39 / 76
第三章 激闘の魔闘士大会編 中等部1年生
第36話 闇オーラ
しおりを挟む
俺はシャイナ・グランテの本気を知らない。
しかし、恐らくオーラ総量が桁違いであるため負けることは無いと考えている。
さらに言えば、怪我をさせないか心配しているくらいだ。
話し合いの進み方によっては棄権を勧めたい。
正直、シャイナとは闘いたくない。
世話になったし、シャイナ・グランテという人物が好きなんだ。
傷つけたくない。
こういった考えで俺とアネモネは国立大学へ来ていた。
コンコンコン
「はい。どうぞ」
寮の一室のリビングに通される。
「失礼します。お忙しいなか、貴重なお時間ありがとうございます。ご無沙汰しています」
「今回はノックしてくれたんですね」
「はい。この前はすいませんでした」
「いえいえ、もう気にしていませんよ」
「前は気にしてたんですね。そんなことより次の試合についてです。いや、それもあるが、まだ隠してただろ?」
「隠していたつもりはありませんよ。まだ教えられる段階ではないと判断して黙ってはいましたが」
「!?どういうことよ?ライが負けてもよかったっていうの?そもそもコーンさんに失礼でしょ?」
アネモネは吠える。
「やっぱりそういうことか。アネモネ、いいんだよ。予想はしていたんだ」
「どういうこと?予想って?」
アネモネは不思議そうな顔をしている。
「考えたんだよ。あと、オリビアもヒントをくれたんだ。サバイバル戦直前に闇オーラの使い方を教えなかったのは危なかったからだろ?」
「そうですよ。少し上手く使えるようになったのはラース辺りに教えてもらったんですか?使える気になっているようですが、非常に危険ですよ。もう使うことはやめておきなさい」
「いや、逆だ。シャイナに怪我をさせたくないから棄権を勧めに来たんだ」
「ライ君ではシャイナに勝てませんよ。魔闘法はそんな単純なものではないんです。ライ君こそ棄権することをおすすめします」
教授も押し返す。
「なるほど、平行線ってことですね。それなら試合で決めるほかないですね。しかし、教授やシャイナには感謝しています。勝っても負けてもこれまで以上の関係を続けさせてください」
俺は丁寧にお願いする。
重要なことだ。
「それを聞いて安心しました。私の一番の心配材料はキミたちとの関係をキープできるかどうかでしたから」
「そうだな。俺たちが研究材料でもあるもんな。こちらこそよろしく」
「そうね。アタシもシャイナとは仲良くしたい。イマイチ信用できない教授はどっちでもいいかな」
アネモネは本音を漏らした。
「あらら。じゃあ、シャイナのおまけでもいいので、仲良くして下さいね」
教授は苦笑した。
「それじゃ、今日は帰るよ。シャイナもお茶ありがと」
「いえ、当日の対戦が楽しみです」
少し時間があいたから少し言葉が少ない。
恥ずかしがり屋な彼女のことだから気にする必要はない。
その場を後にした。
2人で帰りの車の中で話す。
「ねぇ、さっきの、予想してたってのはいつの話?アタシ聞いてないんだけど」
アネモネは少し怒ってる。
「ごめんごめん。元気になってラースの家に行ったときだよ。初め、アネモネはいなかっただろ?だから言うの忘れてたんだよ。それに確信があったわけじゃないしね」
「それはわかったけど、教授は闇オーラの話をしてても良かったんじゃない?」
「いや、教授なりの優しさなんだよ。ギリギリで情報を得て、使うなと言われても使うだろ?過ぎた力は身を滅ぼすものなんだよ。でも、ラースに教えてもらったから使える気になってるけど、まだまだ奥が深いから使うなって言ったんだ。だから棄権しろってなったんだと思うよ?」
「なるほどね。それじゃあ、まだ闇オーラには秘密があるってことよね?」
優等生アネモネは理解が早い。
「みたいだなぁ。でも、それを教えるのは、この大会が終わってからってことなんだろうな。教える気はないけど、試合では見せてくれるかな?」
「それはないんじゃない?そうしちゃうと、また、コーンさんのときみたいに無茶するでしょ?だから、闇オーラの秘密は見せる気もないんじゃない?アタシもあんな無茶はやめてほしいし」
やっぱり、心配だったらしい。
悪いことをしたな。
でも…。
「ごめん。でも、アネモネを守りたかったんだ。それくらいはカッコつけさせてよ」
「かっこよかったから許す」
お許しを頂きました。
ごちそうさまです。
アネモネも16歳だ。
もうお年頃だろう。
よく11歳の見た目のオッサンに飽きないね。
まぁ、俺も0歳の時からずっと好きだから一緒だけどね。
「ありがとうございます」
俺たちは無事自宅に着き、翌日、ラース宅を訪れた。
「オーリービーアーちゃーん、あーそーぼー」
「はーい!って、懐かしいネタだね。1年のときに言ってたよね」
「よく覚えていたな」
「恥ずかしかったから覚えてるよ!」
「ライ、ふざけてないでさっさと本題にはいったら?」
アネモネがイラつきながら言う。
ちょっと嫉妬してる顔だな。
確かにオリビアは美少女だ。
ラースの遺伝子は一切入ってないと言えるほど美少女だ。
おばさん、ありがとう!
