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森の中のエルフ幼女、森の中の生活を開始する

イベント周回は辛いよ。でも配布キャラが待っているんだだから小説が書けなくても仕方がないよね?

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 さて、家鳴りの現れた扉の前に来た訳だが未だ激しい音が扉の向こうから聞こえてくる。

「ヒューン、ヒューン」

 青い毛玉なんか尻尾を股の間に挟んで、俺の背後に隠れているよ…

「これは、かなり気が立っているようじゃな。妖怪の可能性がかなり高そうじゃ。マスター覚悟はしておいた方が良いぞ? 」

 覚悟って何の覚悟さ? お股の覚悟か? 確かにホラーには弱いがネタバレしてるなら耐えれるはずだ。

「なんか凄い怨念をこの扉の向こうから感じます。ご主人は一体この扉の向こうの人に何をしたんですか? 」

 髪の毛や尻尾の毛を逆立てながらシロが俺の背中に隠れながら話してくる。

 俺そんなに恨まれてるの? そんなに恨まれる覚えがある相手なんて、記憶に無いんだけどな。

「ジルアちゃん…貴女なら何とか出来るはずよ! 頑張って! 」

 そんなに離れた場所から言われても俺には不安しか無いんだが…

「取り敢えず戦力になりそうなら、ちゃんとスカウトするんだぞ? 主人は結構たらしなんだから押せば相手が許してくれるだろう」

 冷静に話しているつもりだろうけど、俺との距離が少し遠いよね?スプリガン。

「命に危険があればお助けしますから、出来るだけ愛らしい姿で苦悩してくださいね。ご主人様」


 こいつが一番不安だよ!これで俺のメイドを自称するんだから俺に安息の時は無いよ! 



「仕方がない……どうせ扉を開けれるのは私だけだし頑張ってくるよ。何かあったら頼んだよ? 」

 そう言って扉の前に歩いて行く。

 相変わらず騒がしい扉の前に来ると、俺は大声で扉の向こうにいる相手にコンタクトを取ろうとする。

「おーい! 誰だか知らんが今から扉を開けるから少し落ち着け! 静かになったら扉を開けるから、話が通じるなら静かにしろよ?」

 俺の言葉が届いたのかどうかは分からないが、それからピタリと騒がしさは収まる。

 俺は家鳴りの時のようにゆっくりと扉を開け中を覗こうとするが、それより早く『何か』が扉から飛び出て俺を目掛けてやって来る!

 俺は何とか躱そうとするが『何か』の動きの方が圧倒的に早く、腰の辺りに追突され俺は廊下に倒されてしまう。

「ご主人! 」

 シロの声で一時的に失っていた意識を取り戻すと俺を押し倒したものの姿が目に映る。

 背中に長物を背負った蓑虫のような姿をした『何か』が青白い光を目に宿らせて、右手に持つ刃物のような物を俺に振り下ろそうとしている。

「主人、今助ける!」

 スプリガンがこちらに向かおうとした途端、『それ』は左手に持った短筒のような物をスプリガンに向け、スプリガンの動きを止める!

 そして振り下ろされる刃物をスローモーションのように感じながら、俺は体の全ての力を抜き、思い出した『何か』の名前を呟いて彼女の帰還を出迎える。



「お帰り、座敷童。長い旅路をご苦労様」

 その言葉と同時に左頬の辺りに振り下ろされたコンバットナイフの振動を感じ、俺の意識は消えていった…






「ただ今、戻りました! 第一部隊狙撃小隊の座敷童、これよりマスターの指揮下に入ります! 」

 俺に対して敬礼をする座敷童を見ながら、俺は濡れたパンツと自分自身を(クリア)で洗浄し、新しいパンツに履き替えている所だ。

「ご主人の動きに躊躇ためらいが無くなってきました。目の光りも無いですけど」

「成る程、これがジルアちゃんが苦労しているお漏らしなのね。確かにこれは大変そうね」

 後ろで2人がこそこそ話をしているが、今の俺には気にならない。

 最早、人前で履き替える事に躊躇ちゅうちょが無くなった俺の精神耐性はそろそろ最大値まで行くんじゃないかな? 

「ご主人様! どうして魔法などで下着を洗うのですか。私にご命令下されば、私の手洗いで綺麗に洗って…洗う前に味見が必要ですわね? それにご主人様も私にが綺麗に洗わないと……」

 なんか身悶えしている悪魔を放っておき、久しぶりに見る座敷童に目を移す。

 野戦服の上からカモフラージュ用にギリースーツを着込み、まさに蓑虫状態な座敷童。

 野戦ブーツも迷彩塗装なので、これで森からアンブッシュされたらどんな奴でも一撃だろう。

 背中に背負った対物マテリアルライフルは特別な素材のシートで包まれており、現在は折りたたんで運んでいるようだ。

 腰の後ろにはサバイバルナイフの鞘が装着されており、左手の短機関銃も艶消しのブラックで目立たないように考慮されている。

 俺は座敷童に何という格好をさせていたのだろう……流石に性能重視とはいえこれは酷すぎる……

「済まないが座敷童、久しぶりだからその服を脱いでいつもの姿に戻ってくれないかな? 」

 俺がすまなそうに言うと、座敷童は目を輝かせてこちらに聞いてきた。

「本当にこれを脱いでもよろしいのですか ⁈  確かに付近には敵対反応は無いようですが、マスターはずっとこの服装を私にさせていたので私は永久にこのままかと思っていたのですが」

 ……本当にすまない、その装備がゲームの中では最適なんだ。

「今は家を狙う敵はここにはいないからね。本来の服に戻ってもらって良いよ」

 座敷童にそういってあげると、彼女は喜んで他の部屋に走っていった……この家の間取り分かるのかな?

「ご主人、彼女はかなり物騒でしたが大丈夫なんですか? 」

 シロが心配そうに聞いてくるが、俺は微笑んで頭を横に振り否定する。

「彼女のいた世界はいつも敵から襲われる世界でね、彼女はそこでも1、2を誇る暗殺者だったんだ。だから急にこんな所に呼ばれたから戸惑っているだけなんだと思う。本来彼女はその家に住む人たちに幸運を与える妖怪だしね」 

「マスターの言う通りじゃ。あ奴は本来人見知りで人と会う事すら怖がる子なのじゃ。マスターの調教の所為でああなってしまったが、元は本当に心優しき妖怪よ」

 家鳴りがうんうん頷きながら同意するが調教とは人聞きが悪い、せめて訓練の賜物といって欲しい。






「お待たせいたしました」

 廊下を歩いてくる座敷童は俺の知る姿とまるで変わりはなく、本来の姿に戻れた座敷童もとてもいい表情だ。

 俺と変わらない背丈だが黒い髪をお団子状にしており、頭のかんざしが輝いてとても似合っている。

 短い浴衣のような紺色の服も今の彼女にはとてもお似合いだ。

 靴だけが依然、野戦ブーツなのはどうしてなのか分からないが…

「すいません。下駄だと走れないし、臨機応変な行動が取れないと今は不安なもので…」

 手に握るサバイバルナイフを触りながら恥ずかしがる座敷童は、どうやら俺の訓練が行き過ぎていた事を証明している…



「何はともあれ、本当に久しぶりだね。座敷童」

 俺が笑顔で話しかけると座敷童は少しだけ驚いた後、こちらも良い笑顔を返してくれる。

「マスターともう一度会えて私も嬉しいです! 」



 そんなこんなで座敷童が仲間に加わりましたとさ。











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