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第36話 森の動物たちの飾り切りの前菜、美麗海鮮ちらし寿司、花飾り切りのフルーツポンチ③
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「きれい……!」
パトリシア王女は、上から下から、グラスを覗き込んでいる。
「はしたないですよ、王女。」
教育係なのか執事なのか、厳しい顔つきの従者に言われて、パトリシア王女は姿勢を正した。
「食べづらければ、皿に移してお召し上がり下さい。」
俺はサラダを取り分ける用のサーバースプーンとサーバーフォークと皿を置いた。
そのままスプーンで食べるものだが、王族はそうはいかないだろうからな。
「そうしていただけるかしら?」
パトリシア王女の言葉に、料理長がサーバースプーンとサーバーフォークを使って、皿にちらし寿司を取り分ける。
しまった、俺がやるべきだったか。
パトリシア王女はちらし寿司を口にすると、噛みしめるように味わった。
「とても美味しいわ……!
見た目もきれいで華やか、食べたことのない味なのに、さっぱりしていて癖になるのね。本当に素晴らしいわ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
パトリシア王女はちらし寿司をきれいに平らげた。
「最後はデザートのフルーツポンチです。
お好みのフルーツを、こちらのグラスにとってお召し上がり下さい。」
「わあ……!」
俺はフルーツの花と、フルーツポンチの液の入ったグラスを、パトリシア王女の前に置いた。
「これは飲み物なの?」
「飲んでも構いませんし、デザートとしてもお召し上がりになれます。」
パトリシア王女は好きな果物をグラスに移して貰って、一口飲んだ。
「美味しい……、爽やかで甘すぎないのね。
フルーツの見た目もとてもきれい。」
パトリシア王女は満足そうだった。
「……聞いていた以上、期待以上の出来だったわ、本当に満足よ。」
「恐れ入ります。」
終わった……!
良かった、兵士に槍を向けられた時は、どうなるかと思ったが。
「さすがセレス様ね、素晴らしい目をお持ちだわ。
あなたが出すという店も楽しみね。」
「ご存知だったのですか?
……私が出そうとしている店が、どんな店かということもでしょうか。」
「王女の前です、許可なく発言するのは控えなさい。」
先程の教育係のような従者に、先んじて言葉を制されてしまう。
「構わないわジョスラン。
──発言を許可します。」
パトリシア王女はニッコリと微笑んだ。
「ありがとうございます。
無礼をお詫びいたします。」
「ええ。セレス様から伺っているわ。
どんな目的があって店を出そうとしているかということもね。
私たち王族は、みなコボルトに感謝をしているのです。ですが民衆の価値観を変えることが出来ず、胸を痛めておりました。」
「そうだったのですね……。」
セレス様というのが、料理対決で審査委員長をしていた女性だろうか?
王族と直接話しが出来るということは、かなり高位の貴族なのだろう。
まさかこんなにすんなり協力を得られるとは思わなかった。セレス様に感謝だな。
「食器やお茶は、試してみないと、王宮で使わせていただくか分かりませんが、我々といたしましては、あなた方の試みを応援したいと思っております。
近いうちにそちらの食器とお茶も、ご持参いただけますか?」
パトリシア王女がにっこりと微笑んだ。
「はい、ぜひ。ルピラス商会がいずれ、侍従長にお目通りを願う筈です。
他の商品を王宮で取り扱っていただける手はずになっておりますので、そちらを納入する際、話をすると申しておりました。」
俺は勢い込んでそう話す。
「あなたはいらしていただけないの?」
パトリシア王女の目が、何やらキラリと光った気がした。
「は……。私、ですか?
