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第4話 聖騎士候補と賢者候補②

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 ──次の日、僕は朝食を食べて身支度を整え、防具を身に着けて、イグナイトスティールを腰に携える。

 アリシアの防具を注文したあとで、またダンジョンにこもるつもりなのだ。
 昨日はスクロールも謎の液体も全部ハズレだったし、早くまた新しいのをドロップしなくては。

 僕が待ち合わせ場所の中央広場の大木の前についた時、アリシアはまだ待ち合わせ場所にいなかった。

 早く来すぎたかな?
 まあ、買い物が終わってもダンジョンに行く時間はじゅうぶんあるし、のんびり待つとするか。

 そう思って、待ち合わせ場所に立っている僕に、すぐ横に立っていた女の子が近付いて来て、クイッと袖を引っ張ってきた。

 なんだろうと思って振り返ると、可愛らしいワンピースを着た女の子が、上目遣いに、にくらしげに僕を睨んでいる。

「……気付かないなんて、酷いです。」

「ア、アリシア!?」

 昨夜とはうってかわって、髪の毛を可愛らしく編み込んでいて、ウエストが絞られているせいで、豊満な胸元が強調されている。

 か……、かわいい!!

「ご、ごめん!あの、その……。
 可愛すぎて、誰かわかんなかった……。」

 僕は正直に、慌ててそう言ってしまった。
 アリシアはポッと頬を染めて、

「なら、許します。」
 と言った。

 女の子って、髪型や服装ひとつで、こうも変わるもんなんだなあ……。
 元気で素朴な感じの女の子だと思っていたのに、今日は妙におしとやかな感じだ。

「おすすめの防具屋さんに、連れて行ってくれるんですよね?」

「う、うん。そこの店長さんは、腕がいいだけじゃなくて、採寸しなくても体型に合った防具を作れる人でね。
 女性騎士に凄く人気なんだよ。」

「そうなんですね!
 採寸がないのは、ありがたいです。
 前の防具を作った時、ベタベタ触られて嫌だったので……。」

 こんなに可愛い女の子だもんなあ。
 隙あらば触ってやろうと思っている男たちからしたら、採寸なんて絶好のチャンスだろうからな。

「うん、だから安心してね。
 ──あ、ここだよ。」

 僕はアリシアの前を歩いて、コックス防具店の扉を押して中に入った。
 中には既にお客さんがいた。

 一人は普通のポニーテール、一人は三編みポニーテールの、ツリ目の双子だ。どっちもめちゃくちゃ可愛かった。

 あれ?ひょっとして、この2人って……。

「ではバイエルン様、こちらが控えとなりますので、3日後以降に再度当店にいらしてください。」

 やっぱりだ!ゾフィー・バイエルンと、エリザベート・バイエルン姉妹だ!
 噂以上に可愛いなあ!
 あと、……おっきいなあ、胸元が。

 2人も採寸しなくていいって噂を聞いて、防具を作りに来たのかな?
 そんなことを考えながら、じっと2人を見ていると、普通のポニーテールのほうと目が合ってしまった。

「──何?」

 ジロリと睨まれる。初対面の女の子をジロジロ眺めちゃうなんて、失礼だったな。

「あ、ご、ごめんね!
 僕はマクシミリアン・スワロスウェイカーで、こっちの彼女は──」

「アリシア・スコットです。
 マジェスティアラン学園に入学予定です、よろしくおねがいします。」

「そうなの?私たちもなのよ!」

 屈託のない笑顔で、三編みポニーテールのほうが、アリシアに笑いかけてくれる。

「私はゾフィー・バイエルンよ。」
「私はエリザベート・バイエルン。
 私のほうが妹よ。」

 三編みポニーテールのほうがゾフィーで、普通のポニーテールのほうがエリザベートか。よく似てるけど、ゾフィーのほうが少し優しそうな感じがするな。

「あなたも防具を作りに来たの?」
 ゾフィーが笑顔でアリシアに話しかける。

「はい、一度作ったんですけど、サイズが合わなくなってしまったのと、昨日ダンジョンで駄目にしてしまって……。
 そしたら、マクシミリアンが、ここの防具屋さんを紹介してくれたんです。」

「そうだったの、私たちも昔作ったやつが合わなくなってしまって。
 それで作りに来たのよ。」
 エリザベートが言う。

 成長著しい年齢だものなあ。
 色々と。

「あなたは……、スワロスウェイカーってことは、建国の英雄騎士の……?」
 ゾフィーが初めて僕を見る。

「あ、うん、祖父です。
 で、でも、僕はあんまり大した存在じゃないから、期待しないでね?」

「そんなこと言って、お父様も騎士団長でしょう?凄いじゃない。」

「建国の、英雄騎士……?騎士団長?
 マクシミリアンって、なんか凄い人と親戚なんだね?」

「あなた、フェルディナンド・スワロスウェイカー様をご存知でないの?」
 ゾフィーが驚いた顔をする。

「私の家族は、移民だから、この国の歴史とか、まだそんなに詳しくなくて……。」

「この国で最も有名な方よ。
 彼はその方のお孫さんなの。」

「エリザベート。」

「あ、そうね。」

 僕を目の前で、彼、と呼んだことを、エリザベートがゾフィーにたしなめられる。

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