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第54話 内装業者のサニーさん②
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俺は前世でも今生でも、長年背の高い成人男性をやっているのだが、そういう人間からすると、小柄で手足の短い生き物にちょこまかと目の前を動かれると、庇護欲が発動してしまって困る。サニーさんは立派な成人男性だからなあ。いかん、いかんぞお、頭を撫でたりしてはいけないんだ……。
「そういや、王宮から薬用せっけんが欲しいとせっつかれているんだが、ジョージ、まだ商人ギルドに許可証を受け取りに行っていないのか?ジョスラン侍従長からジョージが登録してくれている筈だと言われたんだが。」
「──あ。すっかり忘れていました。」
俺はぽかんと口をあけた。
ああ、そういえばそんなものもあったな。すっかり忘れていた。ここ最近慌ただし過ぎたからなあ……。商人ギルドに行かないと。
「急いで許可証を取りに行ったほうがいいですか?せっつかれているのであれば。」
「ああ、そうして貰えると助かるよ。」
エドモンドさんがうなずく。
「許可証を受け取る前だと、ジョージと直接取り引きが出来ないからな。そうすると、商人ギルドに手数料を引かれることになるからな。ジョージの取り分が減る。」
俺は別にそれでも構わないんだがな。まあエドモンドさんがせっかく俺の為に気遣ってくれているのだからそうするとするか。
「そういえば、敵を感知してゴーレムを出す魔宝石は、魔導具にしなくとも、精霊魔法自体を合成することで作れるのだそうです。さっそく大量に作って貰って、コボルトの集落に設置して貰いましたよ。」
「そうなのか?じゃあ、うちの分を早速頼みたいな。それがあれば、夜間護衛に回している従業員の数が減らせるからな。」
「分かりました、それであれば、直接ご本人に頼んでみてください。」
「──どういうことだ?」
「連れてきました、コボルトのお2人を。
どちらも店に立つ予定の方で、1人は精霊魔法使いで、店が出来たら、店長をしていただく予定の方です。」
「そいつはちょうどいいな、コボルトの2人に、ぜひサニーを紹介しよう。」
「はい、わたくしもぜひ紹介していただきたく思います。コボルトの伝統ある内装にとても興味がありました。店の内装をてがけることができて嬉しく思います。」
サニーさんも心から嬉しそうにそう言ってくれる。いい人そうだな。
「ではお2人を外に出しますね。」
俺はマジックバッグに手を入れる。
「──まさか、コボルトたちを、その中に入れて連れてきたのか!?」
「はい、人間に姿を見られると危険だと思いましたので……。」
「大胆なことをするもんだ……。」
やっぱりそうなのかな?
最初にアシュリーさん、次にララさんをマジックバッグから引っ張り出す。
2人は目をしばたかせて、キョロキョロと不思議そうに、周囲を見渡していた。
「もうついたの?ジョージ。」
「ええ、ここは俺に協力してくれているルピラス商会の中ですよ。紹介します。コボルトの店の出店に協力してくれる、ルピラス紹介の副長である、エドモンドさんです。」
エドモンドさんもサニーさんも、あんぐりと口をあけたまま、2人をじっと見つめている……。どうしちゃったんだろうな?
人間以外が話す姿に違和感があるのかな?