でも、俺はアネモネ一筋だ。
前世は恋多き人間だったが、今世はなぜかアネモネ一筋だ。
夢にまで出てくる。
浮気症は転生で治ったらしい。
「ごめんごめん。オリビア、おじさんいる?」
「ごめん、お父さんは仕事で1ヶ月は帰って来ないんだ。あと、多分ライ君が来るからって伝言を預かってるよ」
「伝言?なんて?」
なんだろ?暗号とかめんどくさいのは嫌だな。
「えーっと、『闇オーラの秘密は今は教えられない』だってさ」
「うわー、先回りされてたかー」
「ん?どういうこと?」
オリビアが困っている。
「昨日、おじさんのライバルだった人に会ってたんだけど、その人にも同じことを言われたんだよ」
くやしい。
ラースならあっさり教えてくれると思ってた。
甘かった。
多分、教授から根回しがあったんだろう。
「やられたわね。教授の根回しね」
アネモネも同意見のようだ。
「ライ君の次の闘いに関係あるんだよね?ごめんね。力になれなくて」
オリビアは申し訳なさそうにしている。
何も悪くないのに。
やっぱり、オリビアもかわいいよなぁ。
大人になったら、いい女になるんだろうなぁ。
それでも、自分の子どもを見ているような感覚になる。
アネモネ一筋だ。
「いいよいいよ。それにしても闇オーラの秘密は何なんだろうな?」
「そうね。余計に気になるわね」
アネモネは考え出す。
「しかもそれを使わなくても俺にシャイナは勝てるって言ってたもんな」
「うん。それに、ランク戦であんなふざけた試合ばかりさせられて、ランキングもアテにならないわよ?この前のケンドリックって人よりシャイナが強いから自信あるんでしょうし」
「え、この前の対戦相手より強いの?もうボクじゃついていけない世界じゃないか」
「うーん、そう言わずに、一緒に考えてくれると嬉しいかな?」
「そうだよね。ありがとう!ボクもライ君の力になりたいんだ!」
オリビアが必死に訴えてくる。
どうした?
俺はそのへんの鈍感系ではないぞ?
中身は完全なオッサンだ。
キミにはフォールがいるじゃないか?
そういや、最近見かけないな。
ケンカでもしたのかな?
