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第一章 宇宙の始まり
第4話 戦争勃発~戦争はいつでも泥沼化するものだ~
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いきなりの宣戦布告。
俺は身構えたが、今更だと開き直るしかなかった。
いつもそうだった。
戦争は一方的に始められ、それが正義であることを後からつけたす。
俺の宇宙にある地球でも同じことは繰り返されていた。
こんな茶番には付き合ってられない。
しかし、彼女をここまで怒らせたのは自分である。
これについては、悪いことをしたと思っている。
だから、1度だけ付き合ってやることにした。
もちろん、地球にいる子どもを連れてきて戦争をさせるわけだから、最大限の配慮はしたい。
しかし、俺は魔法をなるべく使わないことで、地球の運営を進めてきた。
地球の子どもたちにも魔法を使えないような環境を強制してきた。
そんな俺が今更、魔法で戦えとは言いたくない。
しかし、ガブエラは本気だ。
昔から俺のことは疎《うと》んでいた。
そんな彼女のことだ。
間違いなく、勝ったら俺の宇宙を壊しにくる。
元ヒトである俺を天使だと認めていない連中は、まだまだいるのだ。
だからこそ、俺はムキになって魔法を使えない地球を運営したのである。
いわば「魔法なしでもここまで俺はできるんだ」という当てつけのための宇宙となってしまったのである。
そこで、俺は軍事大国であるアメリカの軍事最高責任者へ会うために地球へ降りていた。
その軍事最高責任者――ここでは便宜上「将軍」と呼ぼう――は、俺と会うなり「ゴッド」だの「エンジェル」だの言っていたが、念話をつないでやる。
もうこの際、こいつには魔法の存在を知ってもらおう。
そう考えての行動であった。
「なんてことですか。あなたが神だったのですね?」
こんなやり取りは初めてだが、神に近しい者であることはすぐにバレるらしい。
「いや、ちがうぞ。俺は天使だ」
「おお!なんということだ!神よ!こんなめぐりあわせに感謝します」
「いや、俺は天使だってば」
神に感謝したんだろうけど、あのオッサンだと考えると嫌だったのでツッコんでみた。
「わかりました。マイエンジェル!今日はどのようなご用件ですか?」
「そう、用件はあるんだが、説明はしにくくてな」
「そうなんですね」
コンコンコン
「入れ」
将軍は急に偉そうに命令しだした。
「はっ!失礼します」
ガチャリと音がなり、重そうな木製の扉が開く。
その瞬間、俺は時間を止めた。
面倒ごとが増えるからだ。
おそらく、誰か入ってくるのだろう。
そいつにまで天使の存在をさらすつもりはない。
天使なんていうものはいないと地球の人間は信じているのだ。
しかし「神や天使がいるといいな」くらいの気持ちは持っているのである。
だから、さきほどの将軍のように取り乱す人間もいる。
そんな面倒は増やしたくないからさらにルールを破ってまで時を止めた。
「ん?どうなっていますか?」
将軍は混乱している。
「時を止めた」
将軍はゆっくりと言葉を噛みしめて、うなずいた。
「時を止められるのですね?」
さすが、将軍と呼ばれるだけはある。
理解が早い。
瞬時に対応することは戦争において間違いなく一番必要な能力である。
それを将軍が持っていることは今のやりとりで理解できた。
「ああ、そうだ。それで、お前、名前はなんて言うんだ?俺はアルターイだ」
「天使アルターイ様ですね。よろしくお願いします。私の名前はブルック・ミューラーです」
「ブルックか。こちらこそよろしく頼む。今回このようにお前に会いに来たのは理由がある」
「理由ですか」
ブルックはきれいに整えられた髭をなでながら返事をした。
「ああ。ちょっと、お前に戦ってほしい相手がいる」
「天使様のお言葉とあれば一考の余地はありますが、私の一存では決めかねます」
当然の答えだ。
国防を担っている将軍が一人で戦争を吹っ掛けられるほど、地球はぬるいルールにしていない。
民主的な解決を図るために独裁者が淘汰される社会になりつつある。
もちろん、民主制が正義でないことは俺はわかっている。
これでも天使だ。
しかし、天使は全知でも全能でもない。
神に近い能力は持っているが、それらすべてを有しているわけではないのである。
そう、この地球もまた、悩みながら導いてきた。
かつて独裁者が戦争を起こしまくっていることも悩んだし、民主制を傘にあくどいことをしている人間もいることにも頭を抱えた。
どちらが正義とは言えない。
しかし、今現在、このアメリカは民主国家である。
