人類に見捨てられた僕は「魔」を従えて復讐を決意した

魔王国編 第1章 それなりに気楽な日々

ある朝目覚めると

 目が覚めたとき、僕はその状況を理解できていなかった。
 僕の隣に、見知らぬ女の子が寝ていたのだ。とても長い金髪が色々なところに広がり、少し面白い。そしてシュファニーと同じくらい真っ白な肌は子供のそれとは思えないほど艶かしい。
 うん？見知らぬ女の子とは言ったが、なんとなく見覚えがあるような・・・。
 思い出した。
 エルブライン家の三女で、合格発表の際に声をかけてきた女の子だ。名前は確か、エマ。
 いや待て。そんなことは今はいい。なぜ僕のベッドに女の子が寝ているのかということだ。僕はテレパシーでガブロディアにどうして何も言わなかったのか問うた。
「あ？お主、可愛い女の子が来たら通せと言っておったではないか」 
「それはシュファニーのこーーあぁ！もういい！」
僕は勢いよくベッドから抜け出した。するとかぶさっていた毛布がベッドから落ちていき、彼女の全てが見えた。
「え？ちょ、裸！？」
その言葉に目をさますエマ。
「んん。ああシュレイ、おはよう」
「いや、おはようじゃなくて！じゃなかったおはようではなくてですね！」
「あら？いいのよ敬語なんて。気にしないわ。あと名前も呼び捨てで」
「エマ様どうしてこのようなところにおられるのでしょう」
わざとらしくそう言うと、エマは顔をぷくーと膨らませて怒りを表現した。しかし少しすると機嫌を直し、質問に答えてくれた。
「うーん。なんだろう。ああ！そう。夜這いってやつ？」
「この歳でですか？今11歳くらいですよね」
「12歳ですぅー！ほらぁ。見てみなさい。胸だってほら！」
ああ！やばい。今彼女は裸なんだった。
「もう、なんでもいいですから服を着てください！」
「いやよ。服着たら追い出されそうだもの」
「いや追い出しませんって！話くらい聞きますから。まあまたあの従者の話だとは思いますが」
すると、彼女は心外といったように不機嫌そうな表情をした。
「私はそんなしつこい真似しないわ。従者になってくれなんかもう言わない」
「じゃあなんでですか？」
すると、初めて恥ずかしそうに頬を染めるエマ。裸見せるより恥ずかしいことってなんだ？
「あの、そのね・・・私の・・・」
「エマ様の・・・？」
「こ、恋人になって、な、な、なりなさい！！」
はぁぁ？恋人？どうして急に。ああなるほどそう言うことか。
「魔獣を追い払った僕を恋人にすることで、名声をーー」
と、突然怒りを露わにしたエマがつかみかかってきた。そして僕はバランスを崩し床に倒れてしまう。そこに馬乗りになったエマが言う。
「馬鹿に、しないで！私は誇り高きエルブライン家の娘よ！名声欲しさに恋人なんてつくらない！」
僕は少しだけ驚いていた。こんなに無意味なプライドでない、ただ単純で他意のない誇りを叫ぶことができる貴族はあまりいないからだ。
「すまない。僕は君のことを決めつけていたみたいだ」
すると、また頬を赤らめるエマ。
「わ、分かってくれたのなら、いいのよ」
「でも、じゃあどうして僕に・・・」

その時キィと扉が開く音が聞こえた。振り返ると、扉の前で立ち尽くす、シュファニーの姿があった。