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第四章 ワクドキ学園パラダイス編 12歳

第62話 次なる目標はどうやら高そうな壁だ

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 昨夜は大変よかった。
 まさに歴史的発見と言える。
 これを教えてくれた教授に感謝だな。
 でも、この成果はシャイナに教えてやろう。
 尽くすの好きそうだし。

 さて、俺は昨日の余韻に浸りながら朝食を食べているのだが、気になることが1つある。
 ダンジョンのことだ。
 セオがやったことだと分かって安心していたが、ダンジョンに関する情報はまだ少ない。
 セオが詳しいなら聞いていた方が今後のためにもいいだろう。

「なぁ、セオ。この前のダンジョンに仕込んでた悪魔と天使の腕で魔物を強化する方法って有名なのか?」

「ん~。有名ではないよ~。というか、禁止されてるから、そういう意味では有名かな?」

「ダメじゃん……。何やってんだよ。もうすんなよ?」

「え~。楽しく冒険したかったんだもん~」

 だめだ、全然反省してない。

「それで、あれはどうやったんだ?」

「え~とね~。誰もいないダンジョンに強い魔物の一部を入れるとボスが強くなるんだよ~。その代わり、24時間するとボスの強さにダンジョンが馴染むんだよ~」

「馴染むとどうなるんだ?」

「ダンジョンの門の色が正しい色に変わるよ~」

「なるほど、それにしてもセオは詳しいな」

「ん~。子どもの頃から遊び場にしてるからね~」

 なるほどね。
 それで、禁止事項にも詳しいし、やったこともあるわけか。
 そもそも、セオくらいの強さなら、どこのダンジョンまでいけるんだ?

「なぁ、そしたら、セオは特別級は攻略したことあるか?か」

「う~ん。見たことはあるけど、特別級は冒険者ランクを上げないと入れないよ~。黙って入ろうとしたけど、すぐに見つかって追い出されるんだ~」

 そりゃそうだ。
 特別級はランクA以上からしか入ることができないとされている。
 それ以外は特に制限は設けられていないが、特別級だけは別物であるということだろう。
 それくらい危険なんだとしたらある程度の準備も必要となる。
 上級ダンジョンが大したことないことから特別級も大したことないと願いたいが、希望的観測でしかない。
 今のところトラップの類は出会っていないが、悪辣なトラップもあるかもしれない。
 特別級攻略までは少し時間がかかるだろう。
 
 今後の行動指針としては、
 1、冒険者ランクをA以上に上げる。
 2、魔術大会の情報を収集する。
 3、ダンジョンの攻略情報を収集する。
 4、魔術の研究。
 5、オーラの研究。

 これくらいだろうか?
 改めて考えると多いな。
 3つくらいにしたかった。
 まぁ、5に関してはいつでもどこでもできるので、気にしてないが。
 4は地味に大変だ。
 以前の魔法陣総論の授業で友達になったメンバーと研究すれば早そうだ

 あ、そのメンバーといえば「若返りの魔術」の術式を提供してやったらあっさり「時を止める魔術」を完成させていた。
 魔力によって止められる時間が変わるらしく、一般人には使いにくい仕様らしい。
 メンバーは頭を抱えていた。
 俺は全く問題ないので魔力に応じて時間を止められる。
 これも、イタズラに使えそうなのでみんなには黙っておこう。
 
 さて、冒険者ランクはセオがすでにCランクなので、彼女を中心にダンジョンを探し、近場のダンジョンをクリアしてはギルドと市役所に報告という作業の繰り返しだ。
 ちなみに、セオにゴッドイーターと、魔術師大会優勝と、ダンジョンマスターの3冠を目指していると言ったら「かっこいいね~」と返事をもらった。
 協力してくれるらしい。
 心強い。
 でも、ゴットイーターになるということは、セオを倒すということなんだが、わかってるんだろうか?
 まぁ、いいか。