そうなると、答えを待ってほしいと答えるだろう
「いや、違うんだ。お前の心配していることはすべて俺が魔法で解決する。例えば、報告の義務や、予算、部下の命の問題など、あらゆることはすべて俺が解決する。お前には、天使同士の代理戦争をしてもらいたいのだ」
「はぁ、代理戦争ですか。その、魔法で解決できるという証拠は?」
「今、時間が止まっているだろ?その気になれば巻き戻すこともできるし、死者を復活させたり、記憶の改ざんもできる。それなら問題なかろう?」
「おっしゃられることが本当であれば問題ないですね」
「疑いたくなるのはわかるが、それでは話が進まん。何かやってほしいことを言ってみろ」
「そうですね。それでは、私は昔、右足の小指を機械に挟み失いました。それを復元してみせてください」
「それで納得するんだな?」
復元してみせる
「おお!マイエンジェル!ありがとうございます」
「俺は魔法を地球でなるべく使わないというルールを作っていたが、今回は使わざるを得ない状態だ。だから、この指についてはお前への感謝の印として残しておいてやる。本来ならもう一度消すところだがな」
「ありがとうございます。それで、具体的には敵の規模はわかっておいでですか?」
「知らん。勝手に売られた喧嘩だ。しかし、相手も惑星の代表を連れてくるはずだ」
「相手の天使様は戦闘はされますか?」
「いや、天使は戦闘ができない。神の意志だ。それは俺にも逆らうことはできない。しかし、お前たち人間は違う。敵を滅ぼしてこい。勝負がついたら魔法で時間を巻き戻す予定だ」
「なるほど。承知しました。それでは、準備時間はどれくらいいただけますか?あと、部隊の人数はどれほどの規模にしましょうか?」
「知らん。戦争などやったことがないからな」
「そ、それではどうしようもありません。極端な意見を申し上げると、世界中の人員を使って戦争をすれば最大戦力となりますが、そんなことは現実的ではありません。かと言って、相手方の出方もわからなければ手の打ちようもありません」
「たしかにそうだな。全員が出撃するとなると、使う魔法も規模が大きくなり、俺も都合が悪いな。ちょっと、決めてくるよ」
俺は天使だが、頭がいいわけではない。
いろいろと観察しているから知っているだけで、初めてのことには滅法弱いのだ。
さて、困った。
困った時は第8宇宙に限る。
本来であれば神に相談すべきことだが、あのオッサンは嫌だ。
ブルックのイラストです
俺は身構えたが、今更だと開き直るしかなかった。
いつもそうだった。
戦争は一方的に始められ、それが正義であることを後からつけたす。
俺の宇宙にある地球でも同じことは繰り返されていた。
こんな茶番には付き合ってられない。
しかし、彼女をここまで怒らせたのは自分である。
これについては、悪いことをしたと思っている。
だから、1度だけ付き合ってやることにした。
もちろん、地球にいる子どもを連れてきて戦争をさせるわけだから、最大限の配慮はしたい。
しかし、俺は魔法をなるべく使わないことで、地球の運営を進めてきた。
地球の子どもたちにも魔法を使えないような環境を強制してきた。
そんな俺が今更、魔法で戦えとは言いたくない。
しかし、ガブエラは本気だ。
昔から俺のことは疎《うと》んでいた。
そんな彼女のことだ。
間違いなく、勝ったら俺の宇宙を壊しにくる。
元ヒトである俺を天使だと認めていない連中は、まだまだいるのだ。
だからこそ、俺はムキになって魔法を使えない地球を運営したのである。
いわば「魔法なしでもここまで俺はできるんだ」という当てつけのための宇宙となってしまったのである。
そこで、俺は軍事大国であるアメリカの軍事最高責任者へ会うために地球へ降りていた。
その軍事最高責任者――ここでは便宜上「将軍」と呼ぼう――は、俺と会うなり「ゴッド」だの「エンジェル」だの言っていたが、念話をつないでやる。
もうこの際、こいつには魔法の存在を知ってもらおう。
そう考えての行動であった。
「なんてことですか。あなたが神だったのですね?」
こんなやり取りは初めてだが、神に近しい者であることはすぐにバレるらしい。
「いや、ちがうぞ。俺は天使だ」
「おお!なんということだ!神よ!こんなめぐりあわせに感謝します」
「いや、俺は天使だってば」
神に感謝したんだろうけど、あのオッサンだと考えると嫌だったのでツッコんでみた。
「わかりました。マイエンジェル!今日はどのようなご用件ですか?」
「そう、用件はあるんだが、説明はしにくくてな」
「そうなんですね」
コンコンコン
「入れ」
将軍は急に偉そうに命令しだした。
「はっ!失礼します」
ガチャリと音がなり、重そうな木製の扉が開く。
