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第65話 サニーさんの出自②
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「お前たち……、俺たちの集落に定期的に盗みに入るだけじゃ飽き足らず、元王族の命まで狙うだなんて。
もういつものようには逃げられないぞ、死刑も覚悟しておくんだな。」
彼らを捕えて連れてきたコボルトたちも、あきれた表情で彼らを見下ろしている。
「ヒッ!?も、元王族だって!?
し、知らねえよ!俺たちはただ、ここに向かう途中で、馬車を襲うのに最適な場所がないか、聞かれて教えただけだ!」
「そうだよ!馬車の中に誰が乗ってるかなんて、何も聞かされちゃいねえよ!」
男たちは寝耳に水だったようで、目を白黒させながらそう叫んだ。
「──加担していたことを認めるんだな。」
グラント分隊長さんが、鋭い眼光で泥棒の男たちを睨みつけ、彼らは震え上がった。
……語るに落ちたな。つまりあの時、俺に尻を撃ち抜かれた男を、置いて逃げた男たちが、彼らだったということか。
「い、嫌だ!俺たちは場所まで案内しただけだ!本当にあとは何もしちゃいねえ!」
「俺たちはケチなコソ泥なんだよ!」
自分たちで言うか。
涙目の彼らの訴えは、グラント分隊長さんによって退けられた。
「それを判断するのは我々の仕事ではない。
知っていようといまいと、お前たちが罪に加担したことに違いはない。
どうやら日頃から頻繁に罪を重ねている常習犯のようだし、今度は許されないだろう。
最低限強制労働は覚悟しておくんだな。」
「嫌だあああ!──ウッ。」
男たちは騒がしく喚いていたが、別の役人が手にした四角い箱を、鼻の下に持ってこられて少しすると、そのままストンと意識を手放した。
「──眠りの香だ、しばらく大人しくしていてもらおう。よし、馬車に全員つみ込め!」
他の盗賊たちにも、次々と眠りの香を嗅がせて大人しくさせると、役人たちは手際よく盗賊たちと盗人たちを、馬車の荷台に乗せ、そのまま護衛として4人が荷台に乗った。
グラント分隊長さんは、別の、先程の箱よりも少し大きな箱を取り出すと、
「ダニエル、残りの2人もこちらで見つけてとらえた。そのまま戻って来い。」
と言った。どうやら通信機器のようだ。
「これでようやく、あいつらを気にせずに、安心して眠れるようになるな。」
「まったくだ。
襲う相手も確かめずに引き受けるなんて、あいつらが馬鹿で助かったよ。」
コボルトたちは口々にそう言って、ほっと胸をなでおろしていた。
報告に行ったダニエルが戻るのを待って出発します、あとは大丈夫です、とグラント分隊長さんに言われたので、俺たちはみんなのところに戻り、さっきの出来事をオッジさんとオンスリーさんに伝えると、オッジさんが声を張り上げて、全員の注目を集めた。
「──みんな、聞いてくれ!
いつも我々を苦しめてきた、例の盗人たちが、セレス様の襲撃事件に加担した罪で、ついさっき捕まって、役人に連れて行かれた!
もう二度と我々の土地を踏むことはないだろう!俺たちは勝ったんだ!」
と言った。
集まったコボルトたちは、一斉にワーッと声を上げ、口々に喜んだ。
「いつもの盗人たちとは……、いったいなんの話でしょうか?」
パーティクル公爵が俺に尋ねてくる。
「コボルトの集落に盗みに入って、そのたび役人につかまっても、大した罪にならず、すぐに出てこられるのをいいことに、定期的に忍び込んでくる泥棒がいたんです。」
「なんと……。卑怯な……。
やはり、コボルトの名声が認知されていないことで、そのような扱いを?」
「ええ。このあたりでは特に、まだコボルトは魔物であるという認識をされているようなのです。それで役人もお咎めなしと……。」
俺の言葉に、パーティクル公爵が眉を潜めたかと思うと、眉間にシワを寄せた。
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もういつものようには逃げられないぞ、死刑も覚悟しておくんだな。」
彼らを捕えて連れてきたコボルトたちも、あきれた表情で彼らを見下ろしている。
「ヒッ!?も、元王族だって!?
