魔法なきこの世界で……。

青年期

倒れる

　冬がやってきた。

　外の風は厳しく吹き荒れ、寒々とした空気が隙間から入り込んでいた。

「寒いですね、ルイスさん。」

　エラと店番している時に、エラが震えながら言ってきた。

「そうだねぇ、ブランケットならここにあるから使いな。」

　そう言って、ブランケットを差し出す。

「あ、ありがとうございます。」

　そう言って差し出されたブランケットに包まって、温まっていた。

　こんな天気も相まって今日は全くお客さんのなかった。

　



　昼休憩の時に、クリスが顎をがたがた言わせながら、食堂に入ってきた。

「いやー寒いねぇ。ねぇ、温かいお茶でも出してくれない？」

「わかったよ。椅子に座りな。いつものでいいかい？」

　ありがとう、というとクリスは食堂の椅子に座った。

「それにしても本当に寒いね。ルイスも大変だったでしょう。」

　そんな感じで体を震わせている。

「そりゃね。はいお茶。」

　そんな感じであついお茶を出す。それを震える両手で持ち、飲み始めた。

「ところで、お義母さんたちはまだ寝てるの？」

　言い方のニュアンスがだいぶ気になったが、まぁ、いいか。

「ダイナさんとロイスさんはあなたの親じゃないですよ。」

　エラが何やら言いがかりをつけているが、まぁ、いいか。

　にしても、もう昼なのに起きてこないのは流石に遅い。

「起こしに行ってくるよ、ちょっと待ってて。」

　そう言い残して、階段を登る。

　夫婦そろって寝坊とは仲いいことだな、とでも思いながら部屋の前に行くと、痰が絡まったような咳が聞こえた。

　扉を少し開け、中の様子をうかがってみると両親がふたりともベッドの上で酷い咳をしていた。

「だ、大丈夫？」

　母親が俺に気づくとなんとかベッドから降りて、こっちに近づいてきた。顔は青ざめ、息切れをしていた。

　足元はかなりおぼつかなく、フラフラだ。

「あぁ、大丈夫よ、今お店に出るから……。」

　そして俺の目の前で倒れてしまった。