上 下
240 / 252
第7章:エルフ王国 救出編

第219話 『その日、宝物庫を漁った』

しおりを挟む
「帝国を潰すと来たか。ワシらも其方の考えには賛同じゃ。あの国は存在するだけで迷惑じゃからな。しかし良いのか? 国同士の戦いに友軍として救援することと、直接相手の国に攻め入るのとでは、今後其方に降り掛かる重みがまるで違うぞ?」
「覚悟の上です」
「其方もそこまでするほど、あの国に恨みがあるのじゃな……。しかし国そのものとなると、些か面倒なことが多いぞ? いくら連中が悪逆非道であろうとも、国がなくなったとなれば」
「ああ、潰すと言うのはものの例えでして、その辺は魔人の侵食具合によりますね」
「というと?」

 そこで女王様に、例の首輪と、レヴナント。そして魔兵について説明した。
 レヴナントについては、ミーシャからも情報を貰っている。通常の首輪に、更に魔神の力を上乗せすることで強力な個体となって生まれ変わった存在だ。
 本来であれば、討伐するしかないと思われていたが、強力な『浄化』の力で魔神の邪気を振り払う事ができるらしい。

 その『浄化』も、本来であれば各種ステータスを最高峰にブーストさせ、尚且つ特殊な装備を身に付けた『勇者』でないと行使が出来ないものらしい。
 まあシラユキちゃんの『聖光』が、その勇者の特殊装備枠の代わりになっているみたい。

「魔人め、人をなんだと思っておるのじゃ」
「と言うわけなので、お偉いさんが首輪やレヴナントの場合は、潰す必要まではないかもしれません。ただ、魔兵となっていた場合は心から望んでいる事が多いので、その場合は……」
「うむ、皆まで言わずとも良い。だが、例えトップが操られた場合であっても、直接攻めてきた連中を、簡単に許すわけにはいかぬ。手足となった兵どもは、自分の意思で我らを甚振ったのじゃからな」
「はい。その辺の処理や待遇はお任せしますね」
「恩にきるぞ」

 さて、帝国の処遇は決まった事だし、あとは手段をお伝えしよう。

「それでなんですけど、帝国を潰す戦力として、この地に眠る者に協力を仰ぎたいんです。その為に、世界樹から採れる『輝く雫』と、世界樹の中腹にある魔法陣の使用の2点をお願いしたくて」
「……それらは我が国でもほんの一握りの者しか知らぬ情報じゃ。博識とかそう言うレベルを凌駕しておるぞ。本当に其方は何者なのじゃ」
「ふふっ」
「まあ良い、其方にはいつも驚かされるが、恩人の頼みじゃ。願いを聞き届けよう。『輝く雫』は宝物庫にしまってある。使うものがおらんので大量にな。それも含めて、気に入ったものがあれば幾らでも持っていって構わぬ。これもまた、礼の一つだと思ってくれて構わぬぞ」
「わ、ありがとうございます。女王様!」

 エルフの王宮で大切に保管されている物は、特に素材の面で良質なものが多い。1つか2つ貰えれば御の字と思っていたけど、まさか好きなだけだなんて!

「す、好きなだけとは言うたが、必要なものに留めてくれよ?」
「大丈夫ですよー」

 まあ流石に根こそぎなんて無粋な真似はしないわ。

「ミーシャも連れて行っていいですか?」
「勿論じゃとも」

 そうして近くに待機していたエイゼルを使ってミーシャとツヴァイを連れてきてもらい、女王様も一緒になって宝物庫へとお邪魔する。

 長い廊下を進み、厳重な物理と魔法2つの鍵で開錠された扉の先に、その場所があった。そこはまるで、小さな展覧会場だった。
 宝物はいつ一般公開されても構わないかの様に、きちんと展示ケースに収められ名札も貼られていた。
 女王様の手にはしっかりと種類・場所別に目録まで用意されているし、長年きちんと管理されている様ね。

