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その他
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暗い部屋の中、モニターを見つめる一人の男がいた。
部屋には多くの人がその男と同様にモニターを見つめている。
「Watch Projectは失敗ですかね。まさか、死を選ぶなんて……。」
一人の男が言った。数人がそれに頷く。
「榎本教授、次の二針村を用意しましょう。そして、そこにいれる試験体も。ただ、試験体が出揃うのに何年かかるのやら……。」
ここに入れていた試験体は先日の大災害によって死体が溢れ、その中に奇跡的に条件が整った人が必要な分だけいた。
「十年だろうと、二十年だろうとやるしかない。今すぐ、日本中の病院に問い合わせを……。それと、生き残りがいる、この二針村はそのまま使い続ける。分かったら、今すぐ行動!」
部屋から人が出ていき、教授と呼ばれていた人のみが残った。
「光、辛かったか?友達が目の前で死ぬのは……。怖いよな。分かるよ。」
その男は画面を見つめる。その中には恐怖で怯えている一人の少年がいる。
「お父さんも昔、似たような事があったんだ。学生の頃だけどね。」
その男は椅子に腰掛け、背凭れにもたれる。
「緑栄太郎先輩、貴方が残した成果はこの世界を変えますよ。」
そしてあの赤海高校の化学室を思い出す。そして、あの朴訥な、でも優しそうな先輩の顔を思い出す。
隣にはいつも岡部先輩がいたな。あの人も優しい、気が利く人だった。
「貴方が異世界で残した研究成果はね……。」
そう、このWatch projectは私の研究とは呼べない。
私は貴方が実現させた人間の思考、記憶、心、その他一切をデジタル化する技術を模倣し、組み替えているだけだ。
私はスマホで電話番号を打ち込みながら、部屋の外に出ていった。
「どうも、もしもし、榎本です。えぇ、あの技術の公表の件で……。公表は今の所しない方向で、はい、でも一応名前だけは決めとけって?呼びにくいから?えぇ、確かに……。分かりました。そうですね、仮名ですけどGreenで。えぇ、それでお願いします。高木さん。」
魔法なきこの世界で……。壁なきこの世界で……。に続く。
部屋には多くの人がその男と同様にモニターを見つめている。
「Watch Projectは失敗ですかね。まさか、死を選ぶなんて……。」
一人の男が言った。数人がそれに頷く。
「榎本教授、次の二針村を用意しましょう。そして、そこにいれる試験体も。ただ、試験体が出揃うのに何年かかるのやら……。」
ここに入れていた試験体は先日の大災害によって死体が溢れ、その中に奇跡的に条件が整った人が必要な分だけいた。
「十年だろうと、二十年だろうとやるしかない。今すぐ、日本中の病院に問い合わせを……。それと、生き残りがいる、この二針村はそのまま使い続ける。分かったら、今すぐ行動!」
部屋から人が出ていき、教授と呼ばれていた人のみが残った。
「光、辛かったか?友達が目の前で死ぬのは……。怖いよな。分かるよ。」
その男は画面を見つめる。その中には恐怖で怯えている一人の少年がいる。
「お父さんも昔、似たような事があったんだ。学生の頃だけどね。」
その男は椅子に腰掛け、背凭れにもたれる。
「緑栄太郎先輩、貴方が残した成果はこの世界を変えますよ。」
そしてあの赤海高校の化学室を思い出す。そして、あの朴訥な、でも優しそうな先輩の顔を思い出す。
隣にはいつも岡部先輩がいたな。あの人も優しい、気が利く人だった。
「貴方が異世界で残した研究成果はね……。」
そう、このWatch projectは私の研究とは呼べない。
私は貴方が実現させた人間の思考、記憶、心、その他一切をデジタル化する技術を模倣し、組み替えているだけだ。
私はスマホで電話番号を打ち込みながら、部屋の外に出ていった。
「どうも、もしもし、榎本です。えぇ、あの技術の公表の件で……。公表は今の所しない方向で、はい、でも一応名前だけは決めとけって?呼びにくいから?えぇ、確かに……。分かりました。そうですね、仮名ですけどGreenで。えぇ、それでお願いします。高木さん。」
魔法なきこの世界で……。壁なきこの世界で……。に続く。
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