92 / 470
第33話 おつまみミックス納豆と鶏むね肉の一口チーズボール唐揚げ②
しおりを挟む
「まだ信じられなくて、片付けられないでいたの。未練がましく毎日掃除して。
でも、ジョージが使うなら、兄もきっと喜んでくれるわ。」
「アシュリーさん……。」
そんなことがあったのに、彼女は人間に優しかった。どんな気持ちで接していてくれたのだろうか。
「……ねえ、ジョージ。」
部屋を立ち去りながら、アシュリーさんが背中で俺に聞いてくる。
「うん?」
「私たち、きっと人間と手を取り合えるわよね。兄のような死に方をする人は、きっともうあらわれなくなるわよね。」
アシュリーさんの声は涙で震えていた。
俺はなんとなく、カイアを抱いて眠った。
次の日みんなに見送られながら、俺は馬車で町へと戻り、すぐさまヴァッシュさんの工房へと向かった。
「おお、ジョージじゃないか!」
工房の入り口でロンメルに出くわした。
「家庭用食器洗浄機の様子を見に来てくれたのか?」
「いや、今日は別件なんだ。」
「別件?」
話しながら2人揃って工房の中へと入る。
カウンターにいたいつもの職人が、ヴァッシュさんを奥に呼びに行った。
「おお、ジョージにロンメルさんか。すまんな、まだ改良に時間がかかっとる。」
「そうでしたか。気が早すぎたかな。」
「今日は、俺は別件で来たんです。
魔道具を作っていただきたくて。」
「魔道具?」
ヴァッシュさんが首をかしげる。
「魔宝石を、魔道具に組み込まれたことはありますか?」
「あるにはあるぞ。
なんだ、何を作りたいんだ?」
「敵を感知する魔宝石に連動させて、ゴーレムの出る魔法石を反応させる魔道具を作りたいと思っています。」
「2つの魔宝石を連動!?
そりゃ無理だジョージ。
魔石を連動させるのとはわけが違う。」
「どう違うんですか?」
「魔道具はそもそも、魔石を発動させる為に作られているもので、魔石単体では動かないから存在するものだ。
だが、魔宝石はそれ単体で発動する仕組みだから、魔石を発動させる仕組みに魔法石が反応せんのだよ。」
「ですが、あるにはあるんですよね?」
「ひとつならな。魔宝石の発動の仕組みは、衝撃を与えるか、それに触れて念じるかの2つに分かれる。
魔宝石に衝撃を与える役割を、魔石に担わせたものなら存在する。時間が来たら爆発するようにな。」
ようするに、魔宝石の時限爆弾か。
「だが、魔宝石同士の連動は出来ん。
片方の魔法石の発動結果に、別の魔宝石を連動させて発動させるような仕組みは、どの工房でも持っとらんよ。
それが出来たら革命だ。」
そんな……。
「師匠、私、やってみたいです。」
そこにミスティさんが顔を出す。
「魔宝石の連動は、ずっと研究してみたいと思ってたんです。やらせてもらえませんか?もちろん、食器洗浄機の改良も忘れずにすすめますので。」
「しかしな……。」
「なんとかお願いします。
研究費用は出しますので。
コボルトの集落を守れるかどうかが、それにかかってるんです。」
「コボルトの集落?」
俺はこれからやろうとしていることを、ヴァッシュさんに説明した。
「そんな事情があったのか……。
わかった。そういうことなら、やってみよう。だが、ミスティ、本来の仕事に加えてそいつをすすめるとなると、時間が足らんのじゃないか?」
「私のつくった魔道具で、誰かを守れるのなら、寝る時間なんて惜しくないです。
絶対成功させてみせます。」
「睡眠は取ってくださいね……。」
不眠不休でやりとげそうな勢いのミスティさんに、俺は心配になって告げる。
「またしばらくしたらいらして下さい。
結果を報告しますので。」
「分かりました、どうか、よろしくおねがいします。」
お礼を言って工房を出た俺に、ロンメルが声をかけて引き止めてくる。
「なあ、ジョージ、ひょっとして、俺の食器洗浄機も、開発費用が本当ならかかるんじゃないのか?」
するどいな。
「まあ……そこはいいじゃないか。」
「よくないさ。お前がたてかえてくれてるんだろう?」
「開発出来て売りに出せば、別に元は取れるんだ、心配するなよ。」
ロンメルは何やら思案していた。
「町にコボルトの店を出すと言ったな、ジョージ。」
「ああ、そのつもりだ。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
でも、ジョージが使うなら、兄もきっと喜んでくれるわ。」
「アシュリーさん……。」
そんなことがあったのに、彼女は人間に優しかった。どんな気持ちで接していてくれたのだろうか。
「……ねえ、ジョージ。」
部屋を立ち去りながら、アシュリーさんが背中で俺に聞いてくる。
「うん?」
「私たち、きっと人間と手を取り合えるわよね。兄のような死に方をする人は、きっともうあらわれなくなるわよね。」
アシュリーさんの声は涙で震えていた。
俺はなんとなく、カイアを抱いて眠った。
次の日みんなに見送られながら、俺は馬車で町へと戻り、すぐさまヴァッシュさんの工房へと向かった。
「おお、ジョージじゃないか!」
工房の入り口でロンメルに出くわした。
「家庭用食器洗浄機の様子を見に来てくれたのか?」
「いや、今日は別件なんだ。」
「別件?」
話しながら2人揃って工房の中へと入る。
カウンターにいたいつもの職人が、ヴァッシュさんを奥に呼びに行った。
「おお、ジョージにロンメルさんか。すまんな、まだ改良に時間がかかっとる。」
「そうでしたか。気が早すぎたかな。」
「今日は、俺は別件で来たんです。
魔道具を作っていただきたくて。」
「魔道具?」
ヴァッシュさんが首をかしげる。
「魔宝石を、魔道具に組み込まれたことはありますか?」
「あるにはあるぞ。
なんだ、何を作りたいんだ?」
「敵を感知する魔宝石に連動させて、ゴーレムの出る魔法石を反応させる魔道具を作りたいと思っています。」
「2つの魔宝石を連動!?
そりゃ無理だジョージ。
魔石を連動させるのとはわけが違う。」
「どう違うんですか?」
「魔道具はそもそも、魔石を発動させる為に作られているもので、魔石単体では動かないから存在するものだ。
だが、魔宝石はそれ単体で発動する仕組みだから、魔石を発動させる仕組みに魔法石が反応せんのだよ。」
「ですが、あるにはあるんですよね?」
「ひとつならな。魔宝石の発動の仕組みは、衝撃を与えるか、それに触れて念じるかの2つに分かれる。
魔宝石に衝撃を与える役割を、魔石に担わせたものなら存在する。時間が来たら爆発するようにな。」
ようするに、魔宝石の時限爆弾か。
「だが、魔宝石同士の連動は出来ん。
片方の魔法石の発動結果に、別の魔宝石を連動させて発動させるような仕組みは、どの工房でも持っとらんよ。
それが出来たら革命だ。」
そんな……。
「師匠、私、やってみたいです。」
そこにミスティさんが顔を出す。
「魔宝石の連動は、ずっと研究してみたいと思ってたんです。やらせてもらえませんか?もちろん、食器洗浄機の改良も忘れずにすすめますので。」
「しかしな……。」
「なんとかお願いします。
研究費用は出しますので。
コボルトの集落を守れるかどうかが、それにかかってるんです。」
「コボルトの集