちの前へ。
左脚を前方に出し、後ろの右脚にありったけの力を込める。
火花を散らす右脚。踏みしめる芝生は無事だ。
「ああ。行こう!」
景気の良いアンロックンの声が、アデーレの心を勇気づける。
アデーレは実感しているのだ。今この手にある神様と、心を通わせていると。
エスティラの声援。アンロックン……ヴェスタとの共感。
もはやアデーレに、前進するのをためらう気持ちなど一片も存在しない。
込めた力の全てを解放するように、右脚を踏み出す。
その瞬間、アデーレの身体は常人の目では追いつけないほどのスピードで、魔獣の群れの前へと急接近した。
それは魔獣も同じであり、見事な縮地を決めたアデーレに、何人も反応することが出来なかった。
しかし、それでアデーレは止まらない。
すぐさま左腕を突き出し、目の前にいた牛頭の魔獣の首を掴む。
人には燃え移らぬ炎も、魔獣相手ならば容赦なく引火する。
掴まれた魔獣の身体は一瞬で燃え盛り、言葉にならぬ絶叫を上げる。
「はあああぁぁ……ッ!!」
右手にフラムディウス、左手に燃える魔獣を構えたアデーレ。
そこからコマのように回転。更に前進し、魔獣の群れへと突っ込む。
多数の魔獣に炎が引火し、襲い来るフラムディウスの刃によって切り裂かれる。
これこそ炎が持つ真の恐怖。
文字通り、数など何の問題でもなかった。
アデーレが跳躍し、左手の魔獣を群れの奥へと投げつけた。
その燃え盛る炎に魔獣たちは恐怖し、慌てて火の玉を避けるように散る。
投げ捨てられた魔獣の身体は地面に叩きつけられ、粉砕される。
その時、地面へ落下するアデーレを、今がチャンスと思ったのか片腕の巨人が襲い来る。
変身中のアデーレに攻撃した、ムカデの腕を持つ魔獣だ。
着地前の人間というのは、当然ながら無防備と言える。
しかし、この魔獣が相手しているのは炎の祝福を受けた戦士だ。
「そんなんじゃだめだね!」
自信に満ちたアンロックンの声。
それと同時に、フラムディウスからジェット噴射のように炎が吹き上がり、アデーレの身体を一気に前進させる。
驚愕する魔獣。
アデーレは一切表情を変えることなく、その推進力を乗せた回転斬りによって、魔獣の胴体を一刀両断。
更に噴出する炎の余波が周囲の牛頭に引火。更に多くの魔獣を討伐する。
「アデーレ、上だ!!」
見上げるアデーレ。
今度は巨大サイクロプスの足が、アデーレを踏みつぶそうと迫る。
直撃までほとんど時間はない。
それでもアデーレは、慌てることなくフラムディウスを……地面に突き立てる。
両手で柄を持ち、身体を一気に跳ね上げる。
それはまさに、剣を持ったままの逆立ち状態だ。
「ロックン、やって!」
「任せろッ!!」
二人の声が重なり、先ほどよりも強力な炎がフラムディウスから噴出される。
猛烈な炎は地面を伝播するように広がり、剣を伝った炎はアデーレの全身に燃え移る。
更に勢いを増す炎。その推進力は、地面では抑えきれないほどのものに達する。
巨人の足の裏めがけて、燃え盛るアデーレの脚がロケットのように飛び上がる。
その勢いはすさまじく、質量において圧倒的に有利なサイクロプスの足を完全に押し返してしまった。
よろめくサイクロプス。
逆さに上昇するアデーレは、そのままの姿勢で切っ先をサイクロプスに突き刺す。
サイクロプスに沿って上昇する刃は、勢いを落とすことなくその巨体を切り裂く。
最後はその頭よりも高く上がったアデーレの斬撃により、サイクロプスは一刀両断されてしまった。
刃から一瞬だけ炎が噴出する。
その勢いによってアデーレの身体は回転し、再び頭を上に向ける。
地上を見下ろすと、魔獣たちの混乱具合が見て取れた。
一切の抵抗を許すことなく。数的有利を一切許すことなく。
たった一人の戦士によって、屈強な魔獣たちは赤子の手をひねるよりも簡単に倒されていくのだ。
「チッ!」
魔獣の召喚者であるイェキュブが、再び杖を大きく振るう。
すると、屋敷の上空に巨大な魔法陣が現れ、まるで龍を思わせる巨大なムカデが出現する。
そいつは自身と同じムカデ型やカマキリ型といった、虫の魔獣を体中に付けていた。
以前倒した海の魔獣と同じく、小型の魔獣をばら撒いて周囲を攻撃するタイプだろう。
兵隊を率いた魔獣は、一騎当千のアデーレにとっての唯一の弱点である。
これが解き放たれれば、周辺への被害は免れないだろう。
「さぁ、ここいらの人間、全員食い殺してやりなぁ!!」
手前の刃に、空いていた左手を添える。
「……行くよ、ロックン」
その言葉に応えるように、刃で燃え盛る炎がアデーレの左手に燃え移り、左腕全体を炎で包む。
アデーレの身体には熱さもなければ、火傷もない。
これは邪悪を焼き尽くす神聖なる聖火。
