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クレイグとの出会い
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バルコニーへ出てみると夜風が気持ちいい。
「ふぅ、疲れましたわ。でも、なんだかスッキリ。私の中で、エドモンド様は相当負担になっていたのね。ちょうどよかったわ」
「大変だったな」
ふと、隣を見ると騎士様が立っていました。ナンシーの件での取り締まりでしょうか。
「いや、身構えないでくれ。俺はクレイグ = エヴェレスト。王城内の治安維持を担当している」
「まぁ、あなたがエヴェレスト侯爵のご子息様ですのね」
噂ではよくクレイグ = エヴェレストという名前を聞いていました。身長が高く、とにかくかっこよくて、女性から大人気であると。確かに、長身で整った顔をしていて嫌な感じは一切ない。
「ああ。先ほどの件、見させてもらったよ。あなたに非はないことはわかっているが、念のため確認してこいと上司から言われてね」
私は外を眺めるようにバルコニーのフェンスにもたれかかります。
「リード男爵令嬢については、他のところでも同様の男女トラブルを引き起こしていてね。以前から少し調査をしていたんだ。先ほど、やっと彼女の付き添いのメイドが彼女の自作自演を手伝ったと言質が取れたところだ。しばらく彼女は檻の中に入ってもらうことになるだろうな」
「そうですか」
ぼんやりと外の景色を見続けながら答えます。
「今回の件、気の毒だったな」
「いいえ。相手は自分の立場を理解していない女好き。政略結婚に愛は求めてはいけないとはわかっていつつも、せめてお互いが居心地の良いと思える関係が構築できればと考えていた時期もありましたわ。あんなのと一緒になるくらいなら一人の方がずっとマシ。婚約破棄出来てちょうどよかったのです」
「これを」
そっとハンカチを顔に当てられました。どうしたのでしょう。
「俺が隠しているから、今は好きなだけ泣くといい」
泣いている? 私が?
あぁ、そうか、悔しかったんだ。家のためと思ってずっと我慢してきたのに、結果がでなくて。いつかきっと、変わってくれるとそう思っていたのに。彼は女好きという割には私にはまったく興味がなかった。最後まで女として見られなかった。あぁ、私の価値とは何なんでしょう。ハンカチを握りしめ、わんわんと泣いてしまいました。
「……私はもう22歳です。貴族として身だしなみには気を付けてきたつもりです。そんなに私には女性としての魅力がないのでしょうか」
クレイグ様に聞いても仕方のない質問なのに、どうしても質問せずにはいられませんでした。何か私に問題があるのならはっきりと言ってほしいと思って。
「俺は、貴女は十分に美しいと思う」
えっ、と顔を向けると、真面目な顔をしたクレイグ様と目が合いました。
お世辞とはいえ、初めて家族以外の男性から優しい言葉をかけていただいた私がときめいてしまったのは仕方のないことです。
「そうだわ、ハンカチ、ありがとうございました。助かりましたわ」
ハンカチを返そうと見てみると涙でびしょびしょ、強く握りしめていたのか、しわくちゃになっていました。
「失礼いたしました。このままお返しするにはいきませんわね、必ず洗って返しますわ」
「いや、いいよ。それは目の前にいる素敵な女性への俺からのプレゼントってことで」
「ありがとう。今日はもう帰るわ。お父様と今後について話をしなければ」
恥ずかしい! こんな対応されたの初めてよ! ドキドキが止まらない私は、この場から逃げるように立ち去ろうとしました。
「そうか、馬車まで送っていこう」
そう言ってエスコートしてくださったクレイグ様の手が温かかったからでしょうか。私の心も温かくなっているのを感じました。
「ふぅ、疲れましたわ。でも、なんだかスッキリ。私の中で、エドモンド様は相当負担になっていたのね。ちょうどよかったわ」
「大変だったな」
ふと、隣を見ると騎士様が立っていました。ナンシーの件での取り締まりでしょうか。
「いや、身構えないでくれ。俺はクレイグ = エヴェレスト。王城内の治安維持を担当している」
「まぁ、あなたがエヴェレスト侯爵のご子息様ですのね」
噂ではよくクレイグ = エヴェレストという名前を聞いていました。身長が高く、とにかくかっこよくて、女性から大人気であると。確かに、長身で整った顔をしていて嫌な感じは一切ない。
「ああ。先ほどの件、見させてもらったよ。あなたに非はないことはわかっているが、念のため確認してこいと上司から言われてね」
私は外を眺めるようにバルコニーのフェンスにもたれかかります。
「リード男爵令嬢については、他のところでも同様の男女トラブルを引き起こしていてね。以前から少し調査をしていたんだ。先ほど、やっと彼女の付き添いのメイドが彼女の自作自演を手伝ったと言質が取れたところだ。しばらく彼女は檻の中に入ってもらうことになるだろうな」
「そうですか」
ぼんやりと外の景色を見続けながら答えます。
「今回の件、気の毒だったな」
「いいえ。相手は自分の立場を理解していない女好き。政略結婚に愛は求めてはいけないとはわかっていつつも、せめてお互いが居心地の良いと思える関係が構築できればと考えていた時期もありましたわ。あんなのと一緒になるくらいなら一人の方がずっとマシ。婚約破棄出来てちょうどよかったのです」
「これを」
そっとハンカチを顔に当てられました。どうしたのでしょう。
「俺が隠しているから、今は好きなだけ泣くといい」
泣いている? 私が?
あぁ、そうか、悔しかったんだ。家のためと思ってずっと我慢してきたのに、結果がでなくて。いつかきっと、変わってくれるとそう思っていたのに。彼は女好きという割には私にはまったく興味がなかった。最後まで女として見られなかった。あぁ、私の価値とは何なんでしょう。ハンカチを握りしめ、わんわんと泣いてしまいました。
「……私はもう22歳です。貴族として身だしなみには気を付けてきたつもりです。そんなに私には女性としての魅力がないのでしょうか」
クレイグ様に聞いても仕方のない質問なのに、どうしても質問せずにはいられませんでした。何か私に問題があるのならはっきりと言ってほしいと思って。
「俺は、貴女は十分に美しいと思う」
えっ、と顔を向けると、真面目な顔をしたクレイグ様と目が合いました。
お世辞とはいえ、初めて家族以外の男性から優しい言葉をかけていただいた私がときめいてしまったのは仕方のないことです。
「そうだわ、ハンカチ、ありがとうございました。助かりましたわ」
ハンカチを返そうと見てみると涙でびしょびしょ、強く握りしめていたのか、しわくちゃになっていました。
「失礼いたしました。このままお返しするにはいきませんわね、必ず洗って返しますわ」
「いや、いいよ。それは目の前にいる素敵な女性への俺からのプレゼントってことで」
「ありがとう。今日はもう帰るわ。お父様と今後について話をしなければ」
恥ずかしい! こんな対応されたの初めてよ! ドキドキが止まらない私は、この場から逃げるように立ち去ろうとしました。
「そうか、馬車まで送っていこう」
そう言ってエスコートしてくださったクレイグ様の手が温かかったからでしょうか。私の心も温かくなっているのを感じました。
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