上 下
265 / 443

第86話 ロバート・ウッド男爵邸①

しおりを挟む
「もう。恥ずかしいわ。」
 頬を染めてそう言いながらも、セレス様は俺の出したスイーツを一口ずつ食べて、
「これがいいわ。」
 とスフレチーズケーキを指さした。
「じゃあ、後は適当に配りますか?」

 俺がそう言ったが、
「せっかくですし、我々もひとつずつ味見してみませんか?」
 とエドモンドさんが、ジョスラン侍従長にいたずらっぽく言う。
「いいですね、珍しいもののようですし、全部味見してみたいと思っておりました。」

 ジョスラン侍従長がそれに同意して、2人がひとくちずつ他のスイーツを食べる。
「わたくしはこちらが気に入りました。」
「俺はこれだな。」
 ジョスラン侍従長がエクレア、エドモンドさんがショートケーキを選んだ。必然的に俺がレアチーズケーキになった。

「これは売らないのか?絶対に売れるぞ?」
 言うと思ったが、エドモンドさんがショートケーキを食べながらそう言ってくる。
「さすがにケーキを仕事で作るのは……。
 レシピを教えるだけなら構いませんが。」
 この世界にあるものでも、これらは別に作れるしな。冷蔵出来る運送ルートがないと、能力で出しても長距離運べないしなあ。

「ふむ?なら、俺の方で職人をあたってみよう。作りたいやつがいて、店を出す資金援助をすれば、すぐにでも始められそうだ。
 俺も定期的に食べたいしな。」
 エドモンドさんはそう言って、ショートケーキを食べてオンバ茶を飲んだ。

「甘いケーキなのに、味覚の邪魔をしないのが凄いな、このオンバ茶は。」
 確かに。俺は普段ケーキを食べる時、紅茶やコーヒーに砂糖を入れないが、ほんのり甘いお茶なのに、ケーキの味を壊さないのは凄いと思う。

「ところでジョージ。
 先程の温泉への招待なのだけれど、聖女様も呼んでも構わないかしら?」
「俺は別に……。バスロワ王国側とパーティクル侯爵家側で問題がないのでしたら。」
「じゃあ、聖女様と2人分の招待状を送るわね!」
 セレス様は何やら嬉しそうだ。

「──それでは甘いものもいただいたことですし、話を詰めましょうか。
 コボルトの店の優先券の配布は、商人ギルドを通じて行うこととする。これは後日商人ギルドより、ルピラス商会を通じてジョージ様に条件提示と、契約を行わせていただきます。必要な枚数は、王宮分はわたくしめが、商店分は商人ギルドより提示とさせていただきます。」

 ジョスラン侍従長の言葉に、俺とエドモンドさんがうなずく。
「それと、ジョージ様のご自宅の警備に関してですが、交代制で常時8名が見守らせていただく予定となりました。」
「──8名!?」
 多くないか!?いや、聖女様となると、それでも少ないのか?

 俺の家は魔法陣による防御があるから、いらないと言えばいらないんだが、そうと知らずに襲ってくる連中がいた時のことを考えると、わかりやすく警護している人間たちがいたほうが、安心といえば安心なのか……。だけど、目立つなあ……。

 円璃花がいなくなった後で、あの家には何かいいものがあるらしい、とでも思われて、狙われでもしたら厄介だな……。
 まあ、決まってしまったものは仕方がないが。それにしても、カイアとアエラキになんと言って紹介しようかなあ……。どっちも人見知りなんだよなあ……。

「分かりました。このあと、ルピラス商会に商品と見本をおさめに行くのと、コボルトの店の売買契約をしに行くので、俺はすぐには家に帰らないのですが、彼女はいつ頃こちらに来ますでしょうか?それか、迎えに行ったほうがいいでしょうか?」

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

処理中です...