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夏
答え合わせ 問一
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約束の時間の二分前、僕は二針病院の前にいた。
あの仮面の男はまだ来ていない。
そして、僕のデジタル時計が二分を示した時、緑の光が集まり、その中からあの狐の仮面を着け、黒いローブを着た人が現れた。
また、あのシークレットブーツを履いているのは体型で分かる。
「そんな事ができるんだね。だから、閉じ込めたのに全員いたのか。」
「まぁ、かなり面倒くさいですし、意外と疲れるんですよ。魔法使うの。でも、今日の夜くらいは特別です。」
そして、緑の光が僕と仮面の人を包み込み、僕はその眩しさで目を瞑った。
視界が開けると、そこは二針学校の教室だった。
僕は椅子に座っており、机を挟んであの仮面の人は立っていた。
「わざわざ来るのがここなら、最初からここに呼べば……。」
「下靴を履いたまま、昇降口を上がるのは少々罪悪感を感じまして……。」
まぁ、いいか。
「ところで、かなりお早いですね。後、二分、いや六分位なら遅れても問題はなかったのに、更に言えば……。」
「十四分位ならまだ許容範囲ってことですか?」
仮面の人は少し笑ったように
「そうですね。」
とだけ答えた。
「では、この村の秘密を突き止めた経緯を教えてもらいましょうか。」
仮面の人は僕をじっと見下ろしながら訊いてくる。
「まず、最初から色々おかしかったんです。一番最初はあの検診に来た脳外科医でしたね。あの人、何でさっき僕が目覚めたのか分かったのでしょうか?まず、最初の疑問はそれでした。そして、次の疑問はあのトンネルだね。」
「トンネル、どうでした?最初は驚かれたでしょう。」
「ええ、だって出口がないトンネルですかね。でも、裏を返せば、どこにも繋がっていないのではなく、世界中、どのトンネルを通っても、この村には来れないってことなんです。つまり、あのトンネルの存在理由はトンネルの存在理由とは別の所にあると考えました。」
「なるほど。」
それをきっかけに僕は謎を解く。
「それで、一つ思ったのは、あのトンネル。トンネルの価値はないくせに立地だけは良いんですよ。何と言うか、リアルなんです。そして、あのトンネルがあったのは十年前。つまり、今はあっても意味はない。この十年でトンネル、特に流通の観点から大きく変わったことは一つ。配送用ドローンの実用化です。テレビで流れてました。丁度三年目くらいだそうです。」
「つまり、あのトンネルは配達がまだ、トラックでの輸送が一般的だった時に存在価値があった。でも、実際には配達には関係ない。ただのフェイク。つまり、この村の住民を騙すためだけにあったんです。パソコンのメール履歴も見ました。昔はあれでネットショッピングをしてたんでしょ。で、変な話ですが、荷物が届くにはトラックが来る必要があるんです。当たり前ですが、トラックはこの村の外から来ないとおかしい。だから、フェイクの出入り口を作ったんです。」
仮面の人は手を叩きながら、
「全くそのとおりです。」
とだけ言った。
「そして、他にも幾つかおかしい所がありますが、それらを話していると日が昇りそうなのでやめときます。じゃあ、ここは何処なのか。さっきも言った通り、地球上のどのトンネルを通ってもこの村には来れない。つまり、この村は地球上には存在しない。」
「では、ここは宇宙か。いいや、違う。この村はもっと変な所にある。」
「確かに変な所にありますよ。」
「それを解くのも違和感です。まず、我々ってあくまで後養生のためにここに来た。つまり、この村にはけが人が来る。それもかなりの大怪我の。」
「そのことを踏まえると、我々、傷跡が全然ないんです。僕なんて車に轢かれたのに目立った傷すらなく、元からあった傷跡も無いんです。そして、この村に来た時、私はまだ目を覚ましていない。まだ、意識が戻っていないのに、後養生の計画を立て、実行するなんて余りにも滑稽です。」
「そして、君の魔法。正直な話、夢でない限り君の力は信じられない。」
「纏めると、ここは現実の世界でない。現実でないのなら怪我のあとがないのも、分かります。そして、あの脳外科医が僕の目覚めに気づいた理由。これは多分、僕があの瞬間に目覚めることを知っていたと考えられませんか?そして、後養生の計画はあのトンネルと同じフェイク。そして、君の力。この村の名前。」
