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第6章:魔法学園 授業革命編

第183話 『その日、会議を進めた』

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「『未知を走破せし者』……かぁ。どれどれ」

**********
名前:リーリエ
職業:レンジャー
Lv:25
補正他職業:狩人、シーフ
総戦闘力:2434(+620 +280 +49)
称号:未知を走破せし者
**********

 ふむ。。そして今回のダンジョンでレベルが3上がったのね。
 さて、最後の+49が称号の効果だから、こちらも想定通り全ステータス+7の称号に違いないわ。まさかゲーム世界と同じ名前の、同じ効能を持った称号が手に入るなんてね。
 アリシアですら称号なんて1つも取得していなかったから、プレイヤーだけの専用機能だとばかりだと思っていたわ。ソフィーやアリスちゃんが持っているお気に入りの絵本や物語、街や国に伝わる伝承にも称号持ちが現れる事があったけれど、実在が怪しかったからノーカウントだったのよね。
 けど、目の前で大事な家族が持ち手になった以上、信用するしかないわね。

 そう思うと、簡単な称号とかは今後取らせて行っても良いかもしれないわ。とりあえず、私の知っている取得方法をそれとなく伝えてみようかな。

「名称とタイミング的に、入手条件は初見かつソロでダンジョンをクリアすることでしょうね。私達はもう入ってしまったし、中級ダンジョンも既に攻略してしまった以上、ここでの入手は不可能でしょうね」
「お嬢様は、この称号をお持ちでは無いのですか?」
「ええ、喪ってしまったわ」
「ですが、ポルト郊外にあるダンジョンを制覇されたとお聞きしたのですが……」
「あのダンジョンはソロ専用だから、称号の対象外なんでしょうね」
「そう、なのですか……」

 あら、アリシア落ち込んじゃった?

「アリシア?」
「お嬢様1人であればいくらでも取得する機会があったというのに、私に付き合わせてしまったが為にせっかくの称号の取得を逃してしまったなんて……。従者失格です」
「何言ってるのよ、初心者ダンジョンにはタイミング的にソロは周りの目もあって厳しかったし、中級ダンジョンも貴女と一緒に入ることを望んだのは私よ? 貴女が自分を責める必要はないわ」
「ですが……」
「それに、初心者ダンジョンの数倍長い中級ダンジョンを、私1人で潜らせるつもり? 寂しくて泣いちゃうわ」
「お嬢様……」

 顔を上げたアリシアと目が合う。
 もう、カワイイんだから。

「それに、称号による総戦闘力の上昇値は49よ。アリシア達ならまだしも、私からしたら微々たるものよ。だから本当に気にしなくて良いのよ」
「お嬢様……。はい、ありがとうございます」
「アリシアは良い子ねー。よしよし」
「あっ、お嬢様……んんっ」

 撫でたりこねたり頬擦りしたり。アリシアが愛おしくて可愛がっていると、ソフィーがおずおずと確認するように声を上げる。

「ね、ねえ。総戦闘力49加算って、結構な数値よね? それが微々たるものって、あんたの総戦闘力はどうなってるのよ……。あと、その49の内訳も知ってるなら知りたいわ。取得難易度としてはかなり高いし、ほとんどの人がもう取得できなくても、公表すればそれだけで伯父様から褒賞が出るわよ」
「ほ、褒賞!?」
「そうなんだ? まあでも確かに、称号って唯一無二の物が多いイメージだけど、多数の人に恩恵があるかもしれないなら、それを公開してくれるなら国としてはありがたいことか」
「はい、その通りです。この場合はリーリエママに褒賞が渡されますね。それも大々的に」
「だ、大々的!?」
「ママが一躍時の人に。うーん、ここまで大事になるなんて思ってもみなかったけど、これはこれでアリね」
「ぷしゅぅ」

 あ、ママから久々に煙が出た。
 平民代表なママがいくら私の行動に振り回されて慣れて来たとしても、陛下から直接公の場で褒賞を渡されるなんて事になったら、流石にキャパオーバーするわよね。