「ありがとう。それじゃあ、闇オーラについて一緒に考えてくれる?何か気づいたこととか、無いかな?」
「う~ん。そんなにすぐには思いつかないなぁ」
「そりゃそうだよね。ってか、それで思いつくなら俺たちが気づいてるもんね」
「あっ!」
オリビアが閃いたようだ
「お?どした?」
「えっとね、ボクも色々ずっと疑問だったんだよ。だって、お父さんはずっと基礎しか教えてくれないし、その割には、闇オーラとか急に教えてくれるようになったし。だからと言って全て教えてくれているわけでないのは、薄々気づいてたんだ。それで、いくつかお父さんに質問してみたんだけど、その時の様子が少し変だったんだ」
「おお。そりゃ、オリビアも変だと思うよな?それで?どんな質問をしたんだ?」
「うんとね、まず、なぜ闇オーラのことを黙ってたの?って質問したよ」
「ほうほう、いい質問だね。なんて答えたんだい?」
アネモネが食いつく。
「えーっと、危ないからだよって教えてくれたよ。それで、何が危ないのかも聞いたんだけど、前に言ってた、重力で自滅するからだってさ。でも、それだけじゃないと思うんだよね。それで、考えたんだけど、闇オーラの他にも、オーラの蓄積と、オーラ蓄積の加速の二つも教えなかったでしょ?その組み合わせで危険なことが起こるんじゃないかな?」
「あぁ、確かに、そういえば、最近は情報が多すぎて整理してなかったけど、他にも光オーラもあるもんな。その辺りの組み合わせか…」
「その全てか…」
アネモネがつぶやいた。
「全部説はアリだと思うよ。どれか一つでも知れば危険なわけだし」
オリビアが自論を展開する。
「そうだな。光と闇についてはどっちか知ればもう片方も思いつくだろうし、残り二つは危険とは思えない」
俺も一緒に整理する。
「なるほど。この中では、直接危険なのは闇オーラ。すると、闇オーラに他の要素を組み合わせるとさらに危険なのかも知れないね」
アネモネがまとめる。
「簡単に言うと、闇オーラの危険度が加速するってとこかな?」
俺も話を進めるが、座学の苦手なオリビアはそろそろ限界だろう。
「加速といえば、オーラの蓄積加速かな?それと、闇オーラを組み合わせても危険にはならない気がするけどなぁ?」
そんなことはなかった。
ちゃんとついてきていた。
オリビア、ごめん。
「いや、1つとは限らないのでは?例えば、蓄積加速をしながら重力で潰れる体を光オーラで回復するとか?」
「いや、アネモネさん、それじゃ、その場にいるだけだから攻撃にならないよ?」
アネモネにオリビアがツッコむというレアなケースが見られた。
ラッキー。
「そうよね」
ん?
でも、それっぽくない?
アネモネが言ってみた答えが正解に近い気がする。
でも、もう1つ足りないな。
なんだろ?
もう1つ禁止されたような…。
ん?
あ…。
あれか。
子泣き爺作戦だ。
確か、子泣き爺作戦が禁止されたんだ。
それだと、その場にいても重力だけで攻撃できるのか。
「わかったよ。子泣き爺だ」
「コナキジジイ?何それ?」
アネモネが怪訝な顔をしている。
「あぁ、ごめんごめん。それはこっちの話で、さっきのアネモネの答えが正解だ。危険な使い方を思いついたよ。やっぱり全ての組み合わせだな。対戦相手にしがみついて、到底耐えられない重力をかけるんだ。そして、自分のダメージ分は光オーラで回復するんだ。あらかじめ、蓄積加速させておいたオーラで」
2人が驚く。
そして、難しい顔をする。
「ライはそれをやるつもりなの?」
アネモネは難しい顔のまま聞いてくる。
「そうだよ。やめた方がいいよ」
オリビアも同じだ。
「そうだな、やりたくはないけど、世界一のために必要な技術なら身につけないとな」
努めて明るく言う。
「うーん。必要なのかどうかは微妙だよね?だって、抱きつく前提の技って使いにくそうだよ?」
オリビアがド正論で反論してくる。
「確かにそうだけど、それを部分的にできたらどうかな?例えば、踵落としをするときに踵に100倍重力とかかけたら、必ずどこか負傷すると思うんだ」
俺も反論を用意している。
「それを戦闘に組み込むってこと?かなり無理があるわね。今からで間に合うかしら?」
「それじゃあ、闇オーラと並行して土オーラも展開できないかな?ライ君の魔力ならできる気がするんだけど?」
オリビアが遠慮がちに口にする。
「なるほど。それは考えなかったな。並行してオーラの展開ができるんだから闇と土の並行もできそうかもな。やってみようか」
その後、色々と試した。
4属性プラス2属性の展開は可能なのか?
部分的に重力を極端に上げるとどうなるのか?
それを武術に組み込むことは可能なのか?
自爆で負傷した傷はどれくらいの早さで治るのか?
結論としては、できる。
しかし、全てを戦闘に活用するには、かなりのバランス感覚と、自重が必要だ。
調子に乗ればすぐにバランスは崩れる。
一度崩れたバランスは元に戻すまで時間がかかる。
回復が遅れるからだ。
回復が遅れると命取りになる。
実際に死者の出る大会であることは身をもって体験している。
かなりの博打になる。
しかし、練習をしっかりすればなんとかなるんじゃないか?