そして、僕はこの村の正体を告げる。
「ここは俗に言う、電脳世界。サーバー上に存在する、二針村のフィールドに僕たちの意識がデジタル化され、リンクしているんです。」
仮面の男はまたまた手を叩き、
「大正解」
とだけ言った。
「それにしても、誰なんですか。この村を作った人。ネーミングセンス、終わってませんか?」
この村の名前は二針村、読み方を変えてにしんむら。多分、コンピュータ上で処理される二進数のにしんから取ったと思うが、安直すぎるし、無理矢理感が凄い。
「だよね~。まぁ、私の父親なんですがね。」
「そ、そうなんですか…。と言う事は最初の実験体に自分の子供を使ったんですか?」
「そういうことになるかな。まぁ、突然の災害で子供を植物状態にされた父親の気持ちなんて想像つかないよ。」
十年以上前の災害。テレビで特集されていたやつか。
という事はこの仮面の人はたとえ誰であっても今の僕より長く生きていることになるのか。
「ところで、さっき魔法を夢でない限り信じられないって言ったよね。」
「はい。」
「多分、コレを見たら、夢であっても信じられないんじゃないかな。」
そういって、あの革張りの本を外に向けた。
本が鈍く緑色に光る。
その時、窓の外に白いものが見えた。雲一つなく満月の空から白いものが降ってくる。
僕は立ち上がり窓にへばりつく。
「雪?」
もう夏が近いのに……。これもコンピュータ内だから出来るのか?
「まだまだ。」
仮面の人がそう言うと、白い、だけど、ほんのりと赤い物が窓の前を通り過ぎていく。
飛んでくる方向を見ると、月光に照らされた桜の木が桜の花びらを散らせている。
「すごい。」
「この本はこのサーバーの管理者権限みたいな物でして、プログラムを書き換えることでこんな事ができるんです。」
「でも、私の正体には気がついていないようで……。」
「そればっかりは完全にお手上げだよ。全員、否定できないからね。」
僕は再び席について仮面の人を見つめた。
「でも、大体の予想はついている。そもそも虱潰しに探してもいいし、さして問題でもない。」
僕は前のめりになって、
「僕の予想だと君は光くんだ。どうだ?」
仮面の人は仮面を置いて、
「大正解」
と言った。
あの仮面の男はまだ来ていない。
そして、僕のデジタル時計が二分を示した時、緑の光が集まり、その中からあの狐の仮面を着け、黒いローブを着た人が現れた。
また、あのシークレットブーツを履いているのは体型で分かる。
「そんな事ができるんだね。だから、閉じ込めたのに全員いたのか。」
「まぁ、かなり面倒くさいですし、意外と疲れるんですよ。魔法使うの。でも、今日の夜くらいは特別です。」
そして、緑の光が僕と仮面の人を包み込み、僕はその眩しさで目を瞑った。
視界が開けると、そこは二針学校の教室だった。
僕は椅子に座っており、机を挟んであの仮面の人は立っていた。
「わざわざ来るのがここなら、最初からここに呼べば……。」
「下靴を履いたまま、昇降口を上がるのは少々罪悪感を感じまして……。」
まぁ、いいか。
「ところで、かなりお早いですね。後、二分、いや六分位なら遅れても問題はなかったのに、更に言えば……。」
「十四分位ならまだ許容範囲ってことですか?」
仮面の人は少し笑ったように
「そうですね。」
とだけ答えた。
「では、この村の秘密を突き止めた経緯を教えてもらいましょうか。」
仮面の人は僕をじっと見下ろしながら訊いてくる。
「まず、最初から色々おかしかったんです。一番最初はあの検診に来た脳外科医でしたね。あの人、何でさっき僕が目覚めたのか分かったのでしょうか?まず、最初の疑問はそれでした。そして、次の疑問はあのトンネルだね。」
「トンネル、どうでした?最初は驚かれたでしょう。」
「ええ、だって出口がないトンネルですかね。でも、裏を返せば、どこにも繋がっていないのではなく、世界中、どのトンネルを通っても、この村には来れないってことなんです。つまり、あのトンネルの存在理由はトンネルの存在理由とは別の所にあると考えました。」
「なるほど。」
それをきっかけに僕は謎を解く。
「それで、一つ思ったのは、あのトンネル。トンネルの価値はないくせに立地だけは良いんですよ。何と言うか、リアルなんです。そして、あのトンネルがあったのは十年前。つまり、今はあっても意味はない。この十年でトンネル、特に流通の観点から大きく変わったことは一つ。配送用ドローンの実用化です。テレビで流れてました。丁度三年目くらいだそうです。」
