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第94話 冒険者ギルドの緊急招集②

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「あ、はい、そうなんです。無理のないことではあるんですが、緊急を要するものもあるので困っていまして……。」
「ちなみに原因は分かっているんですか?」
「はい。以前ジョージさんに、強制招集で偵察クエストで組んでいただいた、B級冒険者パーティーを覚えていらっしゃいますか?」

「はい、パーティーのメンバーのお一人は、ご近所さんの顔見知りの方でしたし、よく覚えています。」
「その中のお一人の、魔法使いの方のことなんですが、住宅街に出没した魔物の討伐クエストで、民家を破壊してしまったんです。それが法に触れてしまうことなので、冒険者認定証を剥奪されることになってしまって。」
 ──そんなことになっていたのか。

「……ですが、その場にいた役人の指示によるものだったんですよね、それ。民家に逃げ込んた魔物を、民家ごと破壊せよという指示をされて、自分や周囲の人の命がかかっていたこともあって、緊急性から魔法使いの方は民家に攻撃魔法を放ちました。当然住民の方は避難されてましたので、誰も中にはいませんでしたが、それでも法律は法律で……。」

 ……日本でも昔あったよなあ。害獣が住宅街に逃げ込んで、住民が避難した団地かどこかで、猟友会の人が警察官の指示で発砲した際、銃筒が団地の壁に向いていたとして、発砲した人が逮捕されちまって、免許を永久に剥奪されるとかいう、理不尽な事件が起きたんだったか。俺もライフルと散弾銃を所持していたから、他人事じゃなかったんだよな。

「それに怒った他の冒険者たちが、魔法使いの方の冒険者認定証を返せと、職場放棄を起こしたと言うわけなんです。」
 住民の避難は完了しており、人のいない壁に向かって発砲したところで、当然被害者はいない。今回もそれと同じだ。
 その時も、それでも融通のきかない日本の法律がそれを許さなかった。住宅に向けて発砲した罪をその猟友会の人は背負った。

 ゴーストタウンで信号無視したとしても法律がある限り運転免許の点数は引かれる、と言ったワイドショーのコメンテーターがいたが、自分の意志でなく警察官の指示なのだ。命の危険がかかっていたのだ。
 交通法でも身の危険を感じた際の信号無視はお咎めにならない場合も多いのに、それでも現在まで彼の免許は戻っていないと聞く。

 今回の魔法使いの件も同じことになってしまうのだろうか?その扱いに対して、同じ冒険者たちが反発したということか。
「緊急性があるとのことですが、どのような内容なのでしょうか?他の冒険者たちが現場を拒絶しているということは、……俺1人で対応することになるのでしょうか?」
 俺はそこが気になった。

「……はい、そうなります。そこは本当に申し訳ありません。それと、緊急性がある理由は、討伐対象が妖精だから、になります。」
「──妖精?」
「妖精は精霊ほどではありませんが、瘴気の影響を受けて魔物化した場合、強い力であたりを破壊して人々を襲うんです。だから緊急性が高い討伐案件ということになります。」

「ちょっと待って下さい、妖精って、あの妖精ですか?蝶々みたいにヒラヒラ空を舞ってる、あの、小さくて可愛らしい……。」
「チョウチョウみたい?」
 受付嬢が首を傾げる。
「あの、手魔蝶みたいな……。」
 俺は手紙を飛ばす魔法の名前を告げる。

「ああ、リーティアですか。ああいう風ではないですが、確かに妖精はすべからく小さくて、可愛らしい見た目をしていますね。私も出来ることなら討伐したくはないです……。
 あと、今回の妖精は空は飛びません。小動物に似た形をしていると聞いています。」
 と受付嬢は言った。

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