 そんなママを、皆が温かい目で見守る。

「ふふ。さて、49の内訳だったわね。これは簡単よ、全ステータスが+7されるの。特にどれかに特化しているわけではないけど、全部何かしらに使うから腐ることはないわね」
「腐ることは無いって言うけど……。はい!」
「はいソフィー」
「家族会議って言うんだから、私も議題を上げてもいいのよね」
「もちろんよー」
「じゃあ、シラユキが知っているステータスの知識を教えて。私達は皆、授業で教えられていることしかわからないもの」
「そうね、いずれは公表するつもりでいるけど、皆には先んじて教えておいても良いわね」

 そうして皆に以下の事を教える。

 STR:腕力、膂力、筋力。言い方は数あれど、物理的な攻撃力や技の威力に直結していて高いほど重い装備も身に付けられる。
 DEX:器用。この値が高いほど繊細な動作が可能となり、狙った部位への攻撃への精度が増したり、生産職の精製物にも影響を与える。
 VIT:耐久力、頑丈、体幹。物理的な防御力だけでなくHPに影響し、高いだけ敵からの攻撃に耐えられる指標となる。
 AGI:敏捷性、素早さ、身のこなし。これが高ければ高いほど身軽になり、全身のバネが上昇する。
 INT:知力、賢さ。上昇すると知識の吸収力が上がり、記憶力も増す。高ければ高いほど魔法攻撃の威力が増す。ただし魔法に応じて威力の限界値あり。
 MND:精神力、信仰力。神聖属性の魔法に多大な影響力を持つ。回復力だけでなく補助魔法の効力を伸ばし、自身が受ける弱体魔法のレジストにも役立つ。
 CHR:魅力。シラユキちゃんを構成する全て。カワイイは最強!

「ちょっと、最後のは何よ」
「何って、文字通りだけど?」
「意味わかんないけど……。でも、何故か少し理解出来てしまう事に、何とも言えない感情が芽生えるわ」

 むすっとするソフィーのほっぺをプニプニする。カワイイなぁソフィーは。

「むぅ。じゃあ、リーリエママでも腐らない理由も教えて」
「はいはい。STRはそのまま弓の威力。DEXも狙い通りの場所に飛ばせる。VITとAGIは体幹と敏捷。つまり移動して、構えて、撃つ。それを繰り返す『レンジャー』にとっては欠かせない要素だわ。INTは魔法を使うし属性矢にも影響がある。MNDは今後ママにも神聖魔法を覚えてもらうつもりなのと、弓術にも支援魔法の類はあるわ。最後にCHRでママのカワイさアップ! 全部必要になるわね」
「「「「なるほど (なの)」」」」
「はぅ……」

 ママも途中までは納得しながら聞いていたけど、最後の部分で顔を赤くして恥ずかしくなったみたいね。ああもう、カワイイなぁママは。
 とりあえず撫で回そう。

「で、では次は私が!」
「はいアリスちゃん」
「私は、シラユキ姉様やアリシア姉様の、総戦闘力が知りたいです……!」
「あー……」

 そっかそっか、気になっちゃうか。新しい家族は積極的ねー。
 でもそれを伝えるには彼女達の意向を確認しなきゃ。

「あ、だ、ダメならいいんです! 無茶を言ってごめんなさい」
「あ、ごめんね。ダメってわけじゃ無いのよ? ただそうねぇ……」

 皆を見回す。

「私はかまいません」
「ママも、覚悟は出来てるわ」
「リリも知りたいの!」
「分かったわ。でもそれを伝える前に、ランク10を超える装備に関して説明する必要があるのよ」
「「「「「??」」」」」

 皆が不思議そうな顔をする。まあそうよね、その反応も理解出来るわ。でも、百聞は一見にしかずよ。

「改めて説明するけど、これが私のメイン装備の2つよ」

 実物と同時に、性能を紙に書いて皆に見せた。

********
名前:先駆者の杖[至高]
説明:相反する神樹と邪竜の爪をベースに、数多の素材を魔力で無理やり結合させ、解けそうになる反発を圧倒的な力で押さえ込んだ常理に反する逸品。茨の道の先にあるのは、栄光か、破滅か。
装備可能職業:後衛職
必要ステータス:総戦闘力6000以上
攻撃力:798
武器ランク:16
効果:全ステータス+8%。特殊効果:範囲魔法のレンジ上昇・特大、MP自動回復、指導者としての補正にボーナス。
製作者:シラユキ
付与:打撃強化・魔力強化
********