「つまり、あのトンネルは配達がまだ、トラックでの輸送が一般的だった時に存在価値があった。でも、実際には配達には関係ない。ただのフェイク。つまり、この村の住民を騙すためだけにあったんです。パソコンのメール履歴も見ました。昔はあれでネットショッピングをしてたんでしょ。で、変な話ですが、荷物が届くにはトラックが来る必要があるんです。当たり前ですが、トラックはこの村の外から来ないとおかしい。だから、フェイクの出入り口を作ったんです。」
仮面の人は手を叩きながら、
「全くそのとおりです。」
とだけ言った。
「そして、他にも幾つかおかしい所がありますが、それらを話していると日が昇りそうなのでやめときます。じゃあ、ここは何処なのか。さっきも言った通り、地球上のどのトンネルを通ってもこの村には来れない。つまり、この村は地球上には存在しない。」
「では、ここは宇宙か。いいや、違う。この村はもっと変な所にある。」
「確かに変な所にありますよ。」
「それを解くのも違和感です。まず、我々ってあくまで後養生のためにここに来た。つまり、この村にはけが人が来る。それもかなりの大怪我の。」
「そのことを踏まえると、我々、傷跡が全然ないんです。僕なんて車に轢かれたのに目立った傷すらなく、元からあった傷跡も無いんです。そして、この村に来た時、私はまだ目を覚ましていない。まだ、意識が戻っていないのに、後養生の計画を立て、実行するなんて余りにも滑稽です。」
「そして、君の魔法。正直な話、夢でない限り君の力は信じられない。」
「纏めると、ここは現実の世界でない。現実でないのなら怪我のあとがないのも、分かります。そして、あの脳外科医が僕の目覚めに気づいた理由。これは多分、僕があの瞬間に目覚めることを知っていたと考えられませんか?そして、後養生の計画はあのトンネルと同じフェイク。そして、君の力。この村の名前。」
そして、僕はこの村の正体を告げる。
「ここは俗に言う、電脳世界。サーバー上に存在する、二針村のフィールドに僕たちの意識がデジタル化され、リンクしているんです。」
仮面の男はまたまた手を叩き、
「大正解」
とだけ言った。
「それにしても、誰なんですか。この村を作った人。ネーミングセンス、終わってませんか?」
この村の名前は二針村、読み方を変えてにしんむら。多分、コンピュータ上で処理される二進数のにしんから取ったと思うが、安直すぎるし、無理矢理感が凄い。
「だよね~。まぁ、私の父親なんですがね。」
「そ、そうなんですか…。と言う事は最初の実験体に自分の子供を使ったんですか?」
「そういうことになるかな。まぁ、突然の災害で子供を植物状態にされた父親の気持ちなんて想像つかないよ。」
十年以上前の災害。テレビで特集されていたやつか。
という事はこの仮面の人はたとえ誰であっても今の僕より長く生きていることになるのか。
「ところで、さっき魔法を夢でない限り信じられないって言ったよね。」
「はい。」
「多分、コレを見たら、夢であっても信じられないんじゃないかな。」
そういって、あの革張りの本を外に向けた。
本が鈍く緑色に光る。
その時、窓の外に白いものが見えた。雲一つなく満月の空から白いものが降ってくる。
僕は立ち上がり窓にへばりつく。
「雪?」
もう夏が近いのに……。これもコンピュータ内だから出来るのか?
「まだまだ。」
仮面の人がそう言うと、白い、だけど、ほんのりと赤い物が窓の前を通り過ぎていく。
飛んでくる方向を見ると、月光に照らされた桜の木が桜の花びらを散らせている。
「すごい。」
「この本はこのサーバーの管理者権限みたいな物でして、プログラムを書き換えることでこんな事ができるんです。」
「でも、私の正体には気がついていないようで……。」
「そればっかりは完全にお手上げだよ。全員、否定できないからね。」
僕は再び席について仮面の人を見つめた。
「でも、大体の予想はついている。そもそも虱潰しに探してもいいし、さして問題でもない。」
僕は前のめりになって、
「僕の予想だと君は光くんだ。どうだ?」
仮面の人は仮面を置いて、
「大正解」
と言った。
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