やってみないとわからない。
完全に博打だ。
いや、長い目で見て、必要な技術であることは確実だ。
実践レベルにならなかった場合は無理しないように自重するしかないだろう。
無責任な巨大すぎる力が破滅を招くことは心に深く刻まれた。
シャイナを失ってまで得る勝利に意味はない。
しかし、今回勝てなくても次回のためにも得たい力だ。
「なぁ、2人はどう思う?俺はこれを使えるようになりたいんだ」
2人にも相談してみる。
「そうね。アタシはライがやらなくても覚えるわよ」
「そうだね。ボクもできるようになりたいな。でも、ボクの魔力量なら厳しいだろうから、お手伝いならできるよ」
「ほんじゃま、やってみっか!」
方向性は決まった。
できるかはやってみなきゃわかんないもんな。
それから、試合までは、ひたすらなるべく出力を高めて攻撃に使えそうなコンビネーションの練習をした。
しかし、恐らくオーラ総量が桁違いであるため負けることは無いと考えている。
さらに言えば、怪我をさせないか心配しているくらいだ。
話し合いの進み方によっては棄権を勧めたい。
正直、シャイナとは闘いたくない。
世話になったし、シャイナ・グランテという人物が好きなんだ。
傷つけたくない。
こういった考えで俺とアネモネは国立大学へ来ていた。
コンコンコン
「はい。どうぞ」
寮の一室のリビングに通される。
「失礼します。お忙しいなか、貴重なお時間ありがとうございます。ご無沙汰しています」
「今回はノックしてくれたんですね」
「はい。この前はすいませんでした」
「いえいえ、もう気にしていませんよ」
「前は気にしてたんですね。そんなことより次の試合についてです。いや、それもあるが、まだ隠してただろ?」
「隠していたつもりはありませんよ。まだ教えられる段階ではないと判断して黙ってはいましたが」
「!?どういうことよ?ライが負けてもよかったっていうの?そもそもコーンさんに失礼でしょ?」
アネモネは吠える。
「やっぱりそういうことか。アネモネ、いいんだよ。予想はしていたんだ」
「どういうこと?予想って?」
アネモネは不思議そうな顔をしている。
「考えたんだよ。あと、オリビアもヒントをくれたんだ。サバイバル戦直前に闇オーラの使い方を教えなかったのは危なかったからだろ?」
「そうですよ。少し上手く使えるようになったのはラース辺りに教えてもらったんですか?使える気になっているようですが、非常に危険ですよ。もう使うことはやめておきなさい」
「いや、逆だ。シャイナに怪我をさせたくないから棄権を勧めに来たんだ」
「ライ君ではシャイナに勝てませんよ。魔闘法はそんな単純なものではないんです。ライ君こそ棄権することをおすすめします」
教授も押し返す。
「なるほど、平行線ってことですね。それなら試合で決めるほかないですね。しかし、教授やシャイナには感謝しています。勝っても負けてもこれまで以上の関係を続けさせてください」
俺は丁寧にお願いする。
重要なことだ。
「それを聞いて安心しました。私の一番の心配材料はキミたちとの関係をキープできるかどうかでしたから」
「そうだな。俺たちが研究材料でもあるもんな。こちらこそよろしく」
「そうね。アタシもシャイナとは仲良くしたい。イマイチ信用できない教授はどっちでもいいかな」
アネモネは本音を漏らした。
「あらら。じゃあ、シャイナのおまけでもいいので、仲良くして下さいね」
教授は苦笑した。
「それじゃ、今日は帰るよ。シャイナもお茶ありがと」
「いえ、当日の対戦が楽しみです」
少し時間があいたから少し言葉が少ない。
恥ずかしがり屋な彼女のことだから気にする必要はない。
その場を後にした。
2人で帰りの車の中で話す。
「ねぇ、さっきの、予想してたってのはいつの話?アタシ聞いてないんだけど」
アネモネは少し怒ってる。
「ごめんごめん。元気になってラースの家に行ったときだよ。初め、アネモネはいなかっただろ?だから言うの忘れてたんだよ。それに確信があったわけじゃないしね」
