205 / 443
第68話 アサリの水煮缶の豆乳クラムチャウダーとスープスパ③
しおりを挟む
「朝ごはんはこれにしましょう!
きっとイヴリンも喜んでくれるに違いありません!」
「いいと思いますよ。クラムチャウダーは作り置きしたものを明日温めて、パスタをその場で茹でたものを加えてあげたら、イヴリンさんも驚くと思います。」
「反応が楽しみで、わたくし今夜は寝られないかも知れません!」
「寝て下さい。」
目を輝かせているさまは、やはり彼の実年齢が子どもなのだと思わせる。俺は思わず微笑ましくなって笑った。
サニーさんは夫婦の寝室に行き、俺は2階の隣の客室を借りて、その日は休んだ。
朝、ドンガラガッシャーン!グワングワングワングワン……という音に目を覚ますと、下に降りたらキッチンでサニーさんが寸胴鍋を落っことしていた。
こっそり料理して驚かせようとして、鍋を取り落として失敗してしまったらしい。小さい子のいたずらみたいだな。中身が入っていなくて幸いだったが。
「……イヴリンは、今の音で起きてしまったでしょうか……。」
心配そうなサニーさん。
俺は階段の上で、俺の様子を心配そうに覗き込んでいたイヴリンさんに、振り返ってシーッと唇に指を当てて黙っていて貰うと、
「起きてきてはいないようですね、急いで準備をしましょう。俺も手伝います。」
と言った。
イヴリンさんは顎に拳をあててクスクスと声を出さずに笑うと、そーっと部屋にまた引き上げて行ってくれた。
クラムチャウダーを温め直しながら、パスタを茹でる。パスタをザルに上げて、パスタ同士がひっつかないように、軽くバターを絡めておいた。サニーさんがイヴリンさんを呼びに、2階の部屋に上がって行った。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
俺とイヴリンさんは、改めて朝の挨拶をした。イヴリンさんは俺を見てクスリと微笑んだ。俺も微笑んだ。共犯者気分だ。
サニーさんの様子がいつもと違うことに、イヴリンさんも気が付いたようだ。
「イヴリン、今朝はわたくしが料理をしたのです。気に入って貰えれば、これから毎日でも作ります。美味しいと思って貰えるとよいのですが……。」
サニーさんはソワソワと手を動かしながら、イヴリンさんに椅子をすすめた。
イヴリンさんは目を丸くしながら、
「サニーが料理を作ってくれたの?
私の為に?」
とサニーさんを見上げて言った。
サニーさんは慣れない手付きでお皿にクラムチャウダーを盛り付けし、パセリを散らした。散らし方が下手で、見た目はちょっと汚いが、愛情はタップリと入っている。
「ど、どうぞ、召し上がれ。」
俺と自分の前にも皿を置いたが、サニーさんは皿に手を付けずに、じっとイヴリンさんの反応を見守っている。
「……!美味しい!凄く美味しいわ!」
サニーさんがほっとした表情を見せた。
「これは麺を加えて食べても、とても美味しいものなのです。入れてみましょうか?」
「食べたいわ!」
サニーさんは、嬉しそうなイヴリンさんからお皿を受け取ると、茹でておいたパスタを加えて、上から追加でクラムチャウダーをかけ、再びイヴリンさんの目の前に置いた。
ツルツルとパスタを吸い込みながら、満面の笑みのイヴリンさん。それを嬉しそうに見つめているサニーさん。
「美味しい……、とても美味しいわ。
こんな料理は、はじめて……。」
「これはスープ自体にとても栄養がある料理なのです。女性やお年寄りに、特に必要な栄養が詰まっているそうです。」
サニーさんが昨日俺から聞いた受け売りをイヴリンさんに話す。
「わたくしは、これをずっとあなたと食べていきたい。これからも、あなたの喜ぶことをしていきたい。
何をすればよいのか分からないので、今まで自分から動けずにいましたが、これからはもっと自分でも考えます。だから……。」
「──はい。これからも、ずっと一緒にいてくださいね、サニー。」
幸せそうな表情で、イヴリンさんがサニーさんを見つめる。
サニーさんは本当に嬉しそうだった。
俺もサニーさんもクラムチャウダーのスープスパをたいらげ、俺は2人に見送られながら、サニーさんの家をあとにした。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