「それじゃミーシャ、好きなもの貰っていいみたいだから、良さそうなのあったら教えてね」
「おっけー。と言っても、私は家具作りに使えそうな素材ぐらいしか目利き出来ないから、あんまり期待しないでね」

 私とミーシャが吟味している様子を、女王様は不思議そうに眺めている。

「其方ら、あまり武器や防具類には興味がないのかえ?」
「ん? そうですねー、貴重さで言えば確かに価値はあるものばかりですけど、戦場で使えるかと言われると……」
「そう言えば其方が身に付けている武具は、どれも一級品であったな。目移りしないのは悲しいが、致し方あるまい」

 そんな女王様の様子に、ミーシャは何か思いついた様にショーケースの1つを示す。

「それならシラユキ、これなんて使えるんじゃない?」
「どれどれー」

**********
名前:エルヴンペンダント
装備可能職業:全職業
必要ステータス:無
防具ランク:無
説明:風の力を凝縮したペンダント。
効果:風属性の威力を1割増加させ、風属性の魔法からのダメージを2割減少させる。
**********

「あー、まあ確かに使えそうね。打ち直しもできるし合成も。女王様、コチラを頂いても?」
「おお、気を遣わせてすまぬな。良いぞ! 他のも決まったら持って来るといい」

 惜しみなく宝物を提供してくれる女王様に、私達も遠慮なく良さそうなものを選んでいった。いくつかの素材をお願いし、女王様は快く頷いてくれた。

「むふー。シラユキちゃん満足!」
「……それにしても、ジャンルがバラバラじゃのう。妾にはこれを選ぶ理由がわからん」
「お嬢様は万能ですから」

 女王様が、手元の目録を見て困惑していた。
 それを覗き込んでみると、私が貰った中でも喜びを隠しきれなかったアイテムに、印がつけられていた。

 『赤く輝く種籾』『銀鎧蟲の真核』『シャインバブルの大玉』『精霊王の涙』『レッドブラックパンサーの毛皮』

 ……確かに。
 農業系統に始まり、昆虫の核に、珍しい木の実。貴重な液体に毛皮まで。まあシラユキちゃん、錬金術も鍛治も裁縫もなんでもやれちゃうからなぁ。欲しいものが幅広くなるのも仕方がない。
 それ以外にも、大喜びって程ではないにしろ小躍りしたくなっちゃう逸品とか鞄にモリモリと詰め込ませてもらったし、満足。

「心なしか、宝物庫が広く感じるなぁ」
「そりゃ、あれだけ節操なく貰えばそうなるわよ」
「う……。でもミーシャだって、大きめの物貰ったじゃない」
「私は1品だから良いの! それに、私はシラユキと違ってそんなに活躍していないし」
「何を言うか。其方のおかげで第二隊は死者がなく帰ってこられたのだ。妾としてはもっと選んでくれても良かったぞ」
「援護してただけなのになぁ……」
「それを言ったら私だって、アポ無しで戦場のど真ん中にやってきて魔法をブッパしただけよ」
「アンタは規模が違うでしょ……」
「えー」

 ミーシャと睨めっこしていると、どちらともなく笑みがこぼれる。
 
「「ふふっ」」
「お嬢様もミーシャ様も、どちらも似た様な物です。お二方はそれに見合う活躍をされたのですから、遠慮は無用かと」
「同胞の言う通りじゃ」

 全部取られたら困るって顔してたのに、宝物庫の3割では納得していないご様子。加減が難しいわね。
 でも、こんなに沢山の素材を鞄に詰め込ませてもらったんだもの。これ以上は流石に遠慮させてもらおう。

「んー。世界樹ダンジョンとか精霊の森の件もあるし、これくらいで良いかな」
「その2点については、精霊様に認めて頂いたのじゃから、通行を許可するのは当然のことであるのじゃがな」