「それはわかったけど、教授は闇オーラの話をしてても良かったんじゃない?」
「いや、教授なりの優しさなんだよ。ギリギリで情報を得て、使うなと言われても使うだろ?過ぎた力は身を滅ぼすものなんだよ。でも、ラースに教えてもらったから使える気になってるけど、まだまだ奥が深いから使うなって言ったんだ。だから棄権しろってなったんだと思うよ?」
「なるほどね。それじゃあ、まだ闇オーラには秘密があるってことよね?」
優等生アネモネは理解が早い。
「みたいだなぁ。でも、それを教えるのは、この大会が終わってからってことなんだろうな。教える気はないけど、試合では見せてくれるかな?」
「それはないんじゃない?そうしちゃうと、また、コーンさんのときみたいに無茶するでしょ?だから、闇オーラの秘密は見せる気もないんじゃない?アタシもあんな無茶はやめてほしいし」
やっぱり、心配だったらしい。
悪いことをしたな。
でも…。
「ごめん。でも、アネモネを守りたかったんだ。それくらいはカッコつけさせてよ」
「かっこよかったから許す」
お許しを頂きました。
ごちそうさまです。
アネモネも16歳だ。
もうお年頃だろう。
よく11歳の見た目のオッサンに飽きないね。
まぁ、俺も0歳の時からずっと好きだから一緒だけどね。
「ありがとうございます」
俺たちは無事自宅に着き、翌日、ラース宅を訪れた。
「オーリービーアーちゃーん、あーそーぼー」
「はーい!って、懐かしいネタだね。1年のときに言ってたよね」
「よく覚えていたな」
「恥ずかしかったから覚えてるよ!」
「ライ、ふざけてないでさっさと本題にはいったら?」
アネモネがイラつきながら言う。
ちょっと嫉妬してる顔だな。
確かにオリビアは美少女だ。
ラースの遺伝子は一切入ってないと言えるほど美少女だ。
おばさん、ありがとう!
でも、俺はアネモネ一筋だ。
前世は恋多き人間だったが、今世はなぜかアネモネ一筋だ。
夢にまで出てくる。
浮気症は転生で治ったらしい。
「ごめんごめん。オリビア、おじさんいる?」
「ごめん、お父さんは仕事で1ヶ月は帰って来ないんだ。あと、多分ライ君が来るからって伝言を預かってるよ」
「伝言?なんて?」
なんだろ?暗号とかめんどくさいのは嫌だな。
「えーっと、『闇オーラの秘密は今は教えられない』だってさ」
「うわー、先回りされてたかー」
「ん?どういうこと?」
オリビアが困っている。
「昨日、おじさんのライバルだった人に会ってたんだけど、その人にも同じことを言われたんだよ」
くやしい。
ラースならあっさり教えてくれると思ってた。
甘かった。
多分、教授から根回しがあったんだろう。
「やられたわね。教授の根回しね」
アネモネも同意見のようだ。
「ライ君の次の闘いに関係あるんだよね?ごめんね。力になれなくて」
オリビアは申し訳なさそうにしている。
何も悪くないのに。
やっぱり、オリビアもかわいいよなぁ。
大人になったら、いい女になるんだろうなぁ。
それでも、自分の子どもを見ているような感覚になる。
アネモネ一筋だ。
「いいよいいよ。それにしても闇オーラの秘密は何なんだろうな?」
「そうね。余計に気になるわね」
アネモネは考え出す。
「しかもそれを使わなくても俺にシャイナは勝てるって言ってたもんな」
「うん。それに、ランク戦であんなふざけた試合ばかりさせられて、ランキングもアテにならないわよ?この前のケンドリックって人よりシャイナが強いから自信あるんでしょうし」
「え、この前の対戦相手より強いの?もうボクじゃついていけない世界じゃないか」
「うーん、そう言わずに、一緒に考えてくれると嬉しいかな?」
「そうだよね。ありがとう!ボクもライ君の力になりたいんだ!」
オリビアが必死に訴えてくる。
どうした?
俺はそのへんの鈍感系ではないぞ?
中身は完全なオッサンだ。
キミにはフォールがいるじゃないか?
そういや、最近見かけないな。
ケンカでもしたのかな?
