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第95話 妖精さんの正体②
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素材のままでも美味いが、2人にはたくさん栄養を取って欲しいから、素材そのままを食べさせたことはないからな。アエラキもウサギみたいな見た目だが雑食だし。2人に素材ままで食べさせるつもりはなかったんだ。
「ああ、そうだったの。あなた本当に野菜が好きねえ、譲次。前に行商のおばあちゃんからも野菜買って、やってたわよね、それ。」
「──そうだったか?」
「そうよ、わざわざコンビニで味噌とマヨネーズを買って、キュウリだけでお腹いっぱいにしちゃってたじゃない。一緒に旅行に来てたのに、私1人で朝ごはんを食べて、あなた目の前でコーヒーだけを飲んでたのよ。」
円璃花が、納得、という表情でうなずきながら、思い出話をしてくれる。
「ああ、そうだった……。それでなんとなく野菜だけでお腹いっぱいにして、一緒ご飯を食べないのはまずいなと思ったんだ。
それ自体はあんまり覚えてなかったけど、当時悪いことしたなと思ったんだろうな。」
本当に恥ずかしいな。いくら好きだからといって、恋人との旅行で一緒に朝ごはんが食べられなくなるくらい夢中になるとか……。
「──まあいいけどね。譲次みたいに図体が大きくてコワモテ気味の男性が、嬉しそうにキュウリを頬張る姿が可愛くて面白かったから、見てて楽しくて気にならなかったし。」
「……それは何よりだ。」
恥ずかし過ぎて他に何も言えなかった。というか、俺の食べている姿は面白いのか?
朝食を食べ終えると、カイアとアエラキにはマジックバッグの中に入って貰って家を出た。円璃花は1人で暇だからということで、新しい雑誌と仕事道具を出してやった。
せっかく時間があるから、新しいネイルのデザインを考えたいらしい。志半ばで夢を奪われちまったんだものなあ。こっちでも活躍出来る場面を作ってやれればいいんだが。
馬車を乗り継いで目的の場所へと向かう。目的の村ガスパーは、妖精の森という、妖精の守護のある森に育つ木を加工した、木工品で生計をたてている場所なのだそうだ。
妖精の守護は精霊ほどでないにしても強いから、普通に育つよりも強くてじょうぶな、加工しやすい木が育つのだそう。
ただし妖精は気まぐれで、精霊が一度守護すると決めた相手を変えないのに対し、突然どこかに行ってしまうことも多いのだとか。
そんな中で、ガスパー村の森は、長いこと妖精に愛されている森で、ガスパー村の家具といえば他国にも通じるほどらしい。
俺が王城で見た継ぎ目のない椅子も、ここの生産品だという。強くてじょうぶだから、馬車の車輪は大半ここのものが使われているとかで、ここが魔物の脅威から開放されないと、今後人々の足がなくなることにもなってしまう。確かに緊急性が高い案件だった。
俺が馬車を降りて村に近付くと、村は閉鎖されていて、警備の兵士が村の前に立っていた。冒険者認定証を見せて、冒険者ギルドから派遣されて来たことを告げる。彼らはこのあたりの役人だそうで、冒険者たちがストライキにより来ないことを聞かされていたらしく、とてもホッとした表情を浮かべた。
「中にはもう村人はいないとのことなんですが、もし泊まりになることになった場合、集会場などの、お借りできる場所はありますでしょうか?寝袋は持って来ていますが、俺の家は遠いので、馬車が間に合わなくなる可能性が高いので……。」
俺がそう言うと、兵士たちは顔を見合わせた。
「それが……、まだお一人だけ残ってらっしゃいまして……。」
「──残ってる?危険なんですよね?」
「はい、息子さんも連日いらして、説得されているのですが、どうにも頑固で……。
ガスパー村で一番の木工職人の方なのですが、村と最後まで共にすると聞かず……。」
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「ああ、そうだったの。あなた本当に野菜が好きねえ、譲次。前に行商のおばあちゃんからも野菜買って、やってたわよね、それ。」
「──そうだったか?」
「そうよ、わざわざコンビニで味噌とマヨネーズを買って、キュウリだけでお腹いっぱいにしちゃってたじゃない。一緒に旅行に来てたのに、私1人で朝ごはんを食べて、あなた目の前でコーヒーだけを飲んでたのよ。」
円璃花が、納得、という表情でうなずきながら、思い出話をしてくれる。
「ああ、そうだった……。それでなんとなく野菜だけでお腹いっぱいにして、一緒ご飯を食べないのはまずいなと思ったんだ。
それ自体はあんまり覚えてなかったけど、当時悪いことしたなと思ったんだろうな。」
本当に恥ずかしいな。いくら好きだからといって、恋人との旅行で一緒に朝ごはんが食べられなくなるくらい夢中になるとか……。
「──まあいいけどね。譲次みたいに図体が大きくてコワモテ気味の男性が、嬉しそうにキュウリを頬張る姿が可愛くて面白かったから、見てて楽しくて気にならなかったし。」
「……それは何よりだ。」
恥ずかし過ぎて他に何も言えなかった。というか、俺の食べている姿は面白いのか?
朝食を食べ終えると、カイアとアエラキにはマジックバッグの中に入って貰って家を出た。円璃花は1人で暇だからということで、新しい雑誌と仕事道具を出してやった。
せっかく時間があるから、新しいネイルのデザインを考えたいらしい。志半ばで夢を奪われちまったんだものなあ。こっちでも活躍出来る場面を作ってやれればいいんだが。
馬車を乗り継いで目的の場所へと向かう。目的の村ガスパーは、妖精の森という、妖精の守護のある森に育つ木を加工した、木工品で生計をたてている場所なのだそうだ。
妖精の守護は精霊ほどでないにしても強いから、普通に育つよりも強くてじょうぶな、加工しやすい木が育つのだそう。
ただし妖精は気まぐれで、精霊が一度守護すると決めた相手を変えないのに対し、突然どこかに行ってしまうことも多いのだとか。
そんな中で、ガスパー村の森は、長いこと妖精に愛されている森で、ガスパー村の家具といえば他国にも通じるほどらしい。
俺が王城で見た継ぎ目のない椅子も、ここの生産品だという。強くてじょうぶだから、馬車の車輪は大半ここのものが使われているとかで、ここが魔物の脅威から開放されないと、今後人々の足がなくなることにもなってしまう。確かに緊急性が高い案件だった。
俺が馬車を降りて村に近付くと、村は閉鎖されていて、警備の兵士が村の前に立っていた。冒険者認定証を見せて、冒険者ギルドから派遣されて来たことを告げる。彼らはこのあたりの役人だそうで、冒険者たちがストライキにより来ないことを聞かされていたらしく、とてもホッとした表情を浮かべた。
「中にはもう村人はいないとのことなんですが、もし泊まりになることになった場合、集会場などの、お借りできる場所はありますでしょうか?寝袋は持って来ていますが、俺の家は遠いので、馬車が間に合わなくなる可能性が高いので……。」
俺がそう言うと、兵士たちは顔を見合わせた。
「それが……、まだお一人だけ残ってらっしゃいまして……。」
「──残ってる?危険なんですよね?」
「はい、息子さんも連日いらして、説得されているのですが、どうにも頑固で……。
ガスパー村で一番の木工職人の方なのですが、村と最後まで共にすると聞かず……。」
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