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第60話 聖女降臨の情報①
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「ところで、隣国に現れるという、聖女様の予言について、もう少し詳しく聞いても大丈夫ですか?」
ロンメルが、酒の席だからか、いつもよりも更に気軽にセレス様に質問をしている。
こんな調子で普段から、色々尋ねたり、話しかけたりしているんだろうな。
俺とエドモンドさんとサニーさんが、少しハラハラしながら、しかし口を挟むことが出来ずにそれを見ていた。
貴族が会話をしている時には、特に上の立場の貴族が自分から話題を振らない限り、自分から話しかけてはいけないという、社交界のマナーを教えて貰った為だ。
まあ現代の日本でも、上司が他の人と話しているところに、普通に割り込む人間は、かなり少ないと言っていいだろう。
そう考えると、立場を考えれば、そんなに貴族のマナーも難しくはないな。
だけど、ロンメルが振っている話題は、そんな気さくに聞いていい質問ではないと思うんだが……。
「まあ、気になるわよね。私たちも、隣国の話だから、そんなに詳しく知らされているわけではないのだけれど、前回の聖女様の降臨時に、我が国にもたらされたものと同じお告げがなされたとのことよ。
時期までは不明だけれど、過去の例から言って、遅くても三月以内には、ノインセシア王国に降臨なされるでしょうね。」
エドモンドさんとサニーさんが、ほっとした表情を浮かべる。強くなってきているという瘴気も、聖女様が現れれば払ってもらえるのだろう。強い魔物も現れ始めているようだし、明確に降臨される時期が分かるのはありがたいよな。
隣の国はノインセシア王国というのか。今更だけど、この国は何ていうんだろうな?
「──だけど不思議なのは、今回は聖女様のみという点なのよね。聖女様と勇者様は、出現時期がずれることこそあれ、現れるというお告げ自体は必ず同時になされてきたわ。
なのにどうしてなのかしら……。」
俺が神の間違いによって、勇者の体を貰ってしまったからだろうか。突然成人をこの世に現れさせるのは、さすがの神とて何人も同時には出来ないのかも知れない。
俺は体こそ勇者のものなのだろうだが、まったく戦闘に関係ないスキルを貰ってしまったから、本来勇者が戦う筈のレベルの魔物とは到底戦えないだろうし、そうなると、聖女様1人で戦うことになるのか?
もちろん他にも仲間は連れて行くんだろうが、聖女様って回復とかの担当イメージだよな。攻撃の要がいなくて戦えるのかな?
神が勝手に間違えたのだから、俺にはどうしようもないことではあるが、そのせいで瘴気が払われなかったら、瘴気の影響を受けるという、ドライアドの子株であるカイアが心配だ。
いずれはカイア自身が瘴気を払える力を持つと言われたが、自分についた瘴気まで払うことは出来るのだろうか。
一度親株のところに聞きにいかないといけないかも知れないなあ。カイアはまだとても小さいから、その力を持てるようになるまでに、まだまだ時間もかかることだろうし、どのくらいでそうなれるのか、自分の体についた瘴気を払えるのか、聞いておかないと、とてもじゃないが安心出来ない。
「そういえば、ドライアドの親株は、どこに行けば会うことが出来ますか?」
俺は右隣のアシュリーさんに尋ねた。ちなみに左隣がロンメルで、俺の向かいにエドモンドさん、その両隣が、入り口近くにサニーさん、奥にララさん、ララさんの隣がセレス様で、当主席というか、お誕生日席にパーティクル公爵が座っている。
もっとコボルトのアシュリーさんとララさんと話したかった、パーティクル公爵が決めた席配置だ。本来なら、ルピラス商会の副長であるエドモンドさんの方が、立場的に上座に座るものだと思うが、まあ、そこは気楽な席だからということなんだろう。
「親株の場所は私たちも知らないの。私たちのところのドライアド様に尋ねてみたらいいんじゃないかしら。親株と通信出来ると言うし、恐らく場所もご存知と思うわ。
コボルトは、私たちを守護してくださっているドライアド様を信仰しているであって、親株ごと崇めているわけではないから、会いに行ったりしたことがないのよ。」
「そうなんですね……。お2人をお送りするのにコボルトの集落に行った際に、お会い出来そうであれば尋ねてみようと思います。」
「ジョージさんは、コボルトの集落に行ったことがあるのかい?」
「はい、ギルドからの依頼で行って以降、コボルトの店を出す為のうち合わせなどで、何度か訪ねています。」
「羨ましいことだ……。
コボルトの集落か……。
きっとたくさんの大人や子どものコボルトがいるのだろうね。」
