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幼少期

エラ

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 朝起きると、クリスとあの少女が横で寝ていた。俺含めて三人とも床で寝ている。

 少女は昨夜、毛布にくるまっていたような気がするが、寝相が相当悪いらしい。毛布は扉の方へ飛ばされていた。

 起こさないようにこっそり部屋を出て、一階に向かった。クリスの両親がパンを作っている。挨拶をして、自分の家に行き、残っていた食材で、朝ごはんを食べた。

「そういえば、昨日は食べてなかったな。」

 と、独り言を言っていると、クリスと少女が入ってきた。

「ルイスいつのまに起きてたの?」

「ついさっき。」

 そんな会話をして、3人で朝食を食べた。

 朝食を済ますと、俺はあの少女に色々質問をした。

「まず、君の名前はなんて言うの?」

 少女はじっと口を結んでいた。名前が無いのだろうか。親からなんて呼ばれていたのか聞いてみたが、親の記憶が無いらしい。

「じゃあ、名前をつけてあげなよ。」

 と、クリスが責任重大なことを僕に任せてきた。

「名前を付けるってそんな重大なことを10歳になったばかりの子供にやらせるなよ。」

「あんた、精神年齢27歳でしょうが。」

 そんな感じで押し切られてしまい、結局僕がつけることになった。

「何がいいか……。里帆なんてどう?」

「この異世界で日本人名はやめておいたほうがいいんじゃない?」

 人の名前を付けたことのない僕は適当に思いついた名前を言っただけなのだが……。

「確かになぁ、じゃあ、エラは?」

「エラか、いい名前じゃない。」

 そんな感じで少女の名前はエラとなった。まだ自分の名前がエラとなったことにピンときていないようで、どこか不思議そうな顔をしている。

 他にも色々な質問をしていった。しかしエラは自分の年齢すらも知らず、結局何一つ知ることはできなかった。

「ねぇ、もうそろそろ、おばさんたちの迎えに行ったほうがいいんじゃない?」

 クリスのその一言をきっかけに三人で両親を迎えに行くことにした。ココから隣町までは歩いて1時間ちょっとくらいかかる。

 簡単な準備を済ませ、迎えにでかけた。まだ幼く、ましてや、前の領主にまともに食事を与えられなかったせいかとてもやせ細っていたエラには数時間も歩く体力はないと思い、おんぶをしていた。

 その道中、

「ねぇ、なんでエラって名付けたの?」

 クリスが名前の由来を聞いてきた。どうやら気になるらしい。

「実はシンデレラの本名のエラから、取ったんだ。それにイギリスでは美しい妖精の女性っていう意味もあるみたいだよ。」

「なるほどねぇ。」

 そういって、納得したようにエラのおでこをクリスは撫でた。





 クリスはルシスが名前を決まるのに考えているところを見て、ほんの少し嫉妬していた。多分、ルイスの周りに女の子が現れたことに少し不安があったのだろう。

 でも、ルイスがしっかりと考えて付けたことに気づいて、少しホッとしたような誇らしいような複雑な気がしてきた。

「私との子供にもあんなふうに真剣に名前をつけてくれるのかな。」

 そんな、途方もなく遠いことを道中クリスは考えていた。
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