まあ、必要とあらば、同席させていただくのはやぶさかではありませんが……。」
「ぜひそうしていただけるかしら。
またぜひお会いしたいわ。本当に、噂以上……、いえ、期待以上だったもの……。」
そう言って、パトリシア王女はうっとりと俺の顔を眺める。その目線に、俺はなんだか嫌な予感がした。
……まさか、パトリシア王女がお目当てだったのは、俺の料理じゃなく、──俺自身だったんじゃないんだろうな。
俺は料理対決の際、散々俺の見た目を褒めて、俺の店がないことを残念がっていた、セレス様の姿を思い出していた。
パトリシア王女は、上から下から、グラスを覗き込んでいる。
「はしたないですよ、王女。」
教育係なのか執事なのか、厳しい顔つきの従者に言われて、パトリシア王女は姿勢を正した。
「食べづらければ、皿に移してお召し上がり下さい。」
俺はサラダを取り分ける用のサーバースプーンとサーバーフォークと皿を置いた。
そのままスプーンで食べるものだが、王族はそうはいかないだろうからな。
「そうしていただけるかしら?」
パトリシア王女の言葉に、料理長がサーバースプーンとサーバーフォークを使って、皿にちらし寿司を取り分ける。
しまった、俺がやるべきだったか。
パトリシア王女はちらし寿司を口にすると、噛みしめるように味わった。
「とても美味しいわ……!
見た目もきれいで華やか、食べたことのない味なのに、さっぱりしていて癖になるのね。本当に素晴らしいわ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
パトリシア王女はちらし寿司をきれいに平らげた。
「最後はデザートのフルーツポンチです。
お好みのフルーツを、こちらのグラスにとってお召し上がり下さい。」
「わあ……!」
俺はフルーツの花と、フルーツポンチの液の入ったグラスを、パトリシア王女の前に置いた。
「これは飲み物なの?」
「飲んでも構いませんし、デザートとしてもお召し上がりになれます。」
パトリシア王女は好きな果物をグラスに移して貰って、一口飲んだ。
「美味しい……、爽やかで甘すぎないのね。
フルーツの見た目もとてもきれい。」
パトリシア王女は満足そうだった。
「……聞いていた以上、期待以上の出来だったわ、本当に満足よ。」
「恐れ入ります。」
終わった……!
良かった、兵士に槍を向けられた時は、どうなるかと思ったが。
「さすがセレス様ね、素晴らしい目をお持ちだわ。
あなたが出すという店も楽しみね。」
「ご存知だったのですか?
……私が出そうとしている店が、どんな店かということもでしょうか。」
「王女の前です、許可なく発言するのは控えなさい。」
先程の教育係のような従者に、先んじて言葉を制されてしまう。
「構わないわジョスラン。
──発言を許可します。」
パトリシア王女はニッコリと微笑んだ。
「ありがとうございます。
無礼をお詫びいたします。」
「ええ。セレス様から伺っているわ。
どんな目的があって店を出そうとしているかということもね。
私たち王族は、みなコボルトに感謝をしているのです。ですが民衆の価値観を変えることが出来ず、胸を痛めておりました。」
「そうだったのですね……。」
セレス様というのが、料理対決で審査委員長をしていた女性だろうか?
王族と直接話しが出来るということは、かなり高位の貴族なのだろう。
まさかこんなにすんなり協力を得られるとは思わなかった。セレス様に感謝だな。
「食器やお茶は、試してみないと、王宮で使わせていただくか分かりませんが、我々といたしましては、あなた方の試みを応援したいと思っております。
近いうちにそちらの食器とお茶も、ご持参いただけますか?」
パトリシア王女がにっこりと微笑んだ。
「はい、ぜひ。ルピラス商会がいずれ、侍従長にお目通りを願う筈です。
他の商品を王宮で取り扱っていただける手はずになっておりますので、そちらを納入する際、話をすると申しておりました。」
俺は勢い込んでそう話す。
「あなたはいらしていただけないの?」
パトリシア王女の目が、何やらキラリと光った気がした。
「は……。私、ですか?
まあ、必要とあらば、同席させていただくのはやぶさかではありませんが……。」
「ぜひそうしていただけるかしら。
またぜひお会いしたいわ。本当に、噂以上……、いえ、期待以上だったもの……。」
そう言って、パトリシア王女はうっとりと俺の顔を眺める。その目線に、俺はなんだか嫌な予感がした。
……まさか、パトリシア王女がお目当てだったのは、俺の料理じゃなく、──俺自身だったんじゃないんだろうな。
俺は料理対決の際、散々俺の見た目を褒めて、俺の店がないことを残念がっていた、セレス様の姿を思い出していた。
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