359 / 443
第110話 生活魔法使いの高度な技術①
しおりを挟む
後日改めてバンカ茶のブレンドティーの相談をするとして、まずはアスターさんたちに冒険者を一定人数集めて貰うことにした。
明日から探すことになり、今日は前祝いで飲もうと誘われたのだが、俺はまだ用事があったので、残念ながら断わった。
俺は馬車でルピラス商会に立ち寄って、エドモンドさんからとあるものを預かった。
更に馬車で移動をし、ヴァッシュさんの工房に立ち寄ると、ミスティさんに頼んであった記録用の魔道具を受け取った。クリーニング用の魔道具も、もうすぐ出来るそうだ。
俺はその足で、馬車で排水回収業者さんたちのところへと向かった。
排水回収業者をしているメッペンさんの住まいは、人里離れた森の中にあった。
広い土地だが、開けた部分以外は木しかなく、メッペンさんはその開けた部分に、住居兼作業場をこしらえて暮らしていた。開けた部分は日当たりもよく、条件もいい。
木の根が地中のすみずみまで張り巡らされており、開墾しようにも木の根を切らないとならず、万が一それで倒れて来られても困る為に、畑も作れないでいるのだという。
だが地盤は平らで根っこは見えずかなりしっかりしている。これならだいじょうぶそうだな、と思い、あるものをその場に出した後で、俺はメッペンさんの家のドアを叩いた。
「──はい。ああ、ジョージさんか。
……?あんた1人か?
工事業者はいないのか?
クリーニングの作業場を建てるってことだったが……。」
「はい。もう建ててますよ。」
「え?何言ってんだ?
あ、ああ、既に現場に向かってるのか?」
「こちらにいらしていただけますか?」
俺がキョトンとしているメッペンさんを家の外に誘導しようとすると、家の奥から義弟のエムスラントさんが顔を覗かせた。
メッペンさんの妹婿で、妹さんは今は出産の為に里帰りしているのだそうだ。この2人と従業員で、排水回収業者をやっている。
俺は家の近くの開けた場所まで、メッペンさんとエムスラントさんを案内した。
「な……、なんだ!?こりゃあ……。」
「家!?家が建っているぞ!?
おまけになんだ、家の下に、車輪?
車輪だよな?これ。なんでこんなもの。」
「トレーラーハウスというものです。
引っ張って移動可能な建物なんですよ。」
俺はこの場所にトレーラーハウスを出してあったのだ。トレーラーハウスとは、キャンピングカーと違い、車輪が付いていて、自動車で牽引できる住まいのことだ。トレーラーハウスという言葉自体は和製英語で、英語ではモービル・ホーム、トレーラー、ハウス・トレーラー、トレーラー・ホーム、スタティック・キャラバンなどと呼称されている。
キャンピングカーは、車の中にベッドやキッチン、トイレまで取り付けられた、かなり大きめの車のことを指す。一般的な車と同様に、エンジンを搭載して公道を走ることを目的に作られているものだ。
だが給排水の設備は家と同じようにというわけにはいかず、車に取り付けた付属のタンクを使用する為、定期的にタンクに水を入れたり、トイレの汚物処理が必須になる。
一方、トレーラーハウスとは、トレーラーハウスそのものが自走するのではなく、タイヤのついたシャーシ上に、小さい家のような建物が乗っているものだ。移動のためには車によって牽引する必要があるということが、キャンピングカーと大きく異なる点になる。
トレーラーハウスも移動できるが、牽引には高度な技術が必要で、通常、運搬のプロに依頼することになり、車のように自分で運転して、好きなときに運べるわけではないのが難点だ。距離にもよるが、少なくとも数十万の運搬費用がかかる。
さらに交通量の多い昼間は運搬できず、夜間に運搬するなどいくつかの制約があり、道路が狭かったり大きな石などの障害物があると運ぶことすら出来ない。
基本的に住宅や店舗として、定住することを目的に作られていて、最近ではトレーラーハウスホテルなんかも人気となっている。
移動を目的とするのであれば、公道を普通車のように走ることができ、簡単に場所を移動できるので、身軽に移動したいという人にはキャンピングカーが向いている。
だが今回は置きっぱなしだからな。トレーラーハウスの方が用途が合うと思えた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
明日から探すことになり、今日は前祝いで飲もうと誘われたのだが、俺はまだ用事があったので、残念ながら断わった。
俺は馬車でルピラス商会に立ち寄って、エドモンドさんからとあるものを預かった。
更に馬車で移動をし、ヴァッシュさんの工房に立ち寄ると、ミスティさんに頼んであった記録用の魔道具を受け取った。クリーニング用の魔道具も、もうすぐ出来るそうだ。
俺はその足で、馬車で排水回収業者さんたちのところへと向かった。
排水回収業者をしているメッペンさんの住まいは、人里離れた森の中にあった。
広い土地だが、開けた部分以外は木しかなく、メッペンさんはその開けた部分に、住居兼作業場をこしらえて暮らしていた。開けた部分は日当たりもよく、条件もいい。
木の根が地中のすみずみまで張り巡らされており、開墾しようにも木の根を切らないとならず、万が一それで倒れて来られても困る為に、畑も作れないでいるのだという。
だが地盤は平らで根っこは見えずかなりしっかりしている。これならだいじょうぶそうだな、と思い、あるものをその場に出した後で、俺はメッペンさんの家のドアを叩いた。
「──はい。ああ、ジョージさんか。
……?あんた1人か?
