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第5章

その時シュファニーは

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 シュレイが王宮に乗り込んでいた時、魔の谷では、シュファニーがクリエスに頭を下げていた。
「お願いします。わたしをシュレイくんのところまで空間移動させて下さい!」
カエルの姿をした「魔」であるクリエスは、困ったような顔をした。
「しかし、あるじ様にシュファニー様をここから離れさせないように言われてるからなあ」
「でも「魔呼人」の力を使われているわけじゃないんですよね」
すると、クリエスは頷く。
「なら、お願いします」
「しかしなあ」
クリエスが煮え切らない態度を取っていると、突然空間が歪み出した。そこから現れたのは、傷だらけのマリアシアだった。すぐに駆け寄って背中を支えるシュファニー。
「大丈夫ですか!ナリュシー、はやく手当を!」
ナリュシーに傷を取ってもらいながら、マリアシアは周りの「魔」たちに戦況を報告する。すると、シュファニーは焦った様子で言った。
「やっぱりわたしは行かなくては!シュレイくんを止めないと」
それをマリアシアが止める。
「それはだめ。危険だし、あるじ様の邪魔をする事になるわよ。それに王はあるじ様の母親を殺した最低野郎なんでしょ?」
それでも、とシュファニーは続ける。
「それでも、家族なんですよ。シュレイくんの、家族なんですよ?絶対に、いつか後悔するときが来るんです。そして、それをしてしまったら、もう後戻りはできなくなってしまう・・・」
それを聞いた時、マリアシアは複雑な思いを抱いていた。マリアシアは「魔」であり、人間の敵である存在だ。しかし、3年も一緒にいると、シュレイに愛着が湧いてきたりもする。「魔呼人」としてではなく、人間としての彼に対する愛着。その感情は、少しだけシュファニーを行かせたいと言っている。
 と、そこで、近くにいたタリュムが口を開いた。タリュムは人の血肉を好物とする「魔」だ。
「でも、あるじ様、すでにあの、ステイシアとかいう家族を殺してますよね?」
「ちょ!馬鹿!」
マリアシアは、タリュムの口を塞ごうとしたが、もう遅かった。シュファニーは、驚愕の表情を浮かべ、瞳には涙を溜めている。
「・・・シュレイ、くん、が?ステイシア様をころした?」
マリアシアは仕方なく事の一部始終を話した。すると、シュファニーは、突然倒れた。驚きのあまり気を失ったのかと思い、支える。そして顔を覗き込もうとする。
 だが次の瞬間、驚くべき事態が起きた。シュファニーの体が薄っすらと金色に輝きだしたのだ。
「一体なに?」
状況がつかめないマリアシアをよそに、シュファニーはむくりと起き上がる。
その顔を見たとき、マリアシアは目を見張った。
 その顔には、まったくと言っていいほど表情がない。整った顔立ちが、人形のように感じられる。
そして、冷淡な音を発する。
「・・・こやつ、やっと降ろしおった。自覚がないというのは怖いのう」
それは、シュファニーの言葉とは思えないものだった。
マリアシアは、口を開くこともできない。
「まあよい。まずはこやつの願いを叶えてやるとするか」
そう言って立ち上がるシュファニー。そして、ゆっくりと宙に浮いた。シュファニーは何か気にくわないように自分の両手を眺めた後、目で追えないほどの速さで飛び出していく。
 驚き、動けない「魔」たち。そのままシュファニーは空の彼方に消えていく。
と、そこでマリアシアは言いようのない恐怖を感じた。

あれはまるで
神ーー?
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