ヴェスティリアだけではなく、守るべき人々も決して傷つけることはない。
右手に持ったフラムディウスを肩に担ぎ、燃え盛る左腕を魔獣たちの前へ。
左脚を前方に出し、後ろの右脚にありったけの力を込める。
火花を散らす右脚。踏みしめる芝生は無事だ。
「ああ。行こう!」
景気の良いアンロックンの声が、アデーレの心を勇気づける。
アデーレは実感しているのだ。今この手にある神様と、心を通わせていると。
エスティラの声援。アンロックン……ヴェスタとの共感。
もはやアデーレに、前進するのをためらう気持ちなど一片も存在しない。
込めた力の全てを解放するように、右脚を踏み出す。
その瞬間、アデーレの身体は常人の目では追いつけないほどのスピードで、魔獣の群れの前へと急接近した。
それは魔獣も同じであり、見事な縮地を決めたアデーレに、何人も反応することが出来なかった。
しかし、それでアデーレは止まらない。
すぐさま左腕を突き出し、目の前にいた牛頭の魔獣の首を掴む。
人には燃え移らぬ炎も、魔獣相手ならば容赦なく引火する。
掴まれた魔獣の身体は一瞬で燃え盛り、言葉にならぬ絶叫を上げる。
「はあああぁぁ……ッ!!」
右手にフラムディウス、左手に燃える魔獣を構えたアデーレ。
そこからコマのように回転。更に前進し、魔獣の群れへと突っ込む。
多数の魔獣に炎が引火し、襲い来るフラムディウスの刃によって切り裂かれる。
これこそ炎が持つ真の恐怖。
文字通り、数など何の問題でもなかった。
アデーレが跳躍し、左手の魔獣を群れの奥へと投げつけた。
その燃え盛る炎に魔獣たちは恐怖し、慌てて火の玉を避けるように散る。
投げ捨てられた魔獣の身体は地面に叩きつけられ、粉砕される。
その時、地面へ落下するアデーレを、今がチャンスと思ったのか片腕の巨人が襲い来る。
変身中のアデーレに攻撃した、ムカデの腕を持つ魔獣だ。
着地前の人間というのは、当然ながら無防備と言える。
しかし、この魔獣が相手しているのは炎の祝福を受けた戦士だ。
「そんなんじゃだめだね!」
自信に満ちたアンロックンの声。
それと同時に、フラムディウスからジェット噴射のように炎が吹き上がり、アデーレの身体を一気に前進させる。
驚愕する魔獣。
アデーレは一切表情を変えることなく、その推進力を乗せた回転斬りによって、魔獣の胴体を一刀両断。
更に噴出する炎の余波が周囲の牛頭に引火。更に多くの魔獣を討伐する。
「アデーレ、上だ!!」
見上げるアデーレ。
今度は巨大サイクロプスの足が、アデーレを踏みつぶそうと迫る。
直撃までほとんど時間はない。
それでもアデーレは、慌てることなくフラムディウスを……地面に突き立てる。
両手で柄を持ち、身体を一気に跳ね上げる。
それはまさに、剣を持ったままの逆立ち状態だ。
「ロックン、やって!」
「任せろッ!!」
二人の声が重なり、先ほどよりも強力な炎がフラムディウスから噴出される。
猛烈な炎は地面を伝播するように広がり、剣を伝った炎はアデーレの全身に燃え移る。
更に勢いを増す炎。その推進力は、地面では抑えきれないほどのものに達する。
巨人の足の裏めがけて、燃え盛るアデーレの脚がロケットのように飛び上がる。
その勢いはすさまじく、質量において圧倒的に有利なサイクロプスの足を完全に押し返してしまった。
よろめくサイクロプス。
逆さに上昇するアデーレは、そのままの姿勢で切っ先をサイクロプスに突き刺す。
サイクロプスに沿って上昇する刃は、勢いを落とすことなくその巨体を切り裂く。
最後はその頭よりも高く上がったアデーレの斬撃により、サイクロプスは一刀両断されてしまった。
刃から一瞬だけ炎が噴出する。
その勢いによってアデーレの身体は回転し、再び頭を上に向ける。
地上を見下ろすと、魔獣たちの混乱具合が見て取れた。
一切の抵抗を許すことなく。数的有利を一切許すことなく。
たった一人の戦士によって、屈強な魔獣たちは赤子の手をひねるよりも簡単に倒されていくのだ。
「チッ!」
魔獣の召喚者であるイェキュブが、再び杖を大きく振るう。
すると、屋敷の上空に巨大な魔法陣が現れ、まるで龍を思わせる巨大なムカデが出現する。
そいつは自身と同じムカデ型やカマキリ型といった、虫の魔獣を体中に付けていた。
以前倒した海の魔獣と同じく、小型の魔獣をばら撒いて周囲を攻撃するタイプだろう。
兵隊を率いた魔獣は、一騎当千のアデーレにとっての唯一の弱点である。
これが解き放たれれば、周辺への被害は免れないだろう。
「さぁ、ここいらの人間、全員食い殺してやりなぁ!!」
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