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第三章 激闘の魔闘士大会編 中等部1年生

第35話 トーナメント1回戦

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 対戦相手の名前は、ケンドリック・ラームさん。
 ワールドランク12位。
 シャイナより格上。
 ちなみに、シャイナとは、お互いが1回戦を突破すると対戦することになる。
 魔闘士協会公式情報によると、彼は陽890、隠190のツバル戦術。
 つまり、闇オーラの重力を巧みに使いながら、火と風で高火力を出す戦術となる。
 俺は本気のシャイナと戦ったことは無い。
 だからその格上で、かつ同じ戦術のケンドリックさんには、どう戦えばいいのかわからない。

 しかし、アネモネが仮想ケンドリック役をしたトレーニングをした。
 準備は万端なはず。
 トレーニングは熾烈を極めた。
 何度も重症を負いながらも治癒魔術で回復し、さらにトレーニングを繰り返すという流れで行ってきた。
 時間は十分ではなかったが、十分な密度のトレーニングをしてきた。
 アネモネがラースから教わり、その対応を俺が考えて闘う。
 ラースの闘い方を俺が教わり、アネモネが対応を考える。
 これを繰り返すうちに、ケンドリックさんの闘い方はアネモネに伝わり、俺はそれに対応する術を身につけた。
 急速な成長であるため客観的に自分を見る時間まではなかった。
 それだけに、強くなっている実感は抱きにくかった。
 
 トレーニングをしている最中に、パパンとママンはコーンさんの墓前に花を手向にいっていた。
 保護者として責任をとってくれているらしい。
 2週間は落ち込んでいたが、乗り越えて、前を向きだしたことを伝えに行ったらしい。
 俺的には「乗り越える」というのは、まだな気がするが、まぁ、いいだろう。
 両親の判断はそう結論づけたということだ。
 本当は42のオッサンが死んでトータル53歳のオッサンだと言うのに申し訳ない。
 さすがに、人殺しは前世で経験してない。
 人並みに落ち込むというものだ。

 しかし、今回の「プチうつ」でわかったのは、俺のうつ体質は治っておらず、魔力で楽観視できるようになった分だけ、うつになりにくいだけだということだ。
 そこで、一気にうつ傾向に傾くと、立ち直れなくなるわけか。
 俺の場合は、脳が原因ではなく、性格が原因の病なのかもしれない。
 こちらの惑星で「うつ病」というワードをまだ聞いたことがないことから、魔力のおかげで、精神疾患が軽減されているのかもしれない。
 たしかに、感情の振れ幅も落ち着いている気がする。

 さて、対するケンドリックさんは、ボクシングスタイルの魔闘士らしい。
 大柄でヘビー級を、思わせる彼の風貌はグリズリーそのもの。
 噛みついてきそうだ。
 ラースもでかいが、ケンドリックさんは、獰猛さからグリズリーに例えられることが多いらしい。
 そのケンドリックさん役が小柄で細身のアネモネということで、正直、練習になっているのかは疑問が残る。
 アネモネに不満があるわけではないが、体格が違いすぎる。
 アネモネの胴回りくらいある腕のケンドリックさんの攻撃は間違いなく速くて重いだろう。
 重さといえば、闇オーラだ。
 間違いなく使ってくる。
 
 今回の試合会場はいつもの4m四方の正方形のリングだ。
 場所は両者合意の上で、シャイナの試合と同じ場所で、ジンパッグの国立大学のスタジアムだ。
 今回は俺が子どもであることと、先日の不幸な事故への配慮として、ケンドリックさん側からこちらへ来てくれるという提案があった。
 それもあって、ケンドリックさんを応援するジンパッグ国民は3割程度いる。
 さすがはプロという感じで、アウェーの敵地ですら多くの人間を味方につけた。
 
 こんなことを控え室で考えながら集中していく。
 セコンドにはアネモネが入ってくれる。
 ルールはなんでもありのラウンドなし、カウントなし。
 勝敗はタップか、タオルでのみ決まる。
 プロ仕様の試合だ。
 すでに、ワールドランクのポイントを持つ俺は、セミプロと呼べる領域にいた。

 さぁ、入場だ。
 気合いを入れる。
 アネモネに抱きつく。
 アネモネもキツく抱きしめてくる。

「がんばってくるよ」

「アタシはライが帰ってきてくれたらそれでいいよ。あとは悔いのないようにだけやっておいで」

「うん」

 背中を押されて入場する。

「頑張れよー」
「人殺しー!死ねー!」
「ライ君可愛いー!」

 相変わらず声援は多種多様。
 柄の悪いのから応援まで。
 どうやら、この試合で賭けはされていないようだ。
 正式にプロでない俺で賭けるのはコンプラ的にアウトなのだろう。