「驚いた……。」
「ええ……。」
やがてエドモンドさんもサニーさんも、2人を見つめる目がうっとりとする。
「コボルトという存在が、こんなに美しいものだとは……。これを人間は魔物と言っているだって?冗談じゃない、こんなにも美しく愛らしい生き物が、魔物なもんか!」
「コボルトは初めてお会いしますが、コボルトという種族は、皆さんこのように美しく愛らしいお姿なのですか?」
ああ、そういうことか。アシュリーさんは美しいアフガンハウンドの姿、ララさんは愛らしいパピヨンの姿だからな。
人間から見て不快感などあろう筈がない。それが人の言葉を話すというファンタジーな雰囲気。俺もララさんを初めて見た時は、思わず声が出たからなあ。
「いえ、このお2人が特別美しいのです。
まあ確かに、人間から見ると、コボルトは愛らしい姿かたちだと思いますけどね。」
「まあ、ジョージといい、皆さんお上手なのね。恥ずかしいわ。」
「ええ、こう面と向かって堂々と褒めちぎられると……。」
アシュリーさんとララさんが照れている。
アシュリーさんとララさんは、エドモンドさんとサニーさんと握手をかわした。
「では、このまま店の内装のうち合わせに入ってもよろしいですか?」
サニーさんが俺たちの顔を見てくる。
「ええ、もちろんです。
その間に俺は、薬用せっけんの許可証を、商人ギルドに取りに行ってきますね。」
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「そういや、王宮から薬用せっけんが欲しいとせっつかれているんだが、ジョージ、まだ商人ギルドに許可証を受け取りに行っていないのか?ジョスラン侍従長からジョージが登録してくれている筈だと言われたんだが。」
「──あ。すっかり忘れていました。」
俺はぽかんと口をあけた。
ああ、そういえばそんなものもあったな。すっかり忘れていた。ここ最近慌ただし過ぎたからなあ……。商人ギルドに行かないと。
「急いで許可証を取りに行ったほうがいいですか?せっつかれているのであれば。」
「ああ、そうして貰えると助かるよ。」
エドモンドさんがうなずく。
「許可証を受け取る前だと、ジョージと直接取り引きが出来ないからな。そうすると、商人ギルドに手数料を引かれることになるからな。ジョージの取り分が減る。」
俺は別にそれでも構わないんだがな。まあエドモンドさんがせっかく俺の為に気遣ってくれているのだからそうするとするか。
「そういえば、敵を感知してゴーレムを出す魔宝石は、魔導具にしなくとも、精霊魔法自体を合成することで作れるのだそうです。さっそく大量に作って貰って、コボルトの集落に設置して貰いましたよ。」
「そうなのか?じゃあ、うちの分を早速頼みたいな。それがあれば、夜間護衛に回している従業員の数が減らせるからな。」
「分かりました、それであれば、直接ご本人に頼んでみてください。」
「──どういうことだ?」
「連れてきました、コボルトのお2人を。
どちらも店に立つ予定の方で、1人は精霊魔法使いで、店が出来たら、店長をしていただく予定の方です。」
「そいつはちょうどいいな、コボルトの2人に、ぜひサニーを紹介しよう。」
「はい、わたくしもぜひ紹介していただきたく思います。コボルトの伝統ある内装にとても興味がありました。店の内装をてがけることができて嬉しく思います。」
サニーさんも心から嬉しそうにそう言ってくれる。いい人そうだな。
「ではお2人を外に出しますね。」
俺はマジックバッグに手を入れる。
「──まさか、コボルトたちを、その中に入れて連れてきたのか!?」
「はい、人間に姿を見られると危険だと思いましたので……。」
「大胆なことをするもんだ……。」
やっぱりそうなのかな?
最初にアシュリーさん、次にララさんをマジックバッグから引っ張り出す。
2人は目をしばたかせて、キョロキョロと不思議そうに、周囲を見渡していた。
「もうついたの?ジョージ。」
「ええ、ここは俺に協力してくれているルピラス商会の中ですよ。紹介します。コボルトの店の出店に協力してくれる、ルピラス紹介の副長である、エドモンドさんです。」
エドモンドさんもサニーさんも、あんぐりと口をあけたまま、2人をじっと見つめている……。どうしちゃったんだろうな?
人間以外が話す姿に違和感があるのかな?
「驚いた……。」
「ええ……。」
やがてエドモンドさんもサニーさんも、2人を見つめる目がうっとりとする。
「コボルトという存在が、こんなに美しいものだとは……。これを人間は魔物と言っているだって?冗談じゃない、こんなにも美しく愛らしい生き物が、魔物なもんか!」
「コボルトは初めてお会いしますが、コボルトという種族は、皆さんこのように美しく愛らしいお姿なのですか?」
ああ、そういうことか。アシュリーさんは美しいアフガンハウンドの姿、ララさんは愛らしいパピヨンの姿だからな。
人間から見て不快感などあろう筈がない。それが人の言葉を話すというファンタジーな雰囲気。俺もララさんを初めて見た時は、思わず声が出たからなあ。
「いえ、このお2人が特別美しいのです。
まあ確かに、人間から見ると、コボルトは愛らしい姿かたちだと思いますけどね。」
「まあ、ジョージといい、皆さんお上手なのね。恥ずかしいわ。」
「ええ、こう面と向かって堂々と褒めちぎられると……。」
アシュリーさんとララさんが照れている。
アシュリーさんとララさんは、エドモンドさんとサニーさんと握手をかわした。
「では、このまま店の内装のうち合わせに入ってもよろしいですか?」
サニーさんが俺たちの顔を見てくる。
「ええ、もちろんです。
その間に俺は、薬用せっけんの許可証を、商人ギルドに取りに行ってきますね。」
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