上 下
328 / 424

第103話 貴族街でのイベント提案①

しおりを挟む
 ひとしきりイッチニ、イッチニ、とやっていると、ララさんがハッとしたように、
「いやだ、せっかく作っていただいたのに、ご飯の途中で夢中になっちゃったわ!」
 と言ってくれた。アシュリーさんも驚いたように思わずハッとしている。ようやく思い出してくれましたか……。

 そう。今はご飯の途中の会話の流れからこうなったので、ご飯の途中に席を立ち、マメに掃除をしてるからホコリは大丈夫と思ってはいるものの、食べ物がテーブルに乗ったままの状態で動き回っていたのだ。
 せっかく作ってくれたものを放置して、夢中になっちゃってごめんなさい、と2人が謝ってくれる。

「アシュリーさんが食べ物以外でこんなに夢中になるなんて珍しいものを見た気分です。
 食べ物以外にも興味があったんですね。」
 と言うと、さすがにちょっと恥ずかしそうだった。俺たちはテーブルについたが、アエラキがまだカイアの根っこの上から降りようとしない。そして腰をフリフリしている。

「ひょっとしたらアエラキちゃんも一緒に踊りたいの?とっても上手ね!」
 円璃花がそう言うと、アエラキが嬉しそうにピューイ!と鳴いた。確かにカイアよりも安定していて、このぶんならすぐにでも踊れそうだな。アエラキは腰フリフリダンスがことのほかお気に召したようだった。

「あら、なら参加してみる?赤ちゃんが踊るところに混ざればピッタリじゃないかしら。ちょうどオムツもはいていることだし。」
 とアシュリーさんが言った。オムツをはいた、たくさんの赤ちゃんコボルトに混ざってアエラキが踊るのか……。それはたいそう愛らしいことだろうなと俺は思った。

 オムツをはいた、たくさんの子犬とウサギのダンスだ。可愛くないわけがないからな。
「もしよろしければ、ぜひおねがいします。アエラキのダンスも見てみたいので。」
 と俺は頼むことにした。アエラキはピューイ!と鳴いて張り切っているようだった。

「2人もそろそろテーブルに戻りなさい。ご飯がまだ途中だろう?練習の続きをするのなら、ごちそうさまをしてからにしような。」
 そう言うと、カイアもアエラキも、ピョルルッ!ピューイ!と鳴いて、自分たちの席に戻り、ご飯を食べ始めた。

 ご飯を食べ終わると、揃って両手を合わせてごちそうさまのポーズをする。キラプシアも分かっているのかいないのか、真似しているのが大変愛らしい。アエラキが我先に子ども用の椅子からピョン!と飛び降りると、早く早く!とでも言うように、ピューイと鳴いてカイアを振り返って見上げている。

 1番練習すべきは、メインで踊る上にまだ不安定なカイアのほうだと思うのだが、練習したいアエラキに付き合ってやりたいのか、アエラキを根っこの上に乗せてやり、前足を持ち上げて、さっそくイッチニ、イッチニ、と歩いている。アエラキはカイアに支えられて歩きながら、ちょっと腰をフリフリしていた。随分と慣れるのが早いんじゃないか?

「これならすぐにでもアエラキだけで、歩いて踊ったり出来るんじゃないか?」
 と俺が言うと、アエラキはカイアを見上げてじっと見つめ、カイアはアエラキの前足からそっと枝の手を離した。アエラキはカイアの根っこの上で、ソロソロと前足を横に伸ばすと、ちょっとつま先立ちをして、少しぷるぷるとしながら腰をフリフリして見せた。

 だがすぐにバランスを崩してコテンと床に倒れてしまい、カイアが慌てて抱き起こしてやった。さすがにつま先立ちで踊るのは難しいか。本来コボルトと違って、2本足で立つように出来ていないものな。それにしても小動物と小さい子がつま先立ちで立つ姿って、どうしてこんなに愛らしいんだろうなあ。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

今のは勇者スキルではない、村人スキルだ ~複合スキルが最強すぎるが、真の勇者スキルはもっと強いに違いない(思いこみ)~

ねぎさんしょ
ファンタジー
【完結保証】15万字足らず、約60話にて第一部完結します!  勇者の血筋に生まれながらにしてジョブ適性が『村人』であるレジードは、生家を追い出されたのち、自力で勇者になるべく修行を重ねた。努力が実らないまま生涯の幕を閉じるも、転生により『勇者』の適性を得る。  しかしレジードの勇者適性は、自分のステータス画面にそう表示されているだけ。  他者から確認すると相変わらず村人であり、所持しているはずの勇者スキルすら発動しないことがわかる。  自分は勇者なのか、そうでないのか。  ふしぎに思うレジードだったが、そもそも彼は転生前から汎用アビリティ『複合技能』の極致にまで熟達しており、あらゆるジョブのスキルを村人スキルで再現することができた。  圧倒的な火力、隙のない肉体強化、便利な生活サポート等々。 「勇者こそ至高、勇者スキルこそ最強。俺はまだまだ、生家<イルケシス>に及ばない」  そう思いこんでいるのはレジード当人のみ。  転生後に出会った騎士の少女。  転生後に再会したエルフの弟子。  楽しい仲間に囲まれて、レジードは自分自身の『勇者』を追い求めてゆく。  勇者スキルを使うための村人スキルで、最強を証明しながら…… ※カクヨム様、小説家になろう様でも連載予定です。

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...