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第五話 鈴蘭
しおりを挟む「てめえら、俺・・・・葉月に手を出して、覚悟出来てんだろうな?」
「今『俺の』って、言いかけましたね」
「黙れ。紅葉」
すかさず、紅葉がツッコミをいれるがそれは最早、葉月には届いてはいない。
「て、てめえらっ!!やんのかっ!!?」
「やってやんよ。来な」
「やれやれ、本当にこの子は困った子ですね。喧嘩っ早い・・・ちょっとは、話し合いで解決しようとか思わないのですか?」
「ンだよっ!!紅葉はどっちの味方なんだよ!!」
「僕は、いつでも自分の味方ですよ」
そんな言い合いをしながらも、葉月に酷いことをした妖たちを殴り飛ばしていく鞍馬。
「こんなもんかよっ」
はっ!!と、何人か積み上がった気絶した妖たちを足蹴にする。
「足を下ろしなさい。みっともないですよ」
「弱そうなヤツから叩き伏せろっ!!!」
リーダーと思われる妖が、紅葉に突っ込むが紅葉は笑顔で振り下ろされた腕を片手で掴み、いつも笑顔を絶やさない彼が妖を睨みつけた。
「か弱い女性に手を出すのは、良くないですね」
「て、てめえら・・・まさか、妖眼者っ!?!」
紅葉の瞳の色を見て、男は腰を抜かしそのまま脱兎のごとく逃げて行った。
「ようがんしゃ??」
葉月は、思わず妖が最後に言った言葉を口に出した。しかし、聞いたことのない単語に首を傾げた。
「妖眼者っていうのは、アンタらみたいな碧色の瞳を持った人間のことをいうのさ」
パンパンっ。と、着物に付いた砂ホコリを払いながらそう説明する女性。
「あ、怪我は大丈夫?」
葉月が、そう尋ねると女性は閉じていた瞼を開いた。
それは、恐ろしい程に美しい真紅の瞳。
女性は、キッと葉月を睨みつける。
「いつまでも、人の顔見てるんじゃないよっ!!」
「あ、ごめんなさいっ!!素敵な瞳の色だなって・・・」
「アンタ、助けてもらっておいてその言い方はねえんじゃねえのか?」
「鞍馬っ!!良いからっ」
「誰が助けてくれなんて言ったのさ。厚かましいっ」
「ンだとっ!!?」
「鞍馬ってば!!」
遠くの方で会話を見ていた紅葉は、彼女に何かを感じた。
「ふん、じゃあね」
「え、どこへ行くの?」
葉月の問いに、寂しそうに震え声で、しかし強がって答える女性。
「そんなの私なんかが帰る場所なんて一つしかないだろ?」
「それって・・・」
「良いのさ。別に、ちょっと、今夜は月が見たくなっただけだから・・・檻の中は、月が見えないからね」
「アナタの名前は?」
「・・・鈴蘭」
「私は、葉月!!鈴蘭さんっ!!また会えるよね?」
「さぁね」
そのまま彼女は、夜の闇へと消えていった。
「ンだよ・・・あの無愛想なヤツ」
「決めた・・・」
「なにを?」
「私、鈴蘭さんを救う」
「はぁ!?」
こうして、彼女たちは現実世界へと帰っていく。その話しを聞いていた人物がもう一人いたのは、誰も知らない。
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