その瞬間、俺は時間を止めた。
面倒ごとが増えるからだ。
おそらく、誰か入ってくるのだろう。
そいつにまで天使の存在をさらすつもりはない。
天使なんていうものはいないと地球の人間は信じているのだ。
しかし「神や天使がいるといいな」くらいの気持ちは持っているのである。
だから、さきほどの将軍のように取り乱す人間もいる。
そんな面倒は増やしたくないからさらにルールを破ってまで時を止めた。
「ん?どうなっていますか?」
将軍は混乱している。
「時を止めた」
将軍はゆっくりと言葉を噛みしめて、うなずいた。
「時を止められるのですね?」
さすが、将軍と呼ばれるだけはある。
理解が早い。
瞬時に対応することは戦争において間違いなく一番必要な能力である。
それを将軍が持っていることは今のやりとりで理解できた。
「ああ、そうだ。それで、お前、名前はなんて言うんだ?俺はアルターイだ」
「天使アルターイ様ですね。よろしくお願いします。私の名前はブルック・ミューラーです」
「ブルックか。こちらこそよろしく頼む。今回このようにお前に会いに来たのは理由がある」
「理由ですか」
ブルックはきれいに整えられた髭をなでながら返事をした。
「ああ。ちょっと、お前に戦ってほしい相手がいる」
「天使様のお言葉とあれば一考の余地はありますが、私の一存では決めかねます」
当然の答えだ。
国防を担っている将軍が一人で戦争を吹っ掛けられるほど、地球はぬるいルールにしていない。
民主的な解決を図るために独裁者が淘汰される社会になりつつある。
もちろん、民主制が正義でないことは俺はわかっている。
これでも天使だ。
しかし、天使は全知でも全能でもない。
神に近い能力は持っているが、それらすべてを有しているわけではないのである。
そう、この地球もまた、悩みながら導いてきた。
かつて独裁者が戦争を起こしまくっていることも悩んだし、民主制を傘にあくどいことをしている人間もいることにも頭を抱えた。
どちらが正義とは言えない。
しかし、今現在、このアメリカは民主国家である。
そうなると、答えを待ってほしいと答えるだろう
「いや、違うんだ。お前の心配していることはすべて俺が魔法で解決する。例えば、報告の義務や、予算、部下の命の問題など、あらゆることはすべて俺が解決する。お前には、天使同士の代理戦争をしてもらいたいのだ」
「はぁ、代理戦争ですか。その、魔法で解決できるという証拠は?」
「今、時間が止まっているだろ?その気になれば巻き戻すこともできるし、死者を復活させたり、記憶の改ざんもできる。それなら問題なかろう?」
「おっしゃられることが本当であれば問題ないですね」
「疑いたくなるのはわかるが、それでは話が進まん。何かやってほしいことを言ってみろ」
「そうですね。それでは、私は昔、右足の小指を機械に挟み失いました。それを復元してみせてください」
「それで納得するんだな?」
復元してみせる
「おお!マイエンジェル!ありがとうございます」
「俺は魔法を地球でなるべく使わないというルールを作っていたが、今回は使わざるを得ない状態だ。だから、この指についてはお前への感謝の印として残しておいてやる。本来ならもう一度消すところだがな」
「ありがとうございます。それで、具体的には敵の規模はわかっておいでですか?」
「知らん。勝手に売られた喧嘩だ。しかし、相手も惑星の代表を連れてくるはずだ」
「相手の天使様は戦闘はされますか?」
「いや、天使は戦闘ができない。神の意志だ。それは俺にも逆らうことはできない。しかし、お前たち人間は違う。敵を滅ぼしてこい。勝負がついたら魔法で時間を巻き戻す予定だ」
「なるほど。承知しました。それでは、準備時間はどれくらいいただけますか?あと、部隊の人数はどれほどの規模にしましょうか?」
「知らん。戦争などやったことがないからな」
「そ、それではどうしようもありません。極端な意見を申し上げると、世界中の人員を使って戦争をすれば最大戦力となりますが、そんなことは現実的ではありません。かと言って、相手方の出方もわからなければ手の打ちようもありません」
「たしかにそうだな。全員が出撃するとなると、使う魔法も規模が大きくなり、俺も都合が悪いな。ちょっと、決めてくるよ」
俺は天使だが、頭がいいわけではない。
いろいろと観察しているから知っているだけで、初めてのことには滅法弱いのだ。
さて、困った。
困った時は第8宇宙に限る。
本来であれば神に相談すべきことだが、あのオッサンは嫌だ。
ブルックのイラストです
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