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第103話 貴族街でのイベント提案④
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俺はカイアと、イッチニ、イッチニ、と歩く練習をしたのだった。
しばらくそうしていると、誰かが慌ただしく家のドアをノックする音に気が付いた。
「──俺だ!ジョージ!証明してくれ!」
……エドモンドさんだ。事前の訪問連絡と許可が必要だと、手紙に書いておいたんだがな。焦って飛んで来たのだろう。
コボルトのアシュリーさんとララさんも、今はまだ人目に触れないほうがいいので、2階に通じる階段に隠れて貰い、カイアたちには庭でじっとしてて貰うことにして、俺はドアをあけた。俺の手紙を握りしめたエドモンドさんが、焦ったような、だが嬉しそうな表情で、目を輝かせて俺を見る。
「俺の商売の協力者で、ルピラス商会の副長であるエドモンドさんで間違いありません。
中にお通ししますね。」
「ルピラス商会は存じておりますし、お姿は何度も拝見しております。ジョスラン侍従長に取り次がせていただいたこともありますから、エドモンドさんのことは分かりますが、次からは必ず許可をお取りくださいね。」
兵士長らしき人から、エドモンドさんが絞られている。頭をかきながらエドモンドさんが家の中に入ってくると、
「やあ、すまない。デカい取り引きになるとふんで、さっそく飛んできたんだ。凄くいい家じゃあないか!ジョージ!」
「だと思いましたよ。どうぞ。」
「久しぶりね!エドモンド。」
「お久しぶりです。」
「やあ、アシュリーさん、ララさん、今日もお美しい。……ええと、こちらの方は……。」
エドモンドさんが、まばたきも忘れて、ほうけたように円璃花の姿に見惚れている。そういえば、円璃花が王宮に来た時も、そのままメイベル王太后のところに行ったから、エドモンドさんとは初対面だったか。
「これが、噂の聖女様です。
しばらく俺のところで預かることになったと王宮で話していたのを、エドモンドさんも聞いてらっしゃいましたよね?それにルピラス商会の商会長と副長だけには、王宮からの伝令でも伝えてあると伺っていましたが。」
「あ、ああ。話にだけはな。なにかあった時に色々頼むこともあるだろうと。それにしても伝説通りだ……。とてもお美しい……。」
聖女様は代々美人なのかな?
「エリカ・トーマスです。はじめまして。」
円璃花がエドモンドさんにカーテシーで挨拶をする。エドモンドさんは緊張したようにエドモンド・ルーファスです、と挨拶を返した。俺は外から来たエドモンドさんの為に、冷やしておいたオンバ茶を出した。
「うん!冷たいのもいいな!」
出さないのもなんなので、テーブルについた円璃花とアシュリーさんたちにも、冷たいオンバ茶を出したのだが、
「あら?これ、王宮で飲んだのと同じ?」
と円璃花が首をかしげている。
普段はあたたかくして飲んでいるのだが、あの日王宮で出たオンバ茶は冷たかったから同じものだと思っていなかったらしい。
確かに冷たいと少し味が変わるんだよな。
「これも同じオンバ茶だぞ。セレス様は冷たいほうがお好きだから、王宮では冷たくして出したんだろう。メイベル王太后が言っていた、若返りのお茶が、普段お前が飲んでるオンバ茶だよ。セレス様が俺から仕入れた、コボルトの若返りのお茶だと言ってただろ?」
「そう言えば……。」
円璃花が、あの時の会話を思い出しながら首をひねった。
「それで、ウォーターガイドってのは、どんなやつだ?さっそく見せてくれないか?」
一気にオンバ茶を飲み干したエドモンドさんが、目を輝かせて俺に前のめりに言ってくる。俺は苦笑しながら、
「流しにあります。」
立ち上がってエドモンドさんを流しに誘導した。エドモンドさんは蛇口をひねって水の出方を確認すると、嬉しそうに、
「こいつはいい!子どものいる家庭が全部欲しがるやつじゃないか!相変わらずジョージは凄いものを用意するなあ!」
