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第108話 Bランク冒険者のブレンドティー作成計画③

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「──インダー!俺だ!アスターだ!」
 インダーさんの家の前で、アスターさんがドアを叩いて声を張り上げる。
 インダーさんの家は、ラグナス村長の村から少し離れた森の近くの村の1つだった。
 ラグナス村長の村と比べると、家が建っている場所にはあまり日が当たらず、野菜を育てている敷地も家も、だいぶ少なかった。

 だが全体の敷地面積だけは広くて、どうやら野菜よりも他の植物を育てているようだった。これを食べるか、出荷しているのかな?
 家や野菜畑よりも、その植物のはえている面積のほうが広かった。というか、見たことがあるな、これ。上に向けて逆立つホウキが広がったような形。俺は触って食材の名前を確認しようとしたが、アスターさんに、行くぞジョージ、と声をかけられて諦めた。

「アスター、急にどうし……、ジョージじゃないか!久しぶりだなあ!」
「お久しぶりです、インダーさん。」
「まあ入ってくれ。何もないが。
 お茶くらい出そう。」
 そう言って、インダーさんは家にあげてくれると、テーブルの上にお茶を置いた。

〈パーナ茶〉
 パーナ大麦を強火で常にかき混ぜながら、焙煎したものを煮出したお茶。
 味は麦茶に似ている。
〈パーナ大麦〉
 アッサー科の穀物。大麦と同じ。
 大麦は大麦なんだな。
 というか、麦茶って……。

「アスターさん、これ、バンカ茶にブレンドするのにいいって言っていた、大麦を使ったお茶ですね。パーナ大麦だそうです。」
「え?なら、インダーのところと一緒に商売が出来るってことか?」
「──なんの話だ?」

 話の見えないインダーさんが首を傾げる。
 インダーさんに聞かれたアスターさんが、バンカ茶のブレンドティーの説明をする。
「確かに、それなら売れそうだな。」
 インダーさんが考え込むようにしてから、顎に指を当ててうなずく。

 コーヒーもあったことだし、オリーブオイルやマヨネーズに似たようなものもあった。
 ひょっとしたら他にも似たような植物があったりしないのかな?俺はブレンドティーに使う材料の現物を出してみることにした。
「これらと同じような植物を、どこかで見かけたことはありませんか?」

「ジョージはなんだって、そんなものをいつも持ち歩いているんだ?」
 アスターさんが不思議そうに首を傾げる。
「いや、まあ、ちょっと……。」
 持ち歩いているんじゃなく、今まさに能力で出しただけだからな。マジックバッグから出したかのように見せているだけで。

「そうだなあ……。
 あ、これだ!この花は、ザキのところに自生してるやつじゃなかったか?確かパッサカ茶ってやつの元になってた花だ。」
「そうだったか?」
「覚えてないのかい?」
「花の名前はさすがになあ……。」
 アスターさんが首をひねっている。タンポポに似た花がザキさんのところにあるのか。

「あ、これは分かるぜ!
 確かマジオのところで見た、雑草の実が中に詰まってるやつだろ?かなり変わった形だったから覚えてるぜ!」
 アスターさんが細長い、インゲンが茶色く乾燥したような植物を手に取って言う。
 ハブ茶の元になるエビスグサは、雑草くらい強い植物ではあるが、別に雑草そのものではないんだがな……。

「マジオがマッカク茶だって言って出して来た、マッカク草の実のお茶だよな、確かに覚えてる。そんな形だった気がするな。」
 インダーさんがうなずいている。
 もしも記憶が確かなら、タンポポとハブ茶はあるってことか。それならかなりいい感じに、こちらの材料でブレンド出来そうだな。

 それにアスターさんのパーティーメンバーの住んでいるところの近くに自生してるのなら、うまくいけばラグナス村長の村だけでなく、インダーさんや、ザキさん、マジオさんの村にも、新しい産業が作れるかも知れないな。大麦はそのまま食べられるし売ることも出来るが、6次産業というやつだな。

「待てよ……。これもどっかで見た気がしているんだ。アスター、覚えてないか?」
「見たような気もするが……。どこだったっけなあ?サッパリ思い出せん……。」
「なんとか思い出すんだ。お前や俺のところの村が、潤うかどうかの瀬戸際なんだ。」

 アスターさんとインダーさんの2人は、俺の出したブレンドティーの原料を前にして、記憶を呼び起こそうと、うんうんと唸っている。なにも別にしっかり全部をブレンドしなくても、アスターさんのパーティーメンバーの村にあるものだけでも、かなりいいブレンドになりそうなんだがな。

「あの、というか、実は今日はその為に来たのでは……。インダーさんにお願いしたいことがありまして。……インダーさん?」
「駄目だ、やっぱり分からん!」
「諦めるな!俺たちは冒険者だ!
 今までも知識を元に戦って来たんだ!」
 すっかり夢中になってしまった2人には、どうやら俺の声が届いていないようだった。

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