 ケンドリックさんも時を同じくして入場。
 プロの試合のような派手なアナウンスはない。
 しかし、世界同時中継はされているようだ。
 カメラが多数ある。
 
「ケンドリック最高!かっこいい!」
「ライ君のために来てくれて素敵!」
「グリズリー野郎!死ねー!」

 やはり、ジンパッグ国へ来てくれたことが大きく影響しているようだ。
 概ね、観衆の応援は俺とケンドリックさんで半々といったところのようだ。
 よかった。
 わざわざ来てくれたのに、ブーイングが、多かったら申し訳ないところだった。

 さて、両者はリング中央に並び、審判から紹介を、受ける。
 それぞれ歓声を受け、コーナーへ向かう。
 ゴングを待つ。
 静まり返る。
 思考を、始める。
 
 ガァァーン

 ゴングが鳴る。
 拳を合わせる。
 
「サンキュー」

 と、英語で礼を言う。
 ケンドリックさんは頷く。
 拳を離し、間合いをあける。
 俺は先制して、ローキックを放ちに行く。
 俺の身長は143cm、ケンドリックさんの身長は185cmローキックを入れるだけでも、彼のジャブの間合いに入る。
 しかし、俺にはこの作戦しかない。
 シャイナとのトレーニングのときもそうだったが、身長差があるとジャブが顔面にとどかないのだ。
 だから、ローキックと前蹴りを中心に試合を組み立て、ボディを狙い、隙を狙って、頭部へ攻撃という流れになる。
 しかし、ケンドリックさんも簡単にはそうさせてくれない。
 なぜなら、彼のジャブがヘビー級というよりはフェザー級というくらいに速くて鋭いものだったからだ。
 風オーラだ。
 ガードをすれば、その瞬間に闇オーラも乗せてくる。
 大きなピンチはないが、ジリジリ押されている感覚はある。
 そのまま削りとられる可能性が頭をかすめた。

 そして、すぐに試合は動いた。
 
「ガァー!」

 と、ケンドリックさんが吠えると、俺に飛びかかってきた。
 ホントにグリズリーに見える。
 両腕にガッシリホールドされ、すぐに持ち上げられる。
 何が起こっているのか混乱する俺は動けずにいた。
 完全にケンドリックさんの頭上に持ち上げられ、そこから急降下。
 マットに叩きつけられた。
 もちろん、闇オーラを使っているので、重さはマシマシだ。
 背中から叩きつけられた俺は、肺の中の空気をすべて吐き出してしまい、呼吸の仕方を思い出すまで時間がかかる。
 そこをケンドリックさんが見逃すはずはなく、マウントポジションを取ってくる。
 奇しくも、ここで、俺がコーンさんを殺したシチュエーションを作られる。
 ケンドリックさんは、さらに俺の両手も膝で押さえ込んでいるので、この後は殴り放題になる。
 何か英語で言ってから、俺の顔面を蹂躙する。
 殴る。
 鼻が潰れる。
 拳が重い。
 火も、風も全開で殴る。
 殴る。
 殴る。
 殴る。

 意識が飛びそうになる。
 あぁ、こうやって、コーンさんも死んでいったのか。
 ケンドリックさんは、それを再現したかったのかな。
 確かに、俺は未熟なオーラの操作で、コーンさんを亡き者にした。
 相手が戦闘不能であれば、拳を振るわなければいいのだ。

 殴る。
 殴る。
 殴る。

 ん?
 殴りすぎじゃね?
 俺は確か数発で、コーンさんを死に至らしめた。
 もう10発は貰ってるんじゃないかな?
 中身はオッサンとはいえ、見た目は子どもだよ?
 ちょっと、やりすぎじゃない?
 ってか、殺しに来てる?

 殴る。
 殴る。
 殴る。

 いや、違うな。
 ダメージないもん。
 ケンドリックさんの顔を見ると焦りが見える。
 おそらく、手応えがなくて焦ってるんだろう。
 俺は練習通り、初めから闇オーラを全開にしていた。立ち上がりが遅く、上限も半分であるが、溜まってしまえば、防御最強となる。
 相手がそれなりの特級でも十分にガードできるだけのオーラ総量がある。
 おそらく、殴られてるうちに溜まったのだろう。
 それにしても、まだ、俺はコーンさんの死を引きずっていたようだ。
 マウントで殴られながら「もう、いいや」って気持ちがどこかにあった。
 でも、今、コーンさんと同じ状況になってわかったことがある。
 「試合の結果であれば死を受け入れることができるのだ」と、いうことが。
 どこか、未熟な俺が暴走して殺してしまったように感じたが、違う。
 平等な条件で、本気を出し合って、闘ったんだ。
 結果に死が伴うことは、起こり得る可能性に誰もが考えている。
 だって、今、まさに、俺が殺されそうになったのだから。
 まぁ。いいか。
 とりあえず、勝とう。
 チラリとアネモネの方を見ると、心配そうにこちらを見ている。
 女の子を、泣かせるのは、俺の騎士道に反するな!
 よし!
 やるか!