工事業者はいないのか?
クリーニングの作業場を建てるってことだったが……。」
「はい。もう建ててますよ。」
「え?何言ってんだ?
あ、ああ、既に現場に向かってるのか?」
「こちらにいらしていただけますか?」
俺がキョトンとしているメッペンさんを家の外に誘導しようとすると、家の奥から義弟のエムスラントさんが顔を覗かせた。
メッペンさんの妹婿で、妹さんは今は出産の為に里帰りしているのだそうだ。この2人と従業員で、排水回収業者をやっている。
俺は家の近くの開けた場所まで、メッペンさんとエムスラントさんを案内した。
「な……、なんだ!?こりゃあ……。」
「家!?家が建っているぞ!?
おまけになんだ、家の下に、車輪?
車輪だよな?これ。なんでこんなもの。」
「トレーラーハウスというものです。
引っ張って移動可能な建物なんですよ。」
俺はこの場所にトレーラーハウスを出してあったのだ。トレーラーハウスとは、キャンピングカーと違い、車輪が付いていて、自動車で牽引できる住まいのことだ。トレーラーハウスという言葉自体は和製英語で、英語ではモービル・ホーム、トレーラー、ハウス・トレーラー、トレーラー・ホーム、スタティック・キャラバンなどと呼称されている。
キャンピングカーは、車の中にベッドやキッチン、トイレまで取り付けられた、かなり大きめの車のことを指す。一般的な車と同様に、エンジンを搭載して公道を走ることを目的に作られているものだ。
だが給排水の設備は家と同じようにというわけにはいかず、車に取り付けた付属のタンクを使用する為、定期的にタンクに水を入れたり、トイレの汚物処理が必須になる。
一方、トレーラーハウスとは、トレーラーハウスそのものが自走するのではなく、タイヤのついたシャーシ上に、小さい家のような建物が乗っているものだ。移動のためには車によって牽引する必要があるということが、キャンピングカーと大きく異なる点になる。
トレーラーハウスも移動できるが、牽引には高度な技術が必要で、通常、運搬のプロに依頼することになり、車のように自分で運転して、好きなときに運べるわけではないのが難点だ。距離にもよるが、少なくとも数十万の運搬費用がかかる。
さらに交通量の多い昼間は運搬できず、夜間に運搬するなどいくつかの制約があり、道路が狭かったり大きな石などの障害物があると運ぶことすら出来ない。
基本的に住宅や店舗として、定住することを目的に作られていて、最近ではトレーラーハウスホテルなんかも人気となっている。
移動を目的とするのであれば、公道を普通車のように走ることができ、簡単に場所を移動できるので、身軽に移動したいという人にはキャンピングカーが向いている。
だが今回は置きっぱなしだからな。トレーラーハウスの方が用途が合うと思えた。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
108
お気に入りに追加
1,847
あなたにおすすめの小説
隠された第四皇女
山田ランチ
ファンタジー
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
異世界は流されるままに
椎井瑛弥
ファンタジー
貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。
日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。
しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。
これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる