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第60話 自分が怖い

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 僕のスキルレベルは二千を超えている。
 おそらく、前人未到の領域だろう。
 その気になればこのあと自己暗示でレベルを一万まで上げることもできる。
 それはスキルがただでさえ多すぎて把握できないのにさらなるカオスを招く。
 それはさすがにやめておこう。

 さて、自分の実力がわからない。
『剣聖』ほどのぶっ壊れスキルは滅多に出ないとしても、百以上のスキルを合成した『ピュア』自体がぶっ壊れスキルになっている。
 まず、スキルの発動回数が二千回の時点で異常だ。
 普段、おしゃべりでない僕は一日の発する言葉全てに『ピュア』をつけてもおつりが出るのではないだろうか?

 これは、一度、試し切りをしておく必要がありそうだな。
 本格的な攻略の前にいつも行っていた郊外のダンジョンで試しておこう。
 すぐに帰ってくるつもりだったのでアイリスだけを連れて行くことにした。
 ガーベラは暴走するし、サルビアは僕の実験を無視して攻撃魔法を打ってしまうだろう。
 アイリスだったら、万が一の盾としても守ってくれる。
 最高の人選だろう。

 馬で移動し、ダンジョン入り口に到着した。
 馬は入り口の宿屋に預けて徒歩でダンジョンに入る。
 アイリスは武器は使えないので、大きめの鋼鉄の盾を用意した。
 少し重そうにしているが、これには慣れてもらうしかない。
 彼女の武器は盾だ。
 
 さっそく、ザコ魔物が現れた。
 ゴブリンだ。
 素手のゴブリンはザコ中のザコ。
 何もすることなく切り裂かれるだけの存在だ。

 僕は『剣聖』スキルの出力を50%にして攻撃した。
 普通であれば、スパンと真っ二つに切れておしまいのはずだ。
 しかし、今は違った。
 切れた後、吹き飛んで、爆破攻撃が起こった。
 良く見えなかったが、死体が一瞬圧縮されたようにも見えた。
 確認はできなかったが、各種状態異常もあったかもしれない。

 通常攻撃が異常な攻撃に変更されていた。
「これはダメだな……」
「ダメですか? すごいです」
 アイリスは褒めてくれるが、これを連発したら僕が全て戦うことになりそうだ。
 僕は中衛で安全に過ごしたいのだ。
 試し切りに来てよかった。

 メインの攻撃は魔法にしよう。
 魔法はスキルさえ身についていれば必要な魔法の名前を叫ぶだけで使えるらしい。
 僕はどのスキルが身についているのかわからないので、適当にやるしかない。
 それっぽい名前を叫んでみて使えるものを覚えておこう。

 またもや魔物が現れた。
 今は3階層まで潜っているので、ウェアウルフが現れた。
 懐かしい。
 初めてテイムしたのはコイツだった。

「アイリス、魔法で攻撃するから、魔物の攻撃を防いでね」
「はい、承知しました」

「アイスランサー」
 目の前の氷に槍が現れ、目標に向かって飛んで行った。
 途中、アイリスの耳の横をかすめたので冷や汗をかいた。
 どうやら攻撃するたびに前にでる必要があるらしい。
 後方からの攻撃は専用の魔法があるのだろうか?

 アイスランサーはウェアウルフの腹部に直撃し、突き刺さっている。
 どうやら、まだ攻撃が必要なようだ。

「フレイムピラー」
 炎の柱がウェアウルフを包み込み周囲の温度が一気に上がる。
 ウェアウルフは燃えカスとなって消えていた。
 どうやら、炎系の攻撃の方が範囲が広くて使い勝手がいいようだ。
 サルビアが爆炎魔法ばかり使いたがるのはこれが理由かもしれない。

 次に、4階層の階層主へ挑むことにした。
 オーガだ。
 ヤツにも名前を付けてガーベラに殺されるというトラウマ事案があったな。
 懐かしい。
 階層主は主に次の階層への連絡路周辺にあらわれるので、見つけるのは簡単だった。
 
 オーガはいつも通りの巨体を使って攻撃しようとしてくる。
 攻撃は全てアイリスが『受け』ている。
 彼女の守りは鉄壁だ。
 僕は後ろから攻撃魔法を試していく。

「シャイニングフレア!」
 ……なにも起こらない。
 こんな魔法は無いと言うことだろう。
 ものすごくカッコ悪い。
 アイリスにはある程度恥をかいてきたので今更だが、ここにガーベラやサルビアがいたら恥ずかしすぎて帰っていたところだ。

「バーニングフレア!」
 大爆発が起こってオーガの顔面を吹き飛ばした。
 肉薄していたアイリスも瞬時に盾でガードしたからよかったけど、ガードが遅れたらアイリスにもケガをさせるところだった。
 あぶなかった。

 ん?
 回復魔法も使えるかな?
 さっきできた擦り傷を見つめながら……。
「ヒール」
 緑の光が輝き、傷が回復した。
 さらなる回復は「モアヒール」か「ハイヒール」ってとこかな?
 サルビアに教えてもらおう。

 この後もいろいろな魔物で魔法を試しまくった。
 わかったことは、基本四属性に加えて氷と雷魔法が使えるということ、爆炎魔法は強力ということ。
 蘇生の魔法は実験が怖すぎるからできなかった。
 ある程度は魔法が使えることがわかったので、サルビアから直接教えてもらおう。
 そして、通常攻撃は封印することを誓おう。
 斬撃強化に、圧縮、吹き飛ばし、爆破攻撃を同時に行いながら、状態異常も付与するとかチートすぎる。
 僕はあくまで安全圏からチクチク攻撃する人として働こう。
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