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自称天使レア

王都トカイなう

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 ゴブリンとオークを倒し、一気にVランクに昇格したリサたちは、上機嫌でイナカ村を後にした。
 馬車に揺られているが、今日のリサはしっかりと”準備”を済ませている。
 穏やかな旅が続くはずだが、今度はスライムに異変が起きていた。


「あー、言わんこっちゃない。変なもの拾い食いするからそうなるんだよ」


 変なものとは、午前中にマゾスライムが勝手に食べたゴブリンとオークの死体だ。
 ぶるぶると震えるスライムを見かねたリサは、エリクサーを取得した。

 エリクサーって腹痛にも効くのかな?
 瓶を開けようとしたとき、スライムが分裂して増えた。


「おー、増えた。どっちが本体?」
「どっちも本体?」


 リサとコンに見守られながら、マゾスライムは分裂を繰り返した。
 最終的に、食べた数だけ分裂して6匹のスライムになった。


「んー、ちょっと多いね。コンちゃんにあげるよ。殺して経験値にしようね♡」
「ココン!? それは、流石に。いらないなら逃がす?」
「そうだねぇ。スライムって伸びるから、1匹で間に合ってるし」


 せっかく強くなり、頑張って分体を出したマゾスライムは、あまりのぞんざいな扱いに歓喜した♡
 でも捨てられるのはちょっと困るので、分体たちは忙しなく本体と合体して元の1匹のスライムに戻った。


「いや、戻れるんかーい!!」
「ココン……分体は別個体。自然に戻りたいはず。このスライム、やっぱりちょっと変」


 マゾスライムはリサなしでは生きられない体にされている♡
 その本体から生まれた分体も、似たようなものだった♡


 リサは珍しく分体の仕組みに興味を持った。
 マゾスライムを引っ掴むと、ちぎって無理やり数を増やして遊んでいるうちに、立派な外壁と門が見えた。


「ようこそ。ここは王都トカイだ。他国の人間が多いが、無駄な喧嘩をしないようにな」


 王都なのにトカイって、どんだけ田舎国家なんだろう。
 リサはもやっとしながら、城門をくぐった。


 王都と呼ばれるだけあって、人も建物も密度が凄い。
 やかましいから半分くらい殺してもバレないかもしれない。


「うひゃー、人がゴミのようだ」
「はぐれると大変。リサ、手を繋ごう」
「コンちゃん大好き♡」


 何もないクソイナカ村も案外捨てたものじゃないな……。
 そう思っていたリサだが、やっぱ田舎ってクソだわと手のひらを返した。


 王都のギルドの大きさにたまげたあと、中に入ってまたたまげる。
 酒場と併設された冒険者ギルドは、活気に満ちていた。
 駆け出しの少年少女から、白髪交じりの老兵まで年齢層は幅広い。
 獣人もたくさん居たが、リサのお眼鏡にかなう人は居なかった。
 そのうち偶然を装ってセクハラはするつもりだ。


「みんな強そうだねぇ。掲示板も人がいっぱいで近づけないよ」
「ココン。食事をしながら待つ」


 空いてる席に座ってメニューを見ていると、向かいの席のガラの悪そうな連中が睨みつけてきた。


「臭ぇ。臭ぇなぁ! 獣人臭くてたまんねぇぜ」


 リサは激怒した。テーブルを叩いて立ち上がるリサを、コンが手で制する。


「コンは臭くない」
「そうだよ。コンちゃんはお日様の匂いがするんだから! そりゃ、冒険したあとの尻尾の付け根はなかなかエグい匂いがするけど、それがまた乙なもので――」
「リサ、ちょっと、黙って……」
「新入りにルールを教えてやる。ここは獣人禁止だ。ぶっ飛ばされなきゃ分からないのか?」


 これは嘘だろう。見渡す限り、獣人はたくさん居る。
 彼らの席の周囲には居ないだけで。

 面倒事を避けようとしたコンが、彼らの言い分を聞こうとしたとき――。
 リサはいきなり攻撃魔法をぶっぱした。


「【ロックスピア】」
「ぎゃあああ!! なっ、何しやがるっ!!」
「俺のルールを教えてあげる。コンちゃんを侮辱する人は、死刑だよ」
「女だろうが構いやしねぇ! ぶっ殺してやる!!」
「ちょっと!? 喧嘩にスキルは禁止ですよ!?」


 一触即発いっしょくそくはつの空気に、受付嬢が入ってきた。
 スキルの使用が禁止だとは知らなかったリサだが、知ってなお首をかしげた。


「それ、おかしくない? 俺たちはか弱い女の子だよ。まさか男を相手に、取っ組み合いの肉弾戦をしろって言ってるの?」
「そ、そう言われても……ルールですし……」
「世の中の半分はね、女の子なんだよ。何でも男を基準にされちゃ困るよ。男同士で殴り合うのは別に構わないよ? でも、か弱い女の子は、男にスキルを使ってもいい……いや、使うことで新しいルールを作るよ」
「なんだこの女!? 頭おかしいんじゃないか!?」


 リサの異常性を感じ取ったチンピラたちは、捨て台詞を吐きながらギルドを出ていく……。
 ブレないリサが、その背中にまたスキルを使おうとしたとき、流石に周囲の冒険者たちになだめられた。


「王都のギルドは感じ悪いね。人間だとか獣人だとかくだらない。それを指摘しない人たちもクソだよ」
「まぁまぁ、落ち着けって。あいつらは極端きょくたんなだけだ。ヒューバン王国の出身だろう……人間至上主義にんげんしじょうしゅぎってやつさ。関わるのはやめときな」
「ふーん? そっか、あいつらに近寄りたくないから、席が空いてたんだね」
「まぁ、そういうことだ。俺たちはあんたらを歓迎するぜ」


 また正常な活気に包まれたギルドだが、リサは危機感を募らせていた。
 殺すつもりで使ったスキルを受けても彼らは死ななかった。

 王都の冒険者と、自分たちには実力差がある。
 キャンキャン吠えるだけの犬になるつもりはない。

 揉め事を潰し、いざ始まれば相手を潰す力が必要だ。
 でも強いだけじゃだめ。かわいくてエッチじゃないといけない♡
 そう考えたリサは、冒険より先に、新たな奴隷オナペットを探すと決めた♡
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