「ふん!」
 火オーラの全力パワーで抑えられていた腕を振り上げる。
 続いて全身も振り払う。
 反動で跳ね飛ばし、ケンドリックさんをマットに叩きつける。
 ケンドリックさんはすぐに立ち上がると、大きな体を素早く動かして、俺と距離をとる。
 しかし、チャンスの俺は追う。
 ここは4m四方のリング、すぐに追いつく。
 重いローキックを入れる。
 バチィンともドーンとも聞こえるような音が響き、彼のバランスが崩れる。
 さらに懐に詰め寄り、ミドルキック。
 ドゴォという音が響く。
 たっぷり火オーラも乗せてある。
 完全にケンドリックさんの土オーラを貫通している。
 ケンドリックさんはたたらを踏み、後退りする。
 チャンスと見て追撃をする。
 前蹴りで距離を取り、3歩ほどの距離が開く。
 2歩で、助走をつけ跳び膝蹴りを顔面に入れる。
 ケンドリックさんはの鼻が潰れて、頬に裂傷ができる。
 ケンドリックさんが、火と風オーラの追加を止め、光オーラを練り始める。
 同時に闇オーラを解除し、土オーラに切り替えた。
 回復に回りたいようだ。
 しかし、させない。
 ボディへフック。
 右、右、ミドルキック。
ケンドリックさんの左半身にダメージを蓄積させていく。
 拳は突き刺さり、肋骨を折っていることは実感できた。
 うずくまるようになったところを、回し蹴り。
 力のないガードを突き抜け、脳を揺らす攻撃。
 完全にクリーンヒット。
 すかさず、タオルが投げられる。

 試合終了し、勝ち名乗りをあげる。
 
「you are a warrior」

 ケンドリックさんは言った。
 他にも何か言ってたが聞き取れたのはこれだけだ。
 どうやら、俺は戦士として認められたらしい。
 オーラを、持て余し、人を殺す害悪から戦士へジョブチェンジできたようだ。
 
 試合終了後、控え室で着替えを終えた俺は、杖を持ってケンドリックさんの控え室を訪れた。

 コンコンコン

「こんにちは。試合後のお疲れのところすいません。少しお時間いいですか?」

「あぁ、構わないよ。魔術で話せるようにしてきたんだな?」

「失礼します。はい、そうです。最後の戦士って言葉が気になったもので」

「そうだな。あれは、オリバー…お前が倒した相手の言葉を借りたんだ。実は俺は魔闘士の前はプロのボクサーだったんだが、お前と同じように対戦相手を死に至らしめたんだ。その時に、ボリシングはやめて、魔闘士になった。それでも戦い続ける俺に対してオリバーが俺に送ってくれた言葉だ。戦士だ、とな」

「なるほど、その言葉をわざわざ教えてくれたのですね。ありがとうございます。僕も戦士になれたのでしょうか?」

「あぁ、大丈夫だ。殺人鬼でないことは俺が保証しよう」

「ありがとうございます」

 その後、コーンさんの昔話や、ケンドリックさんの技の話を聞かせてくれた。
 
「お疲れのところ押しかけてすいませんでした。また、今後も仲良くしてください」

「あぁ、戦士として認めたんだ。約束しよう」

 ケンドリックさんの控え室を後にして、アネモネの待つ自分の控え室に戻った。
 
「おかえり」

「ただいま。今日は心配かけたね」

「そうね。アタシとの練習が全然生かせない試合だったから焦ったわ」

「そうだったね。やっぱり、1週間じゃキツイね」

「そうね。でも、これからも特訓は続けるんでしょ?アタシもやるよ?そうしないとアルターイに届かないからね。少なくとも、アリエルに認められないといけないかな」
 
「そうだね。俺は世界一を改めて目指すよ。色々迷ったけど、俺の原点だと思うんだ」

「そうね。アタシも世界一を目指してるライは好き。だから、一緒にがんばろ?」

「そうだな。今回も色々サポートありがとう。アネモネも一緒に強くなろう」

 両親と合流して帰った。
 これからの方向性が定まった。
 コーンさんの分もなんて言うつもりはないが、改めて魔闘士大会に真摯に向き合う必要性が生まれた。
 俺1人の世界一ではなくなった気がした。
 しかし、あくまで俺の目標なのである。
 前世で自殺することしか考えていなかった俺が転生して目標を持ったのは、生きる目的を持つためだったと今ならわかる。
 俺は1人の魔闘士と闘い、拙い技術のせいで命を奪った。
 しかし、他の魔闘士は言うのだ「お前は戦士だ」と。
 俺はその言葉に救われた。
 そして、再度アネモネと共に歩むことを選択できた。
 これからもまだまだ学ぶことはあるだろう。
 でも、俺の原点は「世界一」なんだ。
 世界一を目指す俺が好きだとアネモネは言ってくれた。
 好きな女の子のために頑張るのもいい。
 やっぱり、俺にとって世界一は特別だったのだ。
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