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第70話 生ハムとキュウリとピーマンと玉ねぎのレモン醤油マリネと、豚玉ニラモヤシ③

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 確かに何の情報もないSランクの魔物ともなると、最悪逃げられないよな……。
 俺は武器以外は普通の人間だから、武器の火力以上に魔物が強かった場合、逃げる手段がなくなってしまう。
 動物だって俺より力も強ければ足も早い。魔物はそれ以上なのだから。

「強化魔法を使う奴が相手なら、防御力低下の無属性魔法が使えんと、攻撃が通らん可能性もあるわい。
 Sランクは魔法を使う魔物も多いからな、持っておいて損はないじゃろ。」
「ありがとうございます。
 大切に使います。」

「もったいぶらずにどんどん使え。
 金をケチることは、命をケチることだと思うんじゃ。それが生き残るコツとも言える。
 ギリギリまで回復薬を飲まずに、死んじまう若い冒険者は、毎年あとをたたんのだ。
 備えは多ければ多いほどいいからな。」

「肝に銘じます。」
 確かにゲームをしていた時は、それでよく死んだな、ということを思い出し、俺は苦笑しながら、オリハルコンの盾とオリハルコン弾をマジックバッグにしまい、ヴァッシュさんの工房をあとにした。

 今日はさすがに色々回りすぎて疲れたし、山に向かう馬車も微妙な時間だ。急に向かって宿が取れなくても困るしな。
 明るいうちに下山することを考えると、朝から山に登りたいから、早い時間に向かって宿を取って、次の日の朝から山に登るのがいいだろう。

 最悪山で泊まりになった場合、パーティクル公爵家の別荘に泊めてくれるかも知れないが、管理人が近付けないんじゃ、中に誰もいなかった場合、ドアの鍵を開けてくれる人がいない可能性があるからな。
 キャンプ道具を出すことは出来るが、慣れない雪山で泊まるのは出来るだけさけたい。

 俺は家に向かう馬車に乗った。
 家に入ってすぐ、カイアをマジックバッグから出してやる。
「ずっと入れててごめんな、ようやく家に帰ってきたからのんびりしよう。」
 カイアはあたりを見回して、ここが家だ分かると、まっすぐ窓際の植木鉢に向かった。

 そこによじ登って根っこを土に入れる。
 一日一回はそれをしているんだが、ご飯だけじゃ栄養が不足しているのだろうか。
 それとも、トイレの代わりなのかな?
 カイアは人間のトイレを使わないが、俺たちと同じものを食べる。それがどこに行っているのかが、いつも気になってたんだよな。

 かといって、土の中に排泄物があるのかというとそういうわけでもない。
 まあ、植物は消化管がないから、そこを通らないってだけで、食虫植物みたいな、硬いものを食べる植物は、消化しきれなかったものを捨てるって行為はするんだよな。排泄物とは違うけど。

 いつかカイアが話せるようになったら聞いてみたいなと思った。
 しかし朝食べたきりだから腹が減ったな。
 外で食べようかとも思ったが、カイアにもご飯を食べさせないといけないし、カイアだけ食べさせるときっと気にするだろうなと思って、帰ってから一緒に食べようと思って我慢していたのだ。

 と言っても、カイアからしたら、公爵家の馬車の中でマジックバッグに入れられてからの時間がとぎれているからな。
 向こうでタコ焼きを食べていたし、そこからまだ数時間しか経っていない筈だ。
 そこまでがっつりお腹が空いているかと言われれば微妙なところかも知れないが。

 マジックバッグに入れるたびに、カイアとの時間がずれてしまう。いつか魔物じゃないと分かってもらって、堂々と一緒に歩ける日が来るといいなあ。
 少し時間のかかるものを作ろうかな?それなら作っている間に、カイアもお腹が空いてくるかも知れないな。

 植木鉢から出て来たカイアの足から泥を拭ってやる。積み木で遊びたがったので、ご飯が出来るまでな、と言った。
 コボルトのところで積み木で遊んでからというもの、カイアはすっかり積み木がお気に入りだ。朝も俺より早く起きて、一人で静かに積み木をやっている。

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