パーティクル公爵が、何かを想像しているように目を細めて、遠くを見つめた。
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ロンメルが、酒の席だからか、いつもよりも更に気軽にセレス様に質問をしている。
こんな調子で普段から、色々尋ねたり、話しかけたりしているんだろうな。
俺とエドモンドさんとサニーさんが、少しハラハラしながら、しかし口を挟むことが出来ずにそれを見ていた。
貴族が会話をしている時には、特に上の立場の貴族が自分から話題を振らない限り、自分から話しかけてはいけないという、社交界のマナーを教えて貰った為だ。
まあ現代の日本でも、上司が他の人と話しているところに、普通に割り込む人間は、かなり少ないと言っていいだろう。
そう考えると、立場を考えれば、そんなに貴族のマナーも難しくはないな。
だけど、ロンメルが振っている話題は、そんな気さくに聞いていい質問ではないと思うんだが……。
「まあ、気になるわよね。私たちも、隣国の話だから、そんなに詳しく知らされているわけではないのだけれど、前回の聖女様の降臨時に、我が国にもたらされたものと同じお告げがなされたとのことよ。
時期までは不明だけれど、過去の例から言って、遅くても三月以内には、ノインセシア王国に降臨なされるでしょうね。」
エドモンドさんとサニーさんが、ほっとした表情を浮かべる。強くなってきているという瘴気も、聖女様が現れれば払ってもらえるのだろう。強い魔物も現れ始めているようだし、明確に降臨される時期が分かるのはありがたいよな。
隣の国はノインセシア王国というのか。今更だけど、この国は何ていうんだろうな?
「──だけど不思議なのは、今回は聖女様のみという点なのよね。聖女様と勇者様は、出現時期がずれることこそあれ、現れるというお告げ自体は必ず同時になされてきたわ。
なのにどうしてなのかしら……。」
俺が神の間違いによって、勇者の体を貰ってしまったからだろうか。突然成人をこの世に現れさせるのは、さすがの神とて何人も同時には出来ないのかも知れない。
俺は体こそ勇者のものなのだろうだが、まったく戦闘に関係ないスキルを貰ってしまったから、本来勇者が戦う筈のレベルの魔物とは到底戦えないだろうし、そうなると、聖女様1人で戦うことになるのか?
もちろん他にも仲間は連れて行くんだろうが、聖女様って回復とかの担当イメージだよな。攻撃の要がいなくて戦えるのかな?
神が勝手に間違えたのだから、俺にはどうしようもないことではあるが、そのせいで瘴気が払われなかったら、瘴気の影響を受けるという、ドライアドの子株であるカイアが心配だ。
いずれはカイア自身が瘴気を払える力を持つと言われたが、自分についた瘴気まで払うことは出来るのだろうか。
一度親株のところに聞きにいかないといけないかも知れないなあ。カイアはまだとても小さいから、その力を持てるようになるまでに、まだまだ時間もかかることだろうし、どのくらいでそうなれるのか、自分の体についた瘴気を払えるのか、聞いておかないと、とてもじゃないが安心出来ない。
「そういえば、ドライアドの親株は、どこに行けば会うことが出来ますか?」
俺は右隣のアシュリーさんに尋ねた。ちなみに左隣がロンメルで、俺の向かいにエドモンドさん、その両隣が、入り口近くにサニーさん、奥にララさん、ララさんの隣がセレス様で、当主席というか、お誕生日席にパーティクル公爵が座っている。
もっとコボルトのアシュリーさんとララさんと話したかった、パーティクル公爵が決めた席配置だ。本来なら、ルピラス商会の副長であるエドモンドさんの方が、立場的に上座に座るものだと思うが、まあ、そこは気楽な席だからということなんだろう。
「親株の場所は私たちも知らないの。私たちのところのドライアド様に尋ねてみたらいいんじゃないかしら。親株と通信出来ると言うし、恐らく場所もご存知と思うわ。
コボルトは、私たちを守護してくださっているドライアド様を信仰しているであって、親株ごと崇めているわけではないから、会いに行ったりしたことがないのよ。」
「そうなんですね……。お2人をお送りするのにコボルトの集落に行った際に、お会い出来そうであれば尋ねてみようと思います。」
「ジョージさんは、コボルトの集落に行ったことがあるのかい?」
「はい、ギルドからの依頼で行って以降、コボルトの店を出す為のうち合わせなどで、何度か訪ねています。」
「羨ましいことだ……。
コボルトの集落か……。
きっとたくさんの大人や子どものコボルトがいるのだろうね。」
パーティクル公爵が、何かを想像しているように目を細めて、遠くを見つめた。
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