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第84話 国王への謁見②

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「まずは再びこの地に聖女様をお迎えできたことを嬉しく思う。日々瘴気がたかまり、本来いるはずのない場所に強い魔物が発生し、人々の生活を脅かしている状態だ。
 世界を救う為、国民の生活を守る為、バスロワ王国は聖女様への最大限の協力を惜しまぬと約束しよう。」

「──もったいないお言葉、ありがたく存じます。」
 円璃花がそう言った。
「さて、先程ランチェスター公より拝聴したのだが、ノインセシア王国に来臨なされたのち、聖女様に対するものとしては、あるまじき対応をされたとは、まことか?」

「……仰せのとおりにございます。
 ──ノインセシア王国では、私を偽聖女と決めつけ、聖女であることを証明せよ、奇跡をおこしてみせよ、と日々激しく糾弾されておりました。
 ……そこで、前回の聖女様が現れたバスロワ王国にお伺いしたいことがございます。」

「何なりと申してみよ。」
「ノインセシア王国では、聖女が出現するにあたり、必ず聖獣を伴うものであるとの説明を受けました。わたくしには現時点で、そのような聖獣はおりません。
 果たして前回の聖女様の際は、いかようでありましたでしょうか?」

 その場にいた人たちが互いに顔を見合わせてザワザワしだしたかと思うと、その目線が一斉にランチェスター公に集まった。
「んー、そんなことはなかったよ?
 確かに最終的には連れておったけどね。
 途中で手に入れたものだよ、聖獣は。」

「ということは、聖女様の連れている聖獣とは、出現と同時に存在するものではなく、だがいずれ手に入るものである、という解釈でよろしいですかな?ランチェスター公。」
 アーサー国王が、祖父にたずねるというより、偉い人に教えをこう感じで、ランチェスター公にたずねる。

「そうだの。聖女様はその祝福により、聖獣の卵を得るのだよ。何が生まれるかはその時々によって異なるようだ。
 過去の文献でも、確かそう示されとったんじゃないかな。
 先の聖女様の時は聖亀じゃったわ。」
 なるほど、ならいずれはどこかしらから、その聖獣の卵が手に入るということか。

「聖亀は、甲羅の中に手足を引っ込めて飛びよるんだが、上に乗って移動可能なものの、最初の頃は回転せんと飛べんくて、目が回って大変じゃったわい。
 オマケに引っ込めた手足から火を噴いて、その勢いで飛びよるから、まあ、熱くての。
 成長したら後ろ足からだけ火を噴いて飛べるようにもなったがの。」

 ……それは聖亀というより、ガ●ラでは?
「ノインセシア王国は、聖女様と勇者様が直接降臨されたことが殆どない国だから、聖獣を既に連れている状態しか見たことがなかったんだろうの。」
 なるほど……。そういうことだったのか。

「わしに確認すれば早いものを、確認もせんと、自らの無知を棚に上げて聖女様をいじめるとは何たる不届き者たちか。
 とてもノインセシア王国に聖女様はかえせんな。アーサー、これは全国王会議ものだと思うが?」

「──その通りですね。どの国が聖女様を引き受けるにせよ、ノインセシア王国に引き渡すという選択肢はありえないでしょう。
 このことは緊急全国王会議の議題にさせていただきます。──それとエイト卿。」
「は、はい。」

「先日商人ギルドより、貴殿が現在流通しているものよりも、上質のコショウを大量に保持しており、一般流通を行いたいと検討していると打診があった。
 現在コショウを独占販売し、外貨獲得の手段としている国に対抗する為、国の事業として、他国に一斉に流通させ、値下げ取引を持ちかけるべきである、とな。」

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