きっとイヴリンも喜んでくれるに違いありません!」
「いいと思いますよ。クラムチャウダーは作り置きしたものを明日温めて、パスタをその場で茹でたものを加えてあげたら、イヴリンさんも驚くと思います。」
「反応が楽しみで、わたくし今夜は寝られないかも知れません!」
「寝て下さい。」
目を輝かせているさまは、やはり彼の実年齢が子どもなのだと思わせる。俺は思わず微笑ましくなって笑った。
サニーさんは夫婦の寝室に行き、俺は2階の隣の客室を借りて、その日は休んだ。
朝、ドンガラガッシャーン!グワングワングワングワン……という音に目を覚ますと、下に降りたらキッチンでサニーさんが寸胴鍋を落っことしていた。
こっそり料理して驚かせようとして、鍋を取り落として失敗してしまったらしい。小さい子のいたずらみたいだな。中身が入っていなくて幸いだったが。
「……イヴリンは、今の音で起きてしまったでしょうか……。」
心配そうなサニーさん。
俺は階段の上で、俺の様子を心配そうに覗き込んでいたイヴリンさんに、振り返ってシーッと唇に指を当てて黙っていて貰うと、
「起きてきてはいないようですね、急いで準備をしましょう。俺も手伝います。」
と言った。
イヴリンさんは顎に拳をあててクスクスと声を出さずに笑うと、そーっと部屋にまた引き上げて行ってくれた。
クラムチャウダーを温め直しながら、パスタを茹でる。パスタをザルに上げて、パスタ同士がひっつかないように、軽くバターを絡めておいた。サニーさんがイヴリンさんを呼びに、2階の部屋に上がって行った。
「おはようございます。」
「おはようございます。」
俺とイヴリンさんは、改めて朝の挨拶をした。イヴリンさんは俺を見てクスリと微笑んだ。俺も微笑んだ。共犯者気分だ。
サニーさんの様子がいつもと違うことに、イヴリンさんも気が付いたようだ。
「イヴリン、今朝はわたくしが料理をしたのです。気に入って貰えれば、これから毎日でも作ります。美味しいと思って貰えるとよいのですが……。」
サニーさんはソワソワと手を動かしながら、イヴリンさんに椅子をすすめた。
イヴリンさんは目を丸くしながら、
「サニーが料理を作ってくれたの?
私の為に?」
とサニーさんを見上げて言った。
サニーさんは慣れない手付きでお皿にクラムチャウダーを盛り付けし、パセリを散らした。散らし方が下手で、見た目はちょっと汚いが、愛情はタップリと入っている。
「ど、どうぞ、召し上がれ。」
俺と自分の前にも皿を置いたが、サニーさんは皿に手を付けずに、じっとイヴリンさんの反応を見守っている。
「……!美味しい!凄く美味しいわ!」
サニーさんがほっとした表情を見せた。
「これは麺を加えて食べても、とても美味しいものなのです。入れてみましょうか?」
「食べたいわ!」
サニーさんは、嬉しそうなイヴリンさんからお皿を受け取ると、茹でておいたパスタを加えて、上から追加でクラムチャウダーをかけ、再びイヴリンさんの目の前に置いた。
ツルツルとパスタを吸い込みながら、満面の笑みのイヴリンさん。それを嬉しそうに見つめているサニーさん。
「美味しい……、とても美味しいわ。
こんな料理は、はじめて……。」
「これはスープ自体にとても栄養がある料理なのです。女性やお年寄りに、特に必要な栄養が詰まっているそうです。」
サニーさんが昨日俺から聞いた受け売りをイヴリンさんに話す。
「わたくしは、これをずっとあなたと食べていきたい。これからも、あなたの喜ぶことをしていきたい。
何をすればよいのか分からないので、今まで自分から動けずにいましたが、これからはもっと自分でも考えます。だから……。」
「──はい。これからも、ずっと一緒にいてくださいね、サニー。」
幸せそうな表情で、イヴリンさんがサニーさんを見つめる。
サニーさんは本当に嬉しそうだった。
俺もサニーさんもクラムチャウダーのスープスパをたいらげ、俺は2人に見送られながら、サニーさんの家をあとにした。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
317
お気に入りに追加
1,848
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる