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青年期
銃の行方
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「ルイスさん、おはようございます。」
エラが目をこすりながら階段を降りてきた。
「おはよう。」
クリスは寝ぼけ眼でパンを咥えていた。
「やはり、まだあの銃は見つかっていないんですか?」
エラがパンを持ちながら聞いてくる。
「まだ、見つかっていないらしい。」
あの後、保安局やらなんやらに問い合わせたが数ヶ月たった今でも、連絡はない。
「まぁ、待つしかないよな。」
幸いだったのが、あの銃はかなり特殊な機構をしており、複製品を作ることはたぶんこの世界の技術では不可能であること、盗まれた弾はなかったことだった。ただ……。
弾の材料が一発分残っている。
あの時、クリスと一緒に作った弾数は三発だが、材料はあと残り一発分あるのだ。
つまり、あの銃弾を作ってしまえば、あの銃は一発だけ撃てるようになってしまう。
「早く見つかるといいんだが……。」
そんな感じでため息をつく。
あ、あと、そうそう。
「今日、俺は少し用事があるので、店は休みにします。」
「どこか行くの?」
エラがミルクを飲みながら聞いてきた。だんだん目が覚めてきたらしい。
「まぁ、そんなところです。帰りが遅くなるかもしれないので、先に寝ててね。」
朝食を食べ終えると、俺は家を出た。少し暖かい風が頬に触れる。
「もう、春か。」
ついこの前まで、寒さに凍えていたような気がする。
今年の冬で、いろんなことが変わった。家のことも、クリスのことも、エラのことも……。
「今後のこともしっかり考えておかないとなぁ……。」
何処となく間の延びたような独り言を漏らしながら、歩き始めた。
大きなあくびをして、乗り合い馬車の停留所へ向かう。
少しだけ強く吹いた春風が建物の間を通り抜けていった。
「少しばかり高すぎるんじゃないか?いくらなんでも……。」
俺は乗り合い馬車の御者と値段交渉をしていた。
「うるせぇ、乗らないなら、とっとと失せろ!」
そんなことを言われてしまい、急いでそこを離れた。
「仕方がない。歩いていこう。」
目的地までは、最悪歩いていけない距離でもない。
ただ、日をまたぐという可能性がでるだけで……。
俺はため息を付きながらとぼとぼと歩き始めた。
エラが目をこすりながら階段を降りてきた。
「おはよう。」
クリスは寝ぼけ眼でパンを咥えていた。
「やはり、まだあの銃は見つかっていないんですか?」
エラがパンを持ちながら聞いてくる。
「まだ、見つかっていないらしい。」
あの後、保安局やらなんやらに問い合わせたが数ヶ月たった今でも、連絡はない。
「まぁ、待つしかないよな。」
幸いだったのが、あの銃はかなり特殊な機構をしており、複製品を作ることはたぶんこの世界の技術では不可能であること、盗まれた弾はなかったことだった。ただ……。
弾の材料が一発分残っている。
あの時、クリスと一緒に作った弾数は三発だが、材料はあと残り一発分あるのだ。
つまり、あの銃弾を作ってしまえば、あの銃は一発だけ撃てるようになってしまう。
「早く見つかるといいんだが……。」
そんな感じでため息をつく。
あ、あと、そうそう。
「今日、俺は少し用事があるので、店は休みにします。」
「どこか行くの?」
エラがミルクを飲みながら聞いてきた。だんだん目が覚めてきたらしい。
「まぁ、そんなところです。帰りが遅くなるかもしれないので、先に寝ててね。」
朝食を食べ終えると、俺は家を出た。少し暖かい風が頬に触れる。
「もう、春か。」
ついこの前まで、寒さに凍えていたような気がする。
今年の冬で、いろんなことが変わった。家のことも、クリスのことも、エラのことも……。
「今後のこともしっかり考えておかないとなぁ……。」
何処となく間の延びたような独り言を漏らしながら、歩き始めた。
大きなあくびをして、乗り合い馬車の停留所へ向かう。
少しだけ強く吹いた春風が建物の間を通り抜けていった。
「少しばかり高すぎるんじゃないか?いくらなんでも……。」
俺は乗り合い馬車の御者と値段交渉をしていた。
「うるせぇ、乗らないなら、とっとと失せろ!」
そんなことを言われてしまい、急いでそこを離れた。
「仕方がない。歩いていこう。」
目的地までは、最悪歩いていけない距離でもない。
ただ、日をまたぐという可能性がでるだけで……。
俺はため息を付きながらとぼとぼと歩き始めた。
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