異世界転入生

結城 朱煉

文字の大きさ
上 下
7 / 59
魔法学校に転入します

僕のクラスと砲撃

しおりを挟む
コツコツ
トコトコ

「えっと…ルーフェル先生」
「ルー先生で良いよ、皆からそう呼ばれているしね」
「じゃぁ…ルー先生…僕は何処のクラスになるの?」
「君は1-Dだよ、そこしか無理だったから」
(…クラスの人数的な問題なんだろうなぁ…)

学長室から正面の大きな扉までの大きく広い廊下を、行きとは逆と方向に向かって歩いて行く2人

(…この廊下って、曲がり角とか何にも無かったよね…一度あのデッカイ扉から外出るのかな?メンドクサイなぁ…)

ユウは心の中で文句を言いながらも、ルーフェルについて行く
すると、ルーフェルは突然何もない壁の前で立ち止まった
薄暗い闇の向こうに大きな扉が見えているのに、ココで立ち止まる理由が分からずユウは首を傾げる

「ルー先生…ココに何処か違う場所に通じる道は無いですよ?」
「クスクス…君は本当に、何もない世界で育ったんだね
 道ならあるさ、見ててごらん」

ルーフェルはスッと手を上げ、何の変哲もない壁に向き合う

「開け」

そう一言言うと、先ほどのルイのように手が光を放ち、壁に当たる
すると、壁がスッと消えて道が現れた

「わぁ!スゴイ!」
「スゴイって…驚いてる場合じゃないぞ
 学校内を移動するなら、これくらいの魔法は使えないと困ることになるぞ」
「えぇ!!?僕が魔法使うの!!?てか、使えるの!?!」
「(…何をするつもりで来たんだ?この子は…)
 魔法が使えないなら、初めから入口の扉に阻まれている」
「…え?どういうこと?」
「あの扉は、魔力の無い者は通さないという魔法がかかっている」
「へぇ…でも、魔法使うのが当然のこの世界で、魔力の無い人なんているの?」
「いや、いないよ
 まぁ、軽いテストみたいなものだと思ってくれたら良い」
「入試テスト…みたいなものか…」

ユウは自分の理解しやすいように置き換え、納得した
話をしながら曲がってすぐにあった階段をのぼり、そして長い廊下を歩く
今歩いている廊下は、左右に大きな窓があり、とても明るい
先ほどまでの薄暗い廊下が嘘のようだ…
渡り廊下のような窓以外何も無い廊下の突き当たりは、曲がり角になっている

そこを曲がると、校舎らしく『1-A』や『1-B』というクラスの表示が柱に釣り下がっている

「1-Aは成績優秀者を集めたクラス
 君の場合は転入したてで力量が分からないからDから始めてもらう
 まぁ、先ほど見た限りでは知識は皆無のようだから、Dから始めるしかないが…
 クラスに定員は無く、力量がライン引きだ
 それぞれのレベルに合った学習が出来るようになっている」
「へぇ~」

ユウは珍しそうにキョロキョロと見回しながら、ルーフェルの話を聞き流す
校舎の見た目は古そうな洋館風だが、中はとても綺麗だった
壁はレンガで、床は木が使われている
そんなユウを横目で確認して、苦笑いしてルーフェルは目的のDクラスへ

「ココがDクラスだ」

いつの間にか、Dと書かれた木造のドアの前に立っていた

「ルーフェルだ、転入生を連れてきた」

ルーフェルがそう言うと、ドアが開き長い金髪の女性が出てきた
女性はユウを一目見て、何か引っかかるものを感じたのか、ズイッと顔を近づけユウをよく見る
一方、ユウは顔を近づけられ、2・3歩後ろに後ずさる

「ねぇルー君…この転入生…誰かに似てない?」
「ルイの子だ」
「あぁぁ!ルイちゃんの子どもなのね!納得だわ!
そっかそっか、昔のルイちゃんにソックリだったのね!」
「よ、よろしくお願いします…」

謎が解けてスッキリした顔をしている女性に若干引きながらも、ユウはペコリと頭を下げた

「私はリーナよ!よろしくね!
 さ、それじゃ皆に自己紹介しないとね!」
「あ、はい…」

『自己紹介』という言葉に少し緊張したユウの手を握り、教室に引っ張り込むリーナ
 ルーフェルは、自分の仕事はココまでだ…とでも言うように、その様子を見届け踵を返した

「皆、転入生が到着したわよ!ユウ・フィーマちゃんよ!」
(あれ?苗字が…あ~、そういやさっき、母さんフィーマって言ってたなぁ…
ってことは、僕もフィーマになるわけだ…)

半ば引きずられながら教壇の横にまで連れてこられたユウ
地に足がついてる感覚を何とか確かめ、浮かんだ疑問を自己完結させて視線を足元から教室に向ける
机は2・3人くらいが並べるくらいの長さで、イスもそれぐらいを想定した長さになっている
 ザッと見…生徒数は20人くらいだろうか…向こうの学校よりは僅かに少ない感じがする
教室の大きさは、ごく一般的な教室のサイズなので、少し机の間隔に余裕がある

「あの…ユウ・フィーマです
 よろしくお願いします」

頭が色々な情報を処理していて、自己紹介文まで考える余裕が無く、最低限の自己紹介で終わった
とりあえず、ペコリとお辞儀をしておく

「センセー!私の隣空いてます!」
「そっかー、ならライナの隣でいっか」
「ヤッター!」

ライナと呼ばれた少女は飛び跳ねて喜んでいる
ユウは少し苦笑いをしながら、ライナに手招きされるままに、そちらに向かう

「私、ライナ・ルーガ!よろしくね!」
「よろしく」

 元気の良い挨拶に、ユウはニッコリ笑って答えた

「カッコいいよ可愛いよぉぉ!!!!」
「うぎゃ!?」

ライナは思いっきりユウに飛びついた
まさか、飛びつかれるなんて夢にも思っていなかったユウは受け止められず、2人そろってドシャッと床に倒れたのだった

「センセー、ライナがユウを砲撃してまーす」

前に座っている少年が手を上げ、リーナを呼ぶ
呼ばずとも、今の騒がしさなら気付いていただろうが…

「ラーイーナー」
「ヤバッ…ちょっとリュウ!!」

ライナは慌てて起き上がりユウの上から退く
そして、リュウを睨むがリュウは知らん顔
そんな事をしている間に、リーナはライナの目の前に浮いている
慌てて弁解しようとするが、そんな暇も無くリーナの鉄拳を食らい、撃沈した
ユウはゆっくり起き上がり、机を支えに椅子に座る

(うん…痛いけど、クラスは面白いね)

ユウは少し苦笑いを浮かべて、リーナに怒られているライナを見た
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...