 それでもまだごねる女王様を説得しつつ、宝物庫を後にする。
 明日の朝に集合ということでミーシャと別れ、部屋に戻ると、アリシアがピタリとくっついて来た。

「ん、なあに?」
「お嬢様、この国にもダンジョンがあるのですか?」
「うん。あ、言ってなかったっけ。世界樹の中にダンジョンがあるの。地下に続くタイプじゃなくて、学園と同じ異空間タイプね」
「そうだったのですね。その奥に神獣様が?」
「そー。カーくんとにゃんコロだけだと火力不足だからね。ここに眠ってる子を連れて行けば帝国潰しに丁度良いと思って」
「ミーシャ様のレベルは100ですし、お嬢様のご友人ですからもしやと思ったのですが、お嬢様と同じく彼女も神獣様との契約が解除されてしまったのですか?」
「うんうん、正解。アリシアは察しが良いわねー」

 撫で撫で。

「では、これを機にミーシャ様と一緒にお嬢様も、神獣様と契約なされるのですか?」
「うーん、どうだろ?」

 ペット系職業の能力は全然扱えていないから、そろそろ手を出すのもアリかなーとは思ってはいるんだけど、私の強さについてこれるペットが想像出来なかったのよね。だから扱うにしても、せいぜい乗り物用とか愛玩用でしか想像出来ていなかった。
 その点、召喚獣は体の構成は全て術者の魔力依存。本体は世界の根幹にあるから、例えヤラレちゃったとしても呼び直す事ができるのでロストの心配がない。シラユキちゃんの豆腐メンタルも、それなら痛まないだろうし良い事尽くめだ。
 けど、問題があるとすれば、この世界に同時に2体顕現が出来るかどうかなのよねー。

 まあ、この世界にデフォルトで召喚士なNPCはいない訳ではないし、ミーシャもこの世界に来てからずっと顕現しっぱなしだ。だから多分、問題はないと思うんだけど……。
 まあそこは、やってみないとわかんないわよね。

「決まりましたか?」
「待っててくれたの? ありがとー!」

 全てを察してくれるアリシアが愛おしすぎて頬擦りを抑えきれない。好き好き!

「とりあえず可能なら契約してみるわ。でもまずは本職であるミーシャを優先するわね」
「はい、承知いたしました。メンバーはどの様に?」
「んー。難易度としては上級ダンジョンと似たり寄ったりなところがあったはずだから、ミカちゃんは連れて行くとして……4人だしナンバーズを混ぜると溢れちゃうのよね」
「長いダンジョンなのですか?」
「ううん。探索させるためのダンジョンじゃなくて、神獣のためのダンジョンだから結構浅いの。この4人でも数時間もかからず突破出来るわ」
「でしたら、彼らも連れて行きましょう。今回はお嬢様のレベルが急激に上がった直後ですし、慣らしが必要かと思われます。経験値が目的ではない以上、多少取り分が減っても彼らの練度をついでに上げられるのであれば上々かと」
「……なるほど。7人編成のデメリットばかり考えていたけど、スキル上げツアーと言ったところね。それに取り分は6人より効率が悪くなったとしても0になる訳じゃないし、それもありか。流石アリシアだわ」
「お役に立てて光栄です」

 プレイヤー思考で考えると効率を求めすぎちゃうところがあるから、アリシアのこの発案は本当に助かるわね。
 そのままアリシアに甘えながらお風呂でイチャイチャ、ベッドでイチャイチャして夜を明かす。

 そして翌日の朝、王城の裏手にはフル装備を着込んだメンバーが揃っていた。

「君がレディーの友人だね。改めて挨拶を。私はミカエラ・レヴァンディエス。昨日のパーティーでは挨拶が出来ず申し訳なかった」
「いえ、ミカエラさんは女性に大変おモテになられていた様ですし、気にしておりません」