と、手を洗っている。
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しばらくそうしていると、誰かが慌ただしく家のドアをノックする音に気が付いた。
「──俺だ!ジョージ!証明してくれ!」
……エドモンドさんだ。事前の訪問連絡と許可が必要だと、手紙に書いておいたんだがな。焦って飛んで来たのだろう。
コボルトのアシュリーさんとララさんも、今はまだ人目に触れないほうがいいので、2階に通じる階段に隠れて貰い、カイアたちには庭でじっとしてて貰うことにして、俺はドアをあけた。俺の手紙を握りしめたエドモンドさんが、焦ったような、だが嬉しそうな表情で、目を輝かせて俺を見る。
「俺の商売の協力者で、ルピラス商会の副長であるエドモンドさんで間違いありません。
中にお通ししますね。」
「ルピラス商会は存じておりますし、お姿は何度も拝見しております。ジョスラン侍従長に取り次がせていただいたこともありますから、エドモンドさんのことは分かりますが、次からは必ず許可をお取りくださいね。」
兵士長らしき人から、エドモンドさんが絞られている。頭をかきながらエドモンドさんが家の中に入ってくると、
「やあ、すまない。デカい取り引きになるとふんで、さっそく飛んできたんだ。凄くいい家じゃあないか!ジョージ!」
「だと思いましたよ。どうぞ。」
「久しぶりね!エドモンド。」
「お久しぶりです。」
「やあ、アシュリーさん、ララさん、今日もお美しい。……ええと、こちらの方は……。」
エドモンドさんが、まばたきも忘れて、ほうけたように円璃花の姿に見惚れている。そういえば、円璃花が王宮に来た時も、そのままメイベル王太后のところに行ったから、エドモンドさんとは初対面だったか。
「これが、噂の聖女様です。
しばらく俺のところで預かることになったと王宮で話していたのを、エドモンドさんも聞いてらっしゃいましたよね?それにルピラス商会の商会長と副長だけには、王宮からの伝令でも伝えてあると伺っていましたが。」
「あ、ああ。話にだけはな。なにかあった時に色々頼むこともあるだろうと。それにしても伝説通りだ……。とてもお美しい……。」
聖女様は代々美人なのかな?
「エリカ・トーマスです。はじめまして。」
円璃花がエドモンドさんにカーテシーで挨拶をする。エドモンドさんは緊張したようにエドモンド・ルーファスです、と挨拶を返した。俺は外から来たエドモンドさんの為に、冷やしておいたオンバ茶を出した。
「うん!冷たいのもいいな!」
出さないのもなんなので、テーブルについた円璃花とアシュリーさんたちにも、冷たいオンバ茶を出したのだが、
「あら?これ、王宮で飲んだのと同じ?」
と円璃花が首をかしげている。
普段はあたたかくして飲んでいるのだが、あの日王宮で出たオンバ茶は冷たかったから同じものだと思っていなかったらしい。
確かに冷たいと少し味が変わるんだよな。
「これも同じオンバ茶だぞ。セレス様は冷たいほうがお好きだから、王宮では冷たくして出したんだろう。メイベル王太后が言っていた、若返りのお茶が、普段お前が飲んでるオンバ茶だよ。セレス様が俺から仕入れた、コボルトの若返りのお茶だと言ってただろ?」
「そう言えば……。」
円璃花が、あの時の会話を思い出しながら首をひねった。
「それで、ウォーターガイドってのは、どんなやつだ?さっそく見せてくれないか?」
一気にオンバ茶を飲み干したエドモンドさんが、目を輝かせて俺に前のめりに言ってくる。俺は苦笑しながら、
「流しにあります。」
立ち上がってエドモンドさんを流しに誘導した。エドモンドさんは蛇口をひねって水の出方を確認すると、嬉しそうに、
「こいつはいい!子どものいる家庭が全部欲しがるやつじゃないか!相変わらずジョージは凄いものを用意するなあ!」
と、手を洗っている。
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