**********
名前:真・白の乙女
装備可能職業:精霊使い、大賢者、グランドマスター
必要ステータス:MND2000以上、CHR2000以上
防具ランク:15
説明:精霊に認められたものだけが装着することを許された伝説の装束。装備者の魔力を使い、様々な攻撃に対して防壁を張る。各種属性魔法の効果を高めてくれる。本来の力の一部を取り戻した事で、淡い輝きがその身を包み、見る者を魅了する。
効果:全ステータス+7%。攻撃魔法の威力+40%。常に清浄化。
**********

「「「「「……」」」」」

 実物は皆見たことがあるけど、性能に関してはランクくらいしか伝えていなかったのよね。でも今回は、説明文も効果も全部書いた。
 あの頃はただの家族だったけど、今は大事な婚約者達だもの。これくらいは伝えても問題ないくらいには親密になったはずよ。

「……ランクだけ聞いてもなんか凄いとしか感想が出てこなかったけど、性能や説明を見ると改めて本物なんだなぁって感じるわ」
「白の乙女……尊い……」
「装備可能職業や必要ステータスという存在も初めて知りましたが、要求が異常なほど高いですね。これほどの数値が求められるなら、シラユキ姉様専用の装具と言っても頷けます」
「威力40%ってどれくらいなの?」
「100ダメージなら140ダメージだけど、1000ダメージなら1400ダメージになると言うことだと思うわ」
「凄いの!!」

 1人反応がおかしいけど、他の子達はいい反応ね。ママは平静を装って何も言わない様に努めているけど、多分あれね。別のことを考えて気を紛らわせようとしているのね。
 そんなママには追い打ちっ。

「ママ、この2つの装備と、今まで見せてきた武器や防具。その違いがわかるかしら?」
「ふぇ!? ……そ、そうね。説明文からして仰々しいけれど、やっぱりステータスの上昇部分かしら。今までシラユキちゃんが作ってくれた装備は、何かしら固定値で上がっていたのに、これらは%で上昇しているところね」
「せいかーい!」

 ママを抱きしめて頬擦りする。

「でも、よく分からないわ。この上昇量だと、そんなに効果が発揮されないと思うの」
「……ねえアリスティア、%ってお父様の書類とかでたまに見るけど、何?」
「まだ習っていませんが、高等部の2年で習うものです。私は予習しているので少しは分かりますが」

 ドヤ顔するアリスちゃん。はいカワイイ。
 でもそっか、まだ掛け算しか習ってないから%はまだまだ先か。それだと内容を理解するのも大変よね。それを思うと平民出身のママはこれが出来るのって、結構凄いことなのでは?
 さて、この中で一番理解しているはずの子の目を、そろそろ覚まさせようかしら。

「はむっ」
「んひゃうっ!」
「あむあむ」
「お、おじょ、さま……! み、耳を、はむはむしないで、くだ、んんっ」
「……目が覚めた?」
「はい……」

 蕩けていたアリシアが別の意味で蕩けてしまったけど、まあ大丈夫でしょ。

「アリシアならこの%の意味、分かるわね?」
「……はい。総戦闘力が6000。いえ、8000はないと、これらの装備を身に付けても本領が発揮されないと言うことですね」
「そうなの?」
「ええ。お母様の総戦闘力を参考にしましょうか。お母様は装備をしなければ1500程ですが、弓とメイド服を着用する事で+900となっています。仮にお嬢様と同等の装備を着用したとしましょう。その場合は1500の15%増しですから、増加値はたったの225でしかありません。これならばランク10以下の装備を身につけた方が良いでしょう」
「つまりシラユキの場合は、ランク10までの固定値上昇よりも、%で上昇する装備の方が効果が出るほどの総戦闘力を持っていると言うことね」
「そういうことー。ランク10以上でも%ではなく固定値で増加する物も、あるにはあるけど……。あれは珍しい類のものだから狙って作るのは難しいわ。だから、今後皆に作る装備は基本最大9とか10くらいになると思っていてね」

