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5.ローレンツの独白
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隣国であるレイヴンテールへと赴いたのは、亡き友の弔いのためだった。
友の名はリチャード、レイヴンテールの大都市の教会の神父を勤めていた彼は、立派な人物だったと誰もが言う。
彼は他の者たちと共に、数人の孤児を世話していた。世話をして、独り立ちさせて、帰る家として何十年もそこに居た。
そんな男と儂がどうして知り合ったかと言えば、お互いにまだ十代、二十代だった頃に仲間として世界各地を旅して回ったからだ。
リーダーだったアンナは酷くお人好しで、色々な物事に首を突っ込んでは解決してきた。そんな彼女のことを「勇者」と周りが言い始めるのは遅くなかった。今と違って各国に勇者が居る時代とは違ったのもあるだろう。
癒し手だったリチャードとは考え方の違いでよく喧嘩になった。一緒のパーティに居れたことが奇跡だ。
(手の届く範囲は全て救いたいと、奴は言っていたな)
葬儀が終わり、教会内の居住スペースで休ませてもらっていると、リチャードの育てた子供達がわらわらと集まってきて、リチャードの昔話を強請ってきた。余程慕われていたのだな、とどこか救われたような気持ちにさせられる。教会の子供達はみな優しい子だ。
「ローレンツ様、宜しいでしょうか」
声をかけてきたのはリチャードと共に教会の切り盛りをしていたシスターだ。
「リチャード様から貴方様への手紙が、遺品の中から見つかりました」
「ありがとう」
手紙を受け取ると、少しだけ緊張しながらその封を開いた。
親愛なるローレンツへ。
もう長い間会っていないと言うのに、君にこんな事を頼むのは気が引けるが、律儀な君のことだから僕の葬式には必ず来てくれるだろうと思っていたよ。
僕は数多ある人生の間違いの中でも、取り返しのつかない間違いをしてしまったかもしれない。
私が面倒を見ていた子の中に、シミオンと言う少年が居た。君も名前ぐらいは知っているだろう。この国の勇者と共に行動する癒し手だからね。
最近、彼についての噂を聞いた。どうやら彼は勇者達に慰み者にされているらしいと言う噂だ。
それが本当のことなのであれば、彼を送り出してしまった私にも責任の一端がある。
ローレンツ、どうか彼を見かけたら助けてやってくれ。君だけが頼りだ。
喧嘩ばかりしていたが、君のことは嫌いじゃなかった。
身体に気をつけて、元気で。
リチャード・アトキンズ
友の名はリチャード、レイヴンテールの大都市の教会の神父を勤めていた彼は、立派な人物だったと誰もが言う。
彼は他の者たちと共に、数人の孤児を世話していた。世話をして、独り立ちさせて、帰る家として何十年もそこに居た。
そんな男と儂がどうして知り合ったかと言えば、お互いにまだ十代、二十代だった頃に仲間として世界各地を旅して回ったからだ。
リーダーだったアンナは酷くお人好しで、色々な物事に首を突っ込んでは解決してきた。そんな彼女のことを「勇者」と周りが言い始めるのは遅くなかった。今と違って各国に勇者が居る時代とは違ったのもあるだろう。
癒し手だったリチャードとは考え方の違いでよく喧嘩になった。一緒のパーティに居れたことが奇跡だ。
(手の届く範囲は全て救いたいと、奴は言っていたな)
葬儀が終わり、教会内の居住スペースで休ませてもらっていると、リチャードの育てた子供達がわらわらと集まってきて、リチャードの昔話を強請ってきた。余程慕われていたのだな、とどこか救われたような気持ちにさせられる。教会の子供達はみな優しい子だ。
「ローレンツ様、宜しいでしょうか」
声をかけてきたのはリチャードと共に教会の切り盛りをしていたシスターだ。
「リチャード様から貴方様への手紙が、遺品の中から見つかりました」
「ありがとう」
手紙を受け取ると、少しだけ緊張しながらその封を開いた。
親愛なるローレンツへ。
もう長い間会っていないと言うのに、君にこんな事を頼むのは気が引けるが、律儀な君のことだから僕の葬式には必ず来てくれるだろうと思っていたよ。
僕は数多ある人生の間違いの中でも、取り返しのつかない間違いをしてしまったかもしれない。
私が面倒を見ていた子の中に、シミオンと言う少年が居た。君も名前ぐらいは知っているだろう。この国の勇者と共に行動する癒し手だからね。
最近、彼についての噂を聞いた。どうやら彼は勇者達に慰み者にされているらしいと言う噂だ。
それが本当のことなのであれば、彼を送り出してしまった私にも責任の一端がある。
ローレンツ、どうか彼を見かけたら助けてやってくれ。君だけが頼りだ。
喧嘩ばかりしていたが、君のことは嫌いじゃなかった。
身体に気をつけて、元気で。
リチャード・アトキンズ
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