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屋敷1
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就寝前のワインを嗜んでいたウォーレス伯爵は、眉間に皺を寄せゆっくりと立ち上がった。屋敷の外から届く悲鳴や叫び声が次第に大きくなっていく。それも、五人や十人どころではない。酔っ払いどもが暴れているにしては度が過ぎている。
「こんな夜更けに何事だ?」
苛立ちをあらわにして窓の外を睨みつけた。暗がりに浮かび上がる高さ三メートルの正門。その閉ざされた鉄格子の門に大勢の人が群がっているのがわかる。
「なっ、暴動だと? ……いや、違う。なにか、様子がおかしい……なんだ?」
ゴクリと息を呑んだウォーレス伯爵は、窓を開けて身を乗り出した。人の形をしているが動きが普通じゃない。奇声を上げて飛び跳ねたり、鉄格子に体当たりするなど、まるで獣のようだ。
「――旦那様! 大変でございます! ま、魔物が! 魔物の大群が町に侵入しました!」
顔面蒼白になった家令が部屋に飛び込んできた。七十五歳だがまだまだ現役で、先代の頃から屋敷に勤めている。長い付き合いになるが、ここまで慌てふためく姿を見るのは初めてだ。
「ま、まさか。そんな……私の町に魔物だと? くっ、くうう……け、憲兵隊は何をしているのだ! こんな時のために高い金を払っているんだぞ! あの役立たずどもめ! クソッ……こうしてはおれん、使用人を集めろ。絶対に魔物をこの屋敷に入れるな! 屋敷の護りを固めろ! 急げええっ!」
「……は、はい」
動揺して裏返る主の声に、戸惑う家令は短く返事をして出て行った。屋敷の護りを固めろと言われても、しっかりと玄関の鍵をかける以外なにができる。まさか武器を手に戦えというのか。剣を振るったことのある使用人はいても、実際に魔物と戦った経験は皆無。どう考えても魔物に殺される未来しか見えない。絶望の中、家令は屋敷を走り回った。
「――あなた、どうしたの? こんな夜中に騒々しいわね」
家令と入れ替わるように姿を現したのはネグリジェ姿のバーバラであった。寝ぼけ眼に厚化粧を落としたその顔は昼間とまるで別人だ。
「……逃げるぞ、バーバラ。私について来い」
「逃げる? なに言っているの? ちょっとあなた?」
ガウンを翻し歩き去るウォーレス伯爵の後を、慌ててバーバラが追う。
「バーバラ。落ち着いて聞いてくれ。町に魔物が現れた」
「はあ? 冗談はやめてよ。魔物なんて十何年も出なかったんでしょ? なんで今ごろ出てくるのよ?」
「さあな、私のほうが知りたいくらいだ。もう魔物は目の前まで迫っている。屋敷に入ってくるのも時間の問題だろう」
「ひ、ひいぃっ!? なんですって!? 魔物に殺されるなんて絶対に嫌よ! わたしまだ死にたくないわ! どうするのよおおっ!」
取り乱したバーバラが金切り声で喚き散らす。うんざりするように首を振り、ウォーレス伯爵は小さく舌打ちした。
「落ち着け。とりあえず落ち着くのだバーバラ。すぐに憲兵隊と王都から騎士団が駆けつける。それまで、非難部屋で隠れていれば大丈夫だ」
「なによ? 非難部屋って? そんなものがあったなんて、知らなかったわ」
妻になって何年も住んでいるというのに初めて聞く部屋だ。これはベルフェルミナも知らない秘密の部屋である。自分の命さえ助かればいいと考えているウォーレス伯爵にとって、自分以外の者に知らせる必要性がないのだ。もし、バーバラが現れなかったら一人で逃げるつもりでいた。
「――あっ、旦那様、奥様」
地下倉庫に続く階段の前で、若いメイドと出くわした。数カ月前にやってきたばかりの新人メイドである。この異常事態にすっかり怯えてしまい、プルプルと小刻みに震えていた。
「貴様。ここでなにをしている?」
「も、申し訳ございません。使用人は玄関ホールへ集合と指示がありましたので、そちらへ向かう途中でございます」
高圧的な主の問いかけにメイドが恐る恐る答えると、ウォーレス伯爵が僅かに目を細めた。
「……おまえの名は?」
「は、はい。ケイトと申します、旦那様」
「では、ケイト。私たちと一緒にきてくれないか」
「え? ですが――」
「死にたくなければ、来い」
声を低めたウォーレス伯爵が、ケイトの華奢な肩に手を置く。目に涙を溜めたケイトは、僅かに頷くのがやっとであった。
◇ ◇ ◇
「……ここなの? 狭いしジメジメして気持ちが悪いわ。ベッドどころか椅子も無いじゃない。足も疲れたし、どこに座ればいいのよ」
光苔に照らされた薄暗い部屋を見渡し、嫌悪感まる出しのバーバラがぼやく。ウォーレス伯爵、バーバラ、ケイトの三人は屋敷の地下から隠し通路を数分ほど歩き、百年以上前に掘られた非難部屋に辿り着いていた。
