上 下
61 / 203
地盤固め

戦後~帝国sideと教国side~

しおりを挟む
「なんと・・2人もやられたというのか・・」
ミリト帝国皇帝はレピルとボレムの報告を聞き、椅子に倒れこんだ。
「皇帝!大丈夫ですか!?」
レピルが心配そうに話しかける。
「あぁ大丈夫だ。アラスを倒してくれたのはありがたいが、それ以上に失ってしまうとは・・アラスめ余計なことを・・」
皇帝は予想以上の損失に頭を悩ませた。
強力な力を持つ十二親王、彼らは帝国の最大の武器である。
しかし、その内の4人を失ってしまった。これでは、他の国への侵略が難しくなる。ガリルや今ここにいる2人もまだ負傷しているわけだし、我々は力を大きく削がれたということになるのか。
幸いだったのは教国もそれなりの損害を出してくれたことである。


「そうですか・・アリエッタまでもが・・」
ホワイトレール教王は静かに報告を聞いていた。モグリとベクターも重傷を負ってしまった。ベクターは今回の責任からしばらくの懲戒処分が決定した。
帝国との拮抗関係は続くだろう。しかし、代わりにリクト達の勢力が大きくなることとなった。
我々の犠牲は3人、帝国は4人。それにも関わらず幸運の星ラッキースターの犠牲者は0人である。
これが何を意味するか言うまでもないだろう。
アラスの暴走が引き起こしたものと言ったらそこまでだが、リクトはそれを1人で倒した。それも大きな問題なのだ。
当面の間、教国も行動を制限されるだろう。後任の人間を探しているがなかなか見つからない。
万が一見つかったとしてもかつての勢力まで戻すのも厳しい。
教王はそれを考えただけで頭が痛くなったのだった。


「リクト・・もう我々はあの男には勝てないのか・・」
ベッドの上でベクターが一人呟いた。
会談した時にはまだ我々に勝機はあった。あの男は危険だと察知していた。しかし、そのための行動で2人の仲間を失った。
自分はどこで間違ったのか?
それを何度も問いかけてみるが」」未だに答えは見つからない。
しかし、本当は理解しているのかもしれない。リクトという存在に関わったことが間違いなのかもしれない。
しかし、ベクターはそれを認められなかった。そして、また考えに没頭することとなった。


幸運の星ラッキースター・・・」
ギルドマスター、ラキドは政務室で呟いた。リーダーのリクトは確かに異質な奴だった。
最初のクエストでは2ランク上のクエストを受注し、なんとワイバーンを狩ってきた。ワイバーンは竜種の中でも最弱だがそれはあくまで竜種の中でだ。
人間相手ではワイバーンはかなりの強さを誇る。さらに永久の迷宮を次々と攻略していったし、さらに化け物レベルの効果を持つポーションまで販売。
そして今回は聖徒と親王を退けた。
冒険者ギルドは彼らに何度も救われている。もう、我々にはなくてはならない存在となっている。
よくギルドの方針に口出しをするクランがいるが、彼らは違う。膨大な資金提供により、こちらが迂闊に手が出せなくなっている。
「あのクランだけには喧嘩を売らないようにしないとな・・」
ラキドはため息をつきながら呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

処理中です...