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第114話 馬車工房長たちとの話し合い
しおりを挟む馬車工房長たちはゴムタイヤをいじくり回すと目を丸くした。
「これは……!!衝撃吸収出来る車輪か!」
「樹脂を加工して新たな車輪を開発しているとは聞いていたが、ついに完成したんだな!
こいつは本当に素晴らしいぞ!!」
「やったな!リーフレット君!!」
後ろに立ってる男性陣──ヤーナさん、ミオールさん、トックさん──が口々にゴムタイヤの出来を褒めはやした。
リーフレットさんは嬉しそうに頭をかいて照れくさそうに笑った。こういう表情はアンデオールさんにソックリだな。
「──このゴムタイヤと、スプリングを使った革新的な馬車を、100台作りてえって依頼が、このジョージさんからきてるんだ。
スプリングはジョージさんが開発したもんで、馬車の衝撃吸収をする部品さ。」
そう言われて、改めて馬車工房長たちはスプリングを押したりしてみている。
……いや、俺は開発はしてないぞ。
だが今はそういうことにしておいたほうがいいんだろうな。
「なんと丈夫な……。これを座席の下にかまそうというんだな?確かに、これとゴムタイヤの衝撃吸収が加われば、長時間の移動が快適な馬車が作れるぞ!!」
「ゼファーとスーレイの気持ちは分かる。
長年ライバルだった相手と手を組むなんてのは、下を納得させるのが難しいだろう。
だがこのデカい仕事を、工房長として断りたくはないだろう?
それにこのゴムタイヤとスプリングを使った、革新的な馬車を最初に作った工房として名が残せるんだぜ?職人の血が騒がねえか?
見たいだろう?この先お前たちの作る馬車が、──この国の主流になる姿を。」
馬車工房長たちは、一斉にゴクリとつばを飲み込んだ。
「それは……、この国すべての馬車工房の、いや、……世界のすべての職人の夢だ。」
「ああ……。」
ゼファーさんとスーレイさんがうなる。
「デザインと図面はすべて同じにする必要があるから、お前さんたちにゃあ協力して貰わにゃならん。これに参加したくない奴は手を上げろ。他の馬車工房を探さにゃならん。」
──誰も手を上げなかった。アンデオールさんは腕組みしながらニヤリと笑うと、
「さっそく始めようじゃねえか。
6日後までに最初に各工房4台、12日後に更に8台、残り12日後に更に8台だ。
うちもそれに合わせてゴムタイヤを作って納品する予定だ。」
アンデオールさんの言葉に全員がうなずいた。馬車工房長さんたちは、帰ろうと立ち上がりながら、早速打ち合わせを開始した。
「図面は俺のところに集まるのでいいか?」
「ああ、悔しいがあんたのところにはサンズがいるからな、サンズに中心になって貰うのがいいだろう。」
ゼファーさんの言葉にトックさんがそう言い、みんなが同調する。
「いい機会だ、通常依頼の馬車は、新人たちを中心に回してみるか。あいつらも腕を上げてきたことだしな。」
スーレイさんがそう言った。
「ミルファーはうちに来る予定だったのに、横取りしやがってまったく!」
「ミルファーが俺の腕に惚れ込んじまったんだから、しょうがねえだろう。」
ゼファーさんの言葉に、スーレイさんがニヤリとしながら笑う。
「うちのレニーだってなかなかのもんだぜ?
今回の仕事に加えてやるつもりだ。」
「ああ、聞いてるよ、跡継ぎとして考えてるんだってな。いい子が入ったもんだ。それに比べてうちのガリアーノときたら……。」
「覚えは悪いが真面目なんだろう?酔うとすぐに息子自慢を始めるくせによく言うぜ。」
「うるせえ。」
ヤーナさん、ミオールさん、トックさんたちが、ワイワイと楽しそうに帰って行く。
「職人なんてなあ、気難しい奴らばっかりだが、本当に仕事が好きな奴らばっかりさ。
仕事に真剣だからこそ、反発もするし喧嘩もするってもんだ。そうだろう?」
アンデオールさんがリーフレットさんを見て、ニヤリと笑ったのだった。
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