 そこまで言ったところで、ミーシャがこっそり耳打ちしに来る。

「ねえシラユキ、もしかしてこの人も……」
「うん? ああ、違うよ。ミカちゃんはただの友達とかそんな感じ。国を任せるには貧弱すぎたから私が鍛え直してるとこなの」
「そうなんだ。流石にこの人に手を出すほど、節操無しじゃないのね」

 ミーシャが安心した様に言う。失礼しちゃうなー。
 私がミカちゃんに手を出さないのは、元々苦手意識があったからって言うのもあるけど、一応ちゃんとした理由もある。それを唯一知るはずのミーシャに思い出してもらう為に、チョチョイと手招きをして皆から離れて内緒話をする。

「ほら、ミカちゃんにはあの人がいるでしょ?」
「え? 誰の……ああー。そう言えばそうだったわね。なに、義理立てしてるの?」
「そんなんじゃないけど……。ほら、知ってるでしょ、私は好きじゃないって」
「んー、まあ確かに、可愛くはないわね?」
「そういうこと!」
「でも噂によると、母娘両方に手を出したとか聞いてるんですけど?」
「そこはほら、ママは未亡人だから。セーフ」
「ママ、ねぇ……」

 ミーシャだって、きっとママを目にしたらコロっと行っちゃう気がするわ。まあそれは、会った時のお楽しみに取っておこう。

「とにかく、パーティを組みましょ。今から誘うね」
「おっけー。……うわ、多いわね」

 表示されたメンバーの名前一覧に驚くミーシャ。まあ、この場の面々だけじゃなくて、王都に置いてきた子達の名前も出てるからね。

「このメンバー全員、アンタの婚約者なわけ? あ、同じパーティにココナちゃんいるじゃない」
「そう言えばミーシャ、獣人系の子が好きだったわね。あと、ここに表示されている全員がそうってわけじゃないわ。男も混ざってるし、別パーティの1人はミカちゃんの部下だもの。けど、大半が大事な人ね」
「ふーん。知ってる名前といえば、シラユキお気に入りのソフィアくらいか。……ん? この神丸って」
「その神丸よ」
「またコアなメンツで組んだ編成ねぇ。ま、1年も昔に王国だけでこの3人が一緒にいる事だけでも凄いことか」
「でしょ? ……あ、ミーシャ。こう言う会話だけど……」
「分かってるって。2人っきりの時にしか言わないわ。アリシアさんとの時も、変な顔されたし。余計なことは言わないことにするわ」
「えっ? 何言ったの!?」
「レベル100なんて珍しくもない、みたいな事をね。よくよく考えれば迂闊だったわ。周りのレベルを見れば、頭おかしい人の様にみられても仕方がないもの。反省してる」
「気を付けようね、お互いに」

 私も、ミーシャと出会えて浮かれちゃってるから、気を付けないと。地が出ることはもうあり得ないとしても、プレイヤー同士の会話内容をアリシアとかに振らないように、ね。
 この世界のレベルとは隔絶してるからなぁ。

「じゃ、皆を待たせてるし、行きましょ」
「ええ。リアル化したダンジョン、楽しみだわ」
「私も! ここ、深層は綺麗なところだもの!」

『私も楽しみだわ!』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

バランスブレイカー〜ガチャで手に入れたブッ壊れ装備には美少女が宿ってました〜

ふるっかわ
ファンタジー
ガチャで手に入れたアイテムには美少女達が宿っていた!? 主人公のユイトは大人気VRMMO「ナイト&アルケミー」に実装されたぶっ壊れ装備を手に入れた瞬間見た事も無い世界に突如転送される。 転送されたユイトは唯一手元に残った刀に宿った少女サクヤと無くした装備を探す旅に出るがやがて世界を巻き込んだ大事件に巻き込まれて行く… ※感想などいただけると励みになります、稚作ではありますが楽しんでいただければ嬉しいです。 ※こちらの作品は小説家になろう様にも掲載しております。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...