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第84話 国王への謁見③
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「はい、そのように王室に打診すると、商人ギルドより伺っております。」
「どうだね?サミュエル。
──宰相としてどう思う。」
アーサー国王は、少し楽しげに、ニヤリと弟君にたずねた。目線を向けられたサミュエル宰相もニヤリと笑い返す。
「──よろしいのではないでしょうか。
国の新しい事業になるだけでなく、主力産出品であるコショウを封じ込めることで、経済的にも聖女様に礼を失したノインセシア王国に罰を与えられましょう。それに反対する国はありますまい。
また我が国がコショウ事業に乗り出すに際し、これ以上の好機はないかと。」
「うむ、私もそう思うよ。
ではこのことは、改めて話を詰めさせていただきたく思う、エイト卿。」
「はい、かしこまりました。」
……政治利用されている感が否めないが。
「その前に聖女様を一度お返ししなかった場合、ノインセシア王国に反論の余地を与えることになりませんでしょうか?」
セレス様が柳眉を下げた。
「──その心配には及びませんわ。」
アーサー国王たちが座っている、一段高い段の脇の、カーテンのようなものがまとめられている奥から、上品で美しい老婦人が現れた。この国の王族や、要職の従者たちが着ている服装とは異なる、大量のスパンコールのようなものを縫い付けられた美しいドレスを着ている。……いや、虫の羽か?
「おお、帰ったかね、メイベル。」
ランチェスター公が嬉しそうに微笑む。
「──王太后様!」
円璃花がその姿を見て驚く。
「……あなたは、はじめましてですわね。
ノインセシア王国、現国王の母、メイベル・キャリクファーガスと申します。」
上品で美しい老婦人が俺に微笑みかける。
「わたくしのあずかり知らぬこととは言え、わたくしの息子が聖女様に大変失礼な真似を致しました。
わたくしはこれに抗議し、このたびノインセシア王国を出ることと致しました。
このことは全国王会議に出席するすべての国に、一斉に通達される予定です。」
次から次へと短時間で事態が展開し、俺は既に状況についていくので、いっぱいいっぱいである。
「これにより、聖女様をノインセシア王国にお返しせずとも、聖女様の加護を失った愚か者のそしりを免れないのは、ノインセシア王国の方となるでしょう。」
「つまり、なんも心配せんでいいということじゃな。まったく、元勇者の娘を嫁に貰っておきながら、聖女様の扱いも分からんとは、とんでもない国だわい。」
「……元勇者……?」
「わし、先代の元勇者じゃもん。この国の王女を嫁に貰って王族になったけどの。」
!!!!!?????
それでさっき、みんなが一斉にランチェスター公を見たのか!当時のリアルな事情を唯一知っている人だから!
……どうりで王族にしては、ちょっと自由過ぎる人なわけだ。というか、おいくつなんだ?ランチェスター公。
「ワシの友人のコボルトたちの扱いをかえる為に店を始めようとし、今また聖女様を救おうとせんとする、エイト卿の爪の垢でも飲ませたいわい。」
セレス様とパトリシア王女が、ウンウンとうなずく。
俺はそんな大げさなことをしようとしていたわけではないんだがな……。
ノインセシア王国と政治的に衝突することなく、この場を諌められたらと思っていたんだが、むしろバスロワ王国の王族たちは、ノインセシア王国に罰を与えるつもりらしい。
聖女様はこの世界を救う重要な、神につかわされた存在だから、これくらい相手をやり込めるくらいで当たり前なのかな?
まあ、円璃花もノインセシア王国に戻りたくないと言っていたし、これでいいのかも知れない。
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「どうだね?サミュエル。
──宰相としてどう思う。」
アーサー国王は、少し楽しげに、ニヤリと弟君にたずねた。目線を向けられたサミュエル宰相もニヤリと笑い返す。
「──よろしいのではないでしょうか。
国の新しい事業になるだけでなく、主力産出品であるコショウを封じ込めることで、経済的にも聖女様に礼を失したノインセシア王国に罰を与えられましょう。それに反対する国はありますまい。
また我が国がコショウ事業に乗り出すに際し、これ以上の好機はないかと。」
「うむ、私もそう思うよ。
ではこのことは、改めて話を詰めさせていただきたく思う、エイト卿。」
「はい、かしこまりました。」
……政治利用されている感が否めないが。
「その前に聖女様を一度お返ししなかった場合、ノインセシア王国に反論の余地を与えることになりませんでしょうか?」
セレス様が柳眉を下げた。
「──その心配には及びませんわ。」
アーサー国王たちが座っている、一段高い段の脇の、カーテンのようなものがまとめられている奥から、上品で美しい老婦人が現れた。この国の王族や、要職の従者たちが着ている服装とは異なる、大量のスパンコールのようなものを縫い付けられた美しいドレスを着ている。……いや、虫の羽か?
「おお、帰ったかね、メイベル。」
ランチェスター公が嬉しそうに微笑む。
「──王太后様!」
円璃花がその姿を見て驚く。
「……あなたは、はじめましてですわね。
ノインセシア王国、現国王の母、メイベル・キャリクファーガスと申します。」
上品で美しい老婦人が俺に微笑みかける。
「わたくしのあずかり知らぬこととは言え、わたくしの息子が聖女様に大変失礼な真似を致しました。
わたくしはこれに抗議し、このたびノインセシア王国を出ることと致しました。
このことは全国王会議に出席するすべての国に、一斉に通達される予定です。」
次から次へと短時間で事態が展開し、俺は既に状況についていくので、いっぱいいっぱいである。
「これにより、聖女様をノインセシア王国にお返しせずとも、聖女様の加護を失った愚か者のそしりを免れないのは、ノインセシア王国の方となるでしょう。」
「つまり、なんも心配せんでいいということじゃな。まったく、元勇者の娘を嫁に貰っておきながら、聖女様の扱いも分からんとは、とんでもない国だわい。」
「……元勇者……?」
「わし、先代の元勇者じゃもん。この国の王女を嫁に貰って王族になったけどの。」
!!!!!?????
それでさっき、みんなが一斉にランチェスター公を見たのか!当時のリアルな事情を唯一知っている人だから!
……どうりで王族にしては、ちょっと自由過ぎる人なわけだ。というか、おいくつなんだ?ランチェスター公。
「ワシの友人のコボルトたちの扱いをかえる為に店を始めようとし、今また聖女様を救おうとせんとする、エイト卿の爪の垢でも飲ませたいわい。」
セレス様とパトリシア王女が、ウンウンとうなずく。
俺はそんな大げさなことをしようとしていたわけではないんだがな……。
ノインセシア王国と政治的に衝突することなく、この場を諌められたらと思っていたんだが、むしろバスロワ王国の王族たちは、ノインセシア王国に罰を与えるつもりらしい。
聖女様はこの世界を救う重要な、神につかわされた存在だから、これくらい相手をやり込めるくらいで当たり前なのかな?
まあ、円璃花もノインセシア王国に戻りたくないと言っていたし、これでいいのかも知れない。
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