 次に魔術師大会についてだが、これはセオのお母さんである校長が情報を持っていた。
 どうやら魔術師大会の運営は魔術師協会が運営しているらしく、その協会役員でないと情報は手に入らないらしい。
 魔術はまだまだ秘匿された、閉ざされた情報だ。
 これに観客を入れて試合をすると、秘匿魔術を全世界に公開することになる。
 それを避けるための措置であるらしい。
 そのために、出場には協会役員の紹介が必要とのことだ。
 セオは以前、出場したことあるらしいが、完敗したので、諦めたらしい。
 オーラで肉弾戦も許されているが、この惑星の魔術はなんでもアリだ。
 オーラしか使えないセオでは手も足も出なかったのも納得だ。
 そこで、その、余っている出場権を譲ってもらえないか交渉してみることにした。
 
「校長先生、魔術師協会の役員なんでしょ? セオから聞いたよ。魔術師大会に出たいんだけど、出場権を譲ってくださいよ」

「あら、校長先生なんてよそよそしいね。『お義母さん』でいいんだよ?」

「いや、気が早すぎでしょ。アネモネとは結婚を約束してるけど、セオはまだ出会って日が浅いしね。時が来たらお知らせします。それより、出場権はどうですか?」

「まぁ、それよりなんて言わないでちゃんと考えてよね。あの子、男の子と仲良くなったのは初めてなんだから。まぁ、いいか。それより、出場権だね。あれは、もう別の人物に渡すって約束してるからそいつからぶん取ってくるなら使っていいよ」

「ぶん取るって……。物騒すぎるでしょ」

「何言ってるんだい?魔術師協会は『ぶん取る』を正式な参加方法と認めているよ。それくらい珍しい権利なのさ。何せ、世界で16人しかいない役員だからね。参加者は16人。その参加チケットを死守できない程度の力のものには出場を許さないのさ。それくらい狭い門なんだよ」

「そうなんですね。以前セオが完敗したって聞いたんですけど、それって、魔術の力がやはり必要ということですか?」

「そうだねぇ。オーラは魔法に分類されるけど、できることは限られてるし、魔法使いなんてゴロゴロいるからね。ちなみに、16人の出場者全員が特級術者だよ」

「やはりそうですか。魔闘士大会にもゴロゴロといたし、世界に80人しかいない特級が多すぎですよね?」

「そう思うだろ? でも、考えてみなよ? この二つの大会は術者にとって栄誉ある称号だよ? 特級に生まれたなら狙ってみたくなるだろ? 特級じゃないのに、勝とうとする私たちの方が珍しいのさ。私やツバルみたいにね」

「なるほど、それじゃあ、ダンジョンマスターも特級術者が多いですかね?」

「そりゃ、そうなるね。しかし、あれはまた別の世界だよ? だって、魔力を測定しないし、公表してるものなんてウソばっかりさ。騙し合いが常の世界だよ」

 ダンジョンマスターのヘンドリック・ラダーさんは上級と言っていたが、それも嘘と見て間違いないな。

「わかりました。ありがとうございます。それじゃあ、今後、出場権を奪いに行こうと思うのですが、どなたが持ってますか?」

「今は魔法陣総論の授業をとってる『ヒャ・ッハー』という坊主が持ってるよ」

 意外に近い人だったな。
 それで、マニアックな魔術をたくさん開発してるのか。
 なんか、納得いったな。
 しかし、ヒャッハー先輩は可愛がってくれてるからな。
 それだけにぶん取るのは気がひけるな。

「なんだい?知り合いかい?それじゃあ、決闘でも申し込んでみな?ヒャ族は決闘でなんでも決めるという物騒な部族で知られているからね。申し込んだら必ず受けるよ」

「なるほど、ありがとうございます。早速申し込んでみます」


 こうして、校長の元から帰宅した。

「意外に近い人物が魔術師大会の切符を持ってたので、決闘して奪ってくるよ」
 アネモネとセオに言う。

「そうかい。よかったじゃないか。頑張ってきてね」

「ヒャッハーでしょ~?私があげたんだよ~」

「え、セオって魔術師大会にも顔出してたの?」
 アネモネが驚く。
 そりゃそうだ。

「うん~。すぐに負けたけどね~」

「セオで負けるってどんな大会だよ?」
 アネモネはさらに驚きながら言った。

「よくわからない間に場外に出されてたんだ~」

「それって時魔術かな?」

「ん~。わかんない~。気がついたら場外に立ってたの~」

「そっか。やってみなきゃ、わからんわな」

 まぁ、なんとかなるか。




セオのイメージ画像です
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