「ここは何十年も使われたことのない緊急避難用の部屋だぞ。快適に過ごすための部屋ではない。少しの間くらい我慢してくれないか」
ウォーレス伯爵に睨まれバーバラがそっぽをむく。
「は~あ、リーンはいいわね。安全な王都で暮らせて」
「そんなに羨ましいのなら、そこの扉から町の外に出られる。遠慮せず王都に行ったらどうだ?」
「フン。歩いて王都まで行けっていうの? 外に魔物だっているのよ」
「だったら、黙っていろ」
「なによ。そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「これでも紳士的に話しているつもりだが? 育ちの悪いお前と違ってな」
「はあ? それどういう意味かしら?」
「そのままの意味だが?」
険悪な雰囲気の中、部屋の隅でケイトが気配を消し見守っていると、
「――ケイト」
「は、はい。旦那様」
「そんなところにボサッと突っ立っていないで、屋敷の様子を見てこい」
「え? あ、は、はい。では、屋敷に戻って残されたみんなを連れてきます」
「なにバカなことを言っているのだ。魔物に隠し通路がバレてしまったらどうする、愚か者め」
「ですが旦那様、皆さんが魔物に――」
「使用人の命なんかどうでもよい。貴様、この町の支配者である私の命令が聞けないというのか?」
「うっ……」
冷徹な視線を浴びせかけられ、ビクッとケイトが肩を震わせる。
「来る途中に梯子があったのを覚えているな? それを上れば屋敷全体が見渡せる覗き窓がある。そこから様子を見てくるのだ。間違っても屋敷に戻るんじゃないぞ! いいな!」
「し、承知いたしました旦那様」
ケイトは半べそをかきながら逃げるように出て行った。
「ねえ、あなた? どうして、あんなどんくさいメイドを連れて来たのよ? 放っておけばよかったじゃない」
「ああ、そうだな。だが、身の回りの世話係がいるだろう? それに、万が一の時は囮に使えるじゃないか」
「そうね。あのメイドが襲われている隙に逃げられるわ。さすがあなた」
「ククッ。今ごろ屋敷の使用人どもは魔物に襲われ逃げ惑っているかもしれんな。せいぜい肉の壁となって、魔物を足止めするくらいにはなるだろうさ」
「フフフ。あいつらの最後の仕事は憲兵隊と騎士団がやってくるまでの時間稼ぎというわけね」
人の命を虫ケラのように嘲笑うバーバラであったが、そんなバーバラも囮として連れてこられたことを知る由もなかった。そして、この会話をケイトに聞かれていたことも。
「こんな夜更けに何事だ?」
苛立ちをあらわにして窓の外を睨みつけた。暗がりに浮かび上がる高さ三メートルの正門。その閉ざされた鉄格子の門に大勢の人が群がっているのがわかる。
「なっ、暴動だと? ……いや、違う。なにか、様子がおかしい……なんだ?」
ゴクリと息を呑んだウォーレス伯爵は、窓を開けて身を乗り出した。人の形をしているが動きが普通じゃない。奇声を上げて飛び跳ねたり、鉄格子に体当たりするなど、まるで獣のようだ。
「――旦那様! 大変でございます! ま、魔物が! 魔物の大群が町に侵入しました!」
顔面蒼白になった家令が部屋に飛び込んできた。七十五歳だがまだまだ現役で、先代の頃から屋敷に勤めている。長い付き合いになるが、ここまで慌てふためく姿を見るのは初めてだ。
「ま、まさか。そんな……私の町に魔物だと? くっ、くうう……け、憲兵隊は何をしているのだ! こんな時のために高い金を払っているんだぞ! あの役立たずどもめ! クソッ……こうしてはおれん、使用人を集めろ。絶対に魔物をこの屋敷に入れるな! 屋敷の護りを固めろ! 急げええっ!」
「……は、はい」
動揺して裏返る主の声に、戸惑う家令は短く返事をして出て行った。屋敷の護りを固めろと言われても、しっかりと玄関の鍵をかける以外なにができる。まさか武器を手に戦えというのか。剣を振るったことのある使用人はいても、実際に魔物と戦った経験は皆無。どう考えても魔物に殺される未来しか見えない。絶望の中、家令は屋敷を走り回った。
「――あなた、どうしたの? こんな夜中に騒々しいわね」
家令と入れ替わるように姿を現したのはネグリジェ姿のバーバラであった。寝ぼけ眼に厚化粧を落としたその顔は昼間とまるで別人だ。
「……逃げるぞ、バーバラ。私について来い」
「逃げる? なに言っているの? ちょっとあなた?」
ガウンを翻し歩き去るウォーレス伯爵の後を、慌ててバーバラが追う。
「バーバラ。落ち着いて聞いてくれ。町に魔物が現れた」
「はあ? 冗談はやめてよ。魔物なんて十何年も出なかったんでしょ? なんで今ごろ出てくるのよ?」