 シラユキちゃんだけ15とか16で、自分達は10以下しか貰えないことに、彼女達なら不満に思うことは無いとは思うけど……。それでも理由があるならちゃんと説明しておくべきだと思ったのよね。
 納得してくれたみたいで良かったわ。

「それで肝心の総戦闘力だけど、せっかくだからこの2つを装備するわね」

 お洋服を脱いで、アリシアに着せてもらう事にする。案の定だけど、その手つきはいつも以上に慎重だった。

『ステータスチェック』

*********
総戦闘力:23511(3750 +1433 +1639 +20)

STR:2735(+167 +191)
DEX:2735(+167 +191)
VIT:3597(+750 +219 +251)
AGI:2735(+167 +191)
INT:2735(+167 +191)
MND:4466(+1500 +272 +311)
CHR:4508(+1500 +274 +313 +20)

称号:求道者、悪食を屠りし者
装備:『真・白の乙女』『先駆者の杖[至高]』『翠玉のペンダント』

*********

 表示された物を2枚の紙に書き記していく。
 流石に最初の部分はインパクトが大きいので、隠しながら書いて一気に見せようっと。

「はい出来た。思う存分見ていいわよ」
「……!」
「は?」
「……え?」
「わあ」
「?? ……!?」

 皆が皆、思い思いのリアクションをしている間に、私は予備で書いたもう一枚と装備の詳細をひとまとめにして、封筒に入れて外へと持ち出した。


◇◇◇◇◇◇◇◇


 マジックテントの外に出ると、部屋には誰もいなかったが、ナンバーズ全員が控えている空気を感じたので3人を呼び出す。
 今日はもう用事は無いって言ったのに待機してくれてるなんてありがたいわ。前言撤回する様で申し訳ないけれど、追加でお使いをお願いしよう。

「報告を」
「はっ。精油と香油の件は商業ギルドと合わせて了承を得ました。王妃様方は首を長くして待っておられたようでとても感謝しておられました。第二騎士団でも、代表してミカエラ様から熱量のある感謝の気持ちを頂戴しております。そして例のオーブに関しては、陛下が率先して指揮を執り急ぎ検証を重ねるとのこと」
「そう。つまり貴方達は、まだオーブを使っていないのね?」
「はい。ナンバーズ用の物に関しても、陛下に預けております」
「そっ。ところで、オーブに関してはアリスちゃんから草案が出たわ。このオーブの素材を私1人で集め続けるのは現実的じゃないから、練習も兼ねて中級ダンジョンに第二騎士団と教会の人達が6人パーティを組んで、合同で演習してはどうかってね」
「承知しました。必ず伝えます」
「あと、コレ封書にしたいんだけど何か持ってない?」
「ではこちらを」
「おおー、用意がいいわね」

 エイゼルから封をする為の魔道具を受け取る。魔力を流して判子の要領で押してみると、王家の紋章の印で蝋がされた。
 ……いいのかなコレ。

「陛下からは許可を得ております」
「なら良いんだけど。とりあえずコレ、陛下とザナックさんに見せて。これの公開範囲は今のところ、手紙を受け取る彼らと貴方達3人。それからミカちゃんと王妃様達までとします。ただ、陛下とザナックさんがタイミングや見せる範囲を決めたいと言うなら、お任せしますと伝えて」
「承知致しました」
「それじゃ、3人とも行っていいわ。今日は本当にこれ以上用事がないから、ゆっくり休みなさい」
「はっ。おやすみなさいませ」
「「おやすみなさいませ」」
「うん、おやすみー」

 ナンバーズと別れてマジックテントに戻ると、興奮した家族に質問攻めされた。今夜は寝かさないぞっ! ってやつかしら?

『今日も話すことがいっぱいあるわね、マスター』
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