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6.二人の始まり
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身体が回復したキイラは、儂の家でよく働いた。
日中は街や洞窟へ行っていることも多い儂の代わりに家事をやってくれたり、儂が家にいる時は仕事の手伝いを率先してやってくれた。
部屋を与えてみれば、その部屋に元々据え置いてあった本は全て読み、知識は直ぐに吸収した。
優秀で素直な子だ。それ故に、ぴくりとも笑わないのが気になった。
それに、彼はなにも欲しがらないし、反抗しない。あまりに従順すぎるその態度は勇者の元に五年間居た反動か。
ある日のこと、洞窟の浅い層に生えている薬草を取りに行くとキイラに告げると「俺も行っていいですか」と問いかけてきたので、危険がないか少し考えた後、構わないと答えた。少なくとも勇者達と冒険をしてきた男だ。間違いなく実力はあるし、探索自体は慣れている筈だ。
しかし、洞窟に入ると、キイラは物珍しそうな顔で周りを見回した。仄かに感じる違和感、儂は思わず彼に問いかけた。
「……こう言った場所に来るのは初めてか?」
「初めて……ではないんですけど、こうやって周りをちゃんと見て歩くのは初めてだなって……」
成る程、前までは余裕が無かったのか。
儂は歩きながら洞窟内の仕掛けをキイラに教えた。ゆっくりと洞窟内を回りながら、何処に薬草が生えているか、何処に罠があるかを教えて、儂が何か一つ教える度にキイラは興味深そうにその話をしっかりと聞いた。
話を聞く彼の横顔を見ていると、この男を手放したく無いと言う気持ちがぐずぐずと沸いてくる。
今、儂はきっと楽しいのだ。何十年ぶりかに出来た歳下の友人と過ごすのが楽しくて、柄にもなく後ろ髪を引いている。
いざキイラが家から出て行く時、儂は彼を笑顔で送り出せるだろうか。
二人で過ごせる時間が永遠では無いことはわかっていたが、今だけはこの少年を見ていたい。
そんな気持ちが自分の中で渦巻いているのを見て見ぬふりをして、今はただ、目の前の少年に集中した。
日中は街や洞窟へ行っていることも多い儂の代わりに家事をやってくれたり、儂が家にいる時は仕事の手伝いを率先してやってくれた。
部屋を与えてみれば、その部屋に元々据え置いてあった本は全て読み、知識は直ぐに吸収した。
優秀で素直な子だ。それ故に、ぴくりとも笑わないのが気になった。
それに、彼はなにも欲しがらないし、反抗しない。あまりに従順すぎるその態度は勇者の元に五年間居た反動か。
ある日のこと、洞窟の浅い層に生えている薬草を取りに行くとキイラに告げると「俺も行っていいですか」と問いかけてきたので、危険がないか少し考えた後、構わないと答えた。少なくとも勇者達と冒険をしてきた男だ。間違いなく実力はあるし、探索自体は慣れている筈だ。
しかし、洞窟に入ると、キイラは物珍しそうな顔で周りを見回した。仄かに感じる違和感、儂は思わず彼に問いかけた。
「……こう言った場所に来るのは初めてか?」
「初めて……ではないんですけど、こうやって周りをちゃんと見て歩くのは初めてだなって……」
成る程、前までは余裕が無かったのか。
儂は歩きながら洞窟内の仕掛けをキイラに教えた。ゆっくりと洞窟内を回りながら、何処に薬草が生えているか、何処に罠があるかを教えて、儂が何か一つ教える度にキイラは興味深そうにその話をしっかりと聞いた。
話を聞く彼の横顔を見ていると、この男を手放したく無いと言う気持ちがぐずぐずと沸いてくる。
今、儂はきっと楽しいのだ。何十年ぶりかに出来た歳下の友人と過ごすのが楽しくて、柄にもなく後ろ髪を引いている。
いざキイラが家から出て行く時、儂は彼を笑顔で送り出せるだろうか。
二人で過ごせる時間が永遠では無いことはわかっていたが、今だけはこの少年を見ていたい。
そんな気持ちが自分の中で渦巻いているのを見て見ぬふりをして、今はただ、目の前の少年に集中した。
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