「さあな、私のほうが知りたいくらいだ。もう魔物は目の前まで迫っている。屋敷に入ってくるのも時間の問題だろう」
「ひ、ひいぃっ!? なんですって!? 魔物に殺されるなんて絶対に嫌よ! わたしまだ死にたくないわ! どうするのよおおっ!」
取り乱したバーバラが金切り声で喚き散らす。うんざりするように首を振り、ウォーレス伯爵は小さく舌打ちした。
「落ち着け。とりあえず落ち着くのだバーバラ。すぐに憲兵隊と王都から騎士団が駆けつける。それまで、非難部屋で隠れていれば大丈夫だ」
「なによ? 非難部屋って? そんなものがあったなんて、知らなかったわ」
妻になって何年も住んでいるというのに初めて聞く部屋だ。これはベルフェルミナも知らない秘密の部屋である。自分の命さえ助かればいいと考えているウォーレス伯爵にとって、自分以外の者に知らせる必要性がないのだ。もし、バーバラが現れなかったら一人で逃げるつもりでいた。
「――あっ、旦那様、奥様」
地下倉庫に続く階段の前で、若いメイドと出くわした。数カ月前にやってきたばかりの新人メイドである。この異常事態にすっかり怯えてしまい、プルプルと小刻みに震えていた。
「貴様。ここでなにをしている?」
「も、申し訳ございません。使用人は玄関ホールへ集合と指示がありましたので、そちらへ向かう途中でございます」
高圧的な主の問いかけにメイドが恐る恐る答えると、ウォーレス伯爵が僅かに目を細めた。
「……おまえの名は?」
「は、はい。ケイトと申します、旦那様」
「では、ケイト。私たちと一緒にきてくれないか」
「え? ですが――」
「死にたくなければ、来い」
声を低めたウォーレス伯爵が、ケイトの華奢な肩に手を置く。目に涙を溜めたケイトは、僅かに頷くのがやっとであった。
◇ ◇ ◇
「……ここなの? 狭いしジメジメして気持ちが悪いわ。ベッドどころか椅子も無いじゃない。足も疲れたし、どこに座ればいいのよ」
光苔に照らされた薄暗い部屋を見渡し、嫌悪感まる出しのバーバラがぼやく。ウォーレス伯爵、バーバラ、ケイトの三人は屋敷の地下から隠し通路を数分ほど歩き、百年以上前に掘られた非難部屋に辿り着いていた。
「ここは何十年も使われたことのない緊急避難用の部屋だぞ。快適に過ごすための部屋ではない。少しの間くらい我慢してくれないか」
ウォーレス伯爵に睨まれバーバラがそっぽをむく。
「は~あ、リーンはいいわね。安全な王都で暮らせて」
「そんなに羨ましいのなら、そこの扉から町の外に出られる。遠慮せず王都に行ったらどうだ?」
「フン。歩いて王都まで行けっていうの? 外に魔物だっているのよ」
「だったら、黙っていろ」
「なによ。そんな言い方しなくてもいいじゃない」
「これでも紳士的に話しているつもりだが? 育ちの悪いお前と違ってな」
「はあ? それどういう意味かしら?」
「そのままの意味だが?」
険悪な雰囲気の中、部屋の隅でケイトが気配を消し見守っていると、
「――ケイト」
「は、はい。旦那様」
「そんなところにボサッと突っ立っていないで、屋敷の様子を見てこい」
「え? あ、は、はい。では、屋敷に戻って残されたみんなを連れてきます」
「なにバカなことを言っているのだ。魔物に隠し通路がバレてしまったらどうする、愚か者め」
「ですが旦那様、皆さんが魔物に――」
「使用人の命なんかどうでもよい。貴様、この町の支配者である私の命令が聞けないというのか?」
「うっ……」
冷徹な視線を浴びせかけられ、ビクッとケイトが肩を震わせる。
「来る途中に梯子があったのを覚えているな? それを上れば屋敷全体が見渡せる覗き窓がある。そこから様子を見てくるのだ。間違っても屋敷に戻るんじゃないぞ! いいな!」
「し、承知いたしました旦那様」
ケイトは半べそをかきながら逃げるように出て行った。
「ねえ、あなた? どうして、あんなどんくさいメイドを連れて来たのよ? 放っておけばよかったじゃない」
「ああ、そうだな。だが、身の回りの世話係がいるだろう? それに、万が一の時は囮に使えるじゃないか」
「そうね。あのメイドが襲われている隙に逃げられるわ。さすがあなた」
「ククッ。今ごろ屋敷の使用人どもは魔物に襲われ逃げ惑っているかもしれんな。せいぜい肉の壁となって、魔物を足止めするくらいにはなるだろうさ」
「フフフ。あいつらの最後の仕事は憲兵隊と騎士団がやってくるまでの時間稼ぎというわけね」
人の命を虫ケラのように嘲笑うバーバラであったが、そんなバーバラも囮として連れてこられたことを知る由もなかった。そして、この会話をケイトに聞かれていたことも。
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