「ありがとう。それじゃあ、闇オーラについて一緒に考えてくれる?何か気づいたこととか、無いかな?」
「う~ん。そんなにすぐには思いつかないなぁ」
「そりゃそうだよね。ってか、それで思いつくなら俺たちが気づいてるもんね」
「あっ!」
オリビアが閃いたようだ
「お?どした?」
「えっとね、ボクも色々ずっと疑問だったんだよ。だって、お父さんはずっと基礎しか教えてくれないし、その割には、闇オーラとか急に教えてくれるようになったし。だからと言って全て教えてくれているわけでないのは、薄々気づいてたんだ。それで、いくつかお父さんに質問してみたんだけど、その時の様子が少し変だったんだ」
「おお。そりゃ、オリビアも変だと思うよな?それで?どんな質問をしたんだ?」
「うんとね、まず、なぜ闇オーラのことを黙ってたの?って質問したよ」
「ほうほう、いい質問だね。なんて答えたんだい?」
アネモネが食いつく。
「えーっと、危ないからだよって教えてくれたよ。それで、何が危ないのかも聞いたんだけど、前に言ってた、重力で自滅するからだってさ。でも、それだけじゃないと思うんだよね。それで、考えたんだけど、闇オーラの他にも、オーラの蓄積と、オーラ蓄積の加速の二つも教えなかったでしょ?その組み合わせで危険なことが起こるんじゃないかな?」
「あぁ、確かに、そういえば、最近は情報が多すぎて整理してなかったけど、他にも光オーラもあるもんな。その辺りの組み合わせか…」
「その全てか…」
アネモネがつぶやいた。
「全部説はアリだと思うよ。どれか一つでも知れば危険なわけだし」
オリビアが自論を展開する。
「そうだな。光と闇についてはどっちか知ればもう片方も思いつくだろうし、残り二つは危険とは思えない」
俺も一緒に整理する。
「なるほど。この中では、直接危険なのは闇オーラ。すると、闇オーラに他の要素を組み合わせるとさらに危険なのかも知れないね」
アネモネがまとめる。
「簡単に言うと、闇オーラの危険度が加速するってとこかな?」
俺も話を進めるが、座学の苦手なオリビアはそろそろ限界だろう。
「加速といえば、オーラの蓄積加速かな?それと、闇オーラを組み合わせても危険にはならない気がするけどなぁ?」
そんなことはなかった。
ちゃんとついてきていた。
オリビア、ごめん。
「いや、1つとは限らないのでは?例えば、蓄積加速をしながら重力で潰れる体を光オーラで回復するとか?」
「いや、アネモネさん、それじゃ、その場にいるだけだから攻撃にならないよ?」
アネモネにオリビアがツッコむというレアなケースが見られた。
ラッキー。
「そうよね」
ん?
でも、それっぽくない?
アネモネが言ってみた答えが正解に近い気がする。
でも、もう1つ足りないな。
なんだろ?
もう1つ禁止されたような…。
ん?
あ…。
あれか。
子泣き爺作戦だ。
確か、子泣き爺作戦が禁止されたんだ。
それだと、その場にいても重力だけで攻撃できるのか。
「わかったよ。子泣き爺だ」
「コナキジジイ?何それ?」
アネモネが怪訝な顔をしている。
「あぁ、ごめんごめん。それはこっちの話で、さっきのアネモネの答えが正解だ。危険な使い方を思いついたよ。やっぱり全ての組み合わせだな。対戦相手にしがみついて、到底耐えられない重力をかけるんだ。そして、自分のダメージ分は光オーラで回復するんだ。あらかじめ、蓄積加速させておいたオーラで」
2人が驚く。
そして、難しい顔をする。
「ライはそれをやるつもりなの?」
アネモネは難しい顔のまま聞いてくる。
「そうだよ。やめた方がいいよ」
オリビアも同じだ。
「そうだな、やりたくはないけど、世界一のために必要な技術なら身につけないとな」
努めて明るく言う。
「うーん。必要なのかどうかは微妙だよね?だって、抱きつく前提の技って使いにくそうだよ?」
オリビアがド正論で反論してくる。
「確かにそうだけど、それを部分的にできたらどうかな?例えば、踵落としをするときに踵に100倍重力とかかけたら、必ずどこか負傷すると思うんだ」
俺も反論を用意している。
「それを戦闘に組み込むってこと?かなり無理があるわね。今からで間に合うかしら?」
「それじゃあ、闇オーラと並行して土オーラも展開できないかな?ライ君の魔力ならできる気がするんだけど?」
オリビアが遠慮がちに口にする。
「なるほど。それは考えなかったな。並行してオーラの展開ができるんだから闇と土の並行もできそうかもな。やってみようか」
その後、色々と試した。
4属性プラス2属性の展開は可能なのか?