し、知らねえよ!俺たちはただ、ここに向かう途中で、馬車を襲うのに最適な場所がないか、聞かれて教えただけだ!」
「そうだよ!馬車の中に誰が乗ってるかなんて、何も聞かされちゃいねえよ!」
男たちは寝耳に水だったようで、目を白黒させながらそう叫んだ。
「──加担していたことを認めるんだな。」
グラント分隊長さんが、鋭い眼光で泥棒の男たちを睨みつけ、彼らは震え上がった。
……語るに落ちたな。つまりあの時、俺に尻を撃ち抜かれた男を、置いて逃げた男たちが、彼らだったということか。
「い、嫌だ!俺たちは場所まで案内しただけだ!本当にあとは何もしちゃいねえ!」
「俺たちはケチなコソ泥なんだよ!」
自分たちで言うか。
涙目の彼らの訴えは、グラント分隊長さんによって退けられた。
「それを判断するのは我々の仕事ではない。
知っていようといまいと、お前たちが罪に加担したことに違いはない。
どうやら日頃から頻繁に罪を重ねている常習犯のようだし、今度は許されないだろう。
最低限強制労働は覚悟しておくんだな。」
「嫌だあああ!──ウッ。」
男たちは騒がしく喚いていたが、別の役人が手にした四角い箱を、鼻の下に持ってこられて少しすると、そのままストンと意識を手放した。
「──眠りの香だ、しばらく大人しくしていてもらおう。よし、馬車に全員つみ込め!」
他の盗賊たちにも、次々と眠りの香を嗅がせて大人しくさせると、役人たちは手際よく盗賊たちと盗人たちを、馬車の荷台に乗せ、そのまま護衛として4人が荷台に乗った。
グラント分隊長さんは、別の、先程の箱よりも少し大きな箱を取り出すと、
「ダニエル、残りの2人もこちらで見つけてとらえた。そのまま戻って来い。」
と言った。どうやら通信機器のようだ。
「これでようやく、あいつらを気にせずに、安心して眠れるようになるな。」
「まったくだ。
襲う相手も確かめずに引き受けるなんて、あいつらが馬鹿で助かったよ。」
コボルトたちは口々にそう言って、ほっと胸をなでおろしていた。
報告に行ったダニエルが戻るのを待って出発します、あとは大丈夫です、とグラント分隊長さんに言われたので、俺たちはみんなのところに戻り、さっきの出来事をオッジさんとオンスリーさんに伝えると、オッジさんが声を張り上げて、全員の注目を集めた。
「──みんな、聞いてくれ!
いつも我々を苦しめてきた、例の盗人たちが、セレス様の襲撃事件に加担した罪で、ついさっき捕まって、役人に連れて行かれた!
もう二度と我々の土地を踏むことはないだろう!俺たちは勝ったんだ!」
と言った。
集まったコボルトたちは、一斉にワーッと声を上げ、口々に喜んだ。
「いつもの盗人たちとは……、いったいなんの話でしょうか?」
パーティクル公爵が俺に尋ねてくる。
「コボルトの集落に盗みに入って、そのたび役人につかまっても、大した罪にならず、すぐに出てこられるのをいいことに、定期的に忍び込んでくる泥棒がいたんです。」
「なんと……。卑怯な……。
やはり、コボルトの名声が認知されていないことで、そのような扱いを?」
「ええ。このあたりでは特に、まだコボルトは魔物であるという認識をされているようなのです。それで役人もお咎めなしと……。」
俺の言葉に、パーティクル公爵が眉を潜めたかと思うと、眉間にシワを寄せた。
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