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第9話 ほんの少し素直な、メイドのサラ①

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 僕たちは全員揃って呆気に取られていた。しかし、すぐに気を取り直し、階下のフロアにて作戦会議を始める。

「どうしましょう……?」

「どうするも何も、倒すしかないんじゃないかな?逃げるにも全員は無理だと思う。」

「そうよね……。だけど、どうやって?」

「うーん……、またさっきみたいに飛びかかられたら厄介だしなぁ……。」

 全員で頭を悩ませていると、

「──おい、そろそろ喋ってもいいか。」

「イグナイトスティール!!」

 おしゃべりな筈のイグナイトスティールがずっと黙っていたと思ったら、突然喋りだした。まあ僕が黙っててって言ったんだけど。

「「剣が喋った!?」」

 ゾフィーとエリザベートが目をまんまるにしてこちらを見ている。

「そ、それひょっとして、もしかして……。
 建国の英雄騎士様の?」

「うん、イグナイトスティールだよ。
 お祖父様に譲ってもらったんだ。」

「──建国の英雄騎士?」
 アリシアが不思議そうにしている。

「アリシア、建国の英雄騎士である、フェルディナンド・スワロスウェイカー様をご存知ないの?」

「この国に住んでいれば、大人も子どもも、みんな知っている方よ?」

「ひ、引っ越してきたばかりなんで……。」
 アリシアは焦ったように言った。

「話続けていいか。」

「あ、うん。」

「──ありゃキングメタルスライムだ。
 今のお前たちには、どうあがいたってむりだぜ。経験値こそ高いが、防御とHPが桁違いな上に、回避率まで異常ときた。
 まともにゃ攻撃が当たらねえよ。」

「そ、そんな……。
 じゃあどうしたら……。」

「──言ったろ?お前たちには無理だ、と。
 だが、この俺は違う。」

「倒せるの!?」
 僕は自信満々に言うイグナイトスティールに目をみはる。

「倒せるが、お前1人を操るだけならなんとかなるが、あいつの動きに巻き込まれたら、そこの嬢ちゃんたち、おっ死ぬぜ。」

「──わ、私たちが、ここに隠れていればいいってこと?」

「でも、マクシミリアン1人で本当に戦わせるの?いくら伝説の武器だからって……。」

「私にも手伝わせてくださいな!イグナイトスティール様!」

 突如セクシーな声がする。アリシアの武器のストームホルトだ。

「アリシアの武器もしゃべるの!?」

「はい!イスラファンさんに作っていただいたんです!」

 嬉しそうに言うアリシアに、再び呆然とするバイエルン姉妹。

「私たち2人なら、必ず倒せますわ!」

「……ふうん、お前、何が使える。」

「サポートのための霧も出せましてよ?」

「めくらましか。いいな。分かった。
 今回はお前にも手伝ってもらおう。」

「僕たちは、どうすればいいんだ?」
 僕はイグナイトスティールに尋ねた。

「私がめくらましの霧を発生させます。
 こちらからは見えて、向こうからは見えない霧です。その隙に同時に会心の一撃を放てば、倒せるかと。」
 ストームホルトも自信満々に言う。

「……いっそのこと、その隙に、ゾフィーとエリザベートの2人だけでも、地上に逃げられるか試してみる?」

「それじゃあなたたちが危険だわ!」

「そうよ、反対だわ!」

 ゾフィーとエリザベートは納得してくれなかった。気持ちは分かるけど、ここにいても2人とも助からないかも知れないからね。

「うん。まあ、失敗すれば、僕だけじゃなくてみんなも死ぬかもしれないから、僕たちだけで戦うなんて、本当なら、できればやりたくないけれど……。
 最悪2人が地上まで逃げて、騎士団を呼んできてくれれば、万が一僕らがやられても、助けが間に合うかも知れないでしょ?」

「……失敗した時のリスクが高いなら、やるべきじゃないんじゃないかしら。」

「私もその方がいいと思うわ。」

「ここにこのままいたら、全員死ぬかも知れない。でも向こうから見えないなら、2人はうまく逃げられるかも知れない。
 どうするか、みんなで決めよう。」

 ゾフィーとエリザベートは、顔を見合わせてお互いに逡巡していた。

「……わかったわ。
 絶対助けを呼んでくる。」

「ええ。」

 2人が力強く返事をする。

「だいじょうぶですよ!
 ストームホルトがたいじょうぶって言った時は、絶対にだいじょうぶなんですから!」
 アリシアが明るく言った。

「じゃあ、作戦を伝えるよ。
 こっちに来て貰えるかな?」
 みんなが僕のそばに集まる。

「まず、ストームホルトが、霧でキングメタルスライムの視界を奪う。
 その隙に、ゾフィーとエリザベートは、階段を抜けて地上に逃げて。
 出口の前を塞いでるから、通り辛いと思うけど、気付かれないように、キングメタルスライムの体に触れないようにしてね。
 2人が逃げたのを確認したら、僕とアリシアでキングメタルスライムを攻撃する。
 うまくすれば全員助かるよ。
 ──いいね?」

「──お前がやんのか。」

「すみません、お願いします。」
 僕はイグナイトスティールに頭を下げた。

 僕たちはキングメタルスライムのいる上階に向かう、階段のギリギリはじっこに身を寄せ合い、様子を窺った。ここまではキングメタルスライムもやってこない。

「じゃあ、行くよ……。」

「──優しい妖精の霧カインドピクシーミスト!!」

 ストームホルトの魔法が、辺り一帯を緑色の霧のようなもので覆った。

「これは……」

「すごい魔力ね……」

 作られたばかりで、まだイグナイトスティールほどじゃないにしても、さすがはイスラファン作の意思を持つ喋る武器だ。

「準備はいい?……3、2、1、0!!」

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