部分的に重力を極端に上げるとどうなるのか?
それを武術に組み込むことは可能なのか?
自爆で負傷した傷はどれくらいの早さで治るのか?
結論としては、できる。
しかし、全てを戦闘に活用するには、かなりのバランス感覚と、自重が必要だ。
調子に乗ればすぐにバランスは崩れる。
一度崩れたバランスは元に戻すまで時間がかかる。
回復が遅れるからだ。
回復が遅れると命取りになる。
実際に死者の出る大会であることは身をもって体験している。
かなりの博打になる。
しかし、練習をしっかりすればなんとかなるんじゃないか?
やってみないとわからない。
完全に博打だ。
いや、長い目で見て、必要な技術であることは確実だ。
実践レベルにならなかった場合は無理しないように自重するしかないだろう。
無責任な巨大すぎる力が破滅を招くことは心に深く刻まれた。
シャイナを失ってまで得る勝利に意味はない。
しかし、今回勝てなくても次回のためにも得たい力だ。
「なぁ、2人はどう思う?俺はこれを使えるようになりたいんだ」
2人にも相談してみる。
「そうね。アタシはライがやらなくても覚えるわよ」
「そうだね。ボクもできるようになりたいな。でも、ボクの魔力量なら厳しいだろうから、お手伝いならできるよ」
「ほんじゃま、やってみっか!」
方向性は決まった。
できるかはやってみなきゃわかんないもんな。
それから、試合までは、ひたすらなるべく出力を高めて攻撃に使えそうなコンビネーションの練習をした。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
「魔物肉は食べられますか?」異世界リタイアは神様のお情けです。勝手に召喚され馬鹿にされて追放されたのでスローライフを無双する。
太も歩けば右から落ちる(仮)
ファンタジー
その日、和泉春人は、現実世界で早期リタイアを達成した。しかし、八百屋の店内で勇者召喚の儀式に巻き込まれ異世界に転移させられてしまう。
鑑定により、春人は魔法属性が無で称号が無職だと判明し、勇者としての才能も全てが快適な生活に関わるものだった。「お前の生活特化笑える。これは勇者の召喚なんだぞっ。」最弱のステータスやスキルを、勇者達や召喚した国の重鎮達に笑われる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォ
春人は勝手に召喚されながら、軽蔑されるという理不尽に怒り、王に暴言を吐き国から追放された。異世界に嫌気がさした春人は魔王を倒さずスローライフや異世界グルメを満喫する事になる。
一方、乙女ゲームの世界では、皇后陛下が魔女だという噂により、同じ派閥にいる悪役令嬢グレース レガリオが婚約を破棄された。
華麗なる10人の王子達との甘くて危険な生活を悪役令嬢としてヒロインに奪わせない。
※春人が神様から貰った才能は特別なものです。現実世界で達成した早期リタイアを異世界で出来るように考えてあります。
春人の天賦の才
料理 節約 豊穣 遊戯 素材 生活
春人の初期スキル
【 全言語理解 】 【 料理 】 【 節約 】【 豊穣 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】 【 快適生活スキル獲得 】
ストーリーが進み、春人が獲得するスキルなど
【 剥ぎ取り職人 】【 剣技 】【 冒険 】【 遊戯化 】【 マテリア化 】【 快適生活獲得 】 【 浄化 】【 鑑定 】【 無の境地 】【 瀕死回復Ⅰ 】【 体神 】【 堅神 】【 神心 】【 神威魔法獲得 】【 回路Ⅰ 】【 自動発動 】【 薬剤調合 】【 転職 】【 罠作成 】【 拠点登録 】【 帰還 】 【 美味しくな~れ 】【 割引チケット 】【 野菜の種 】【 アイテムボックス 】【 キャンセル 】【 防御結界 】【 応急処置 】【 完全修繕 】【 安眠 】【 無菌領域 】【 SP消費カット 】【 被ダメージカット 】
≪ 生成・製造スキル ≫
【 風呂トイレ生成 】【 調味料生成 】【 道具生成 】【 調理器具生成 】【 住居生成 】【 遊具生成 】【 テイルム製造 】【 アルモル製造 】【 ツール製造 】【 食品加工 】
≪ 召喚スキル ≫
【 使用人召喚 】【 蒐集家召喚 】【 スマホ召喚 】【 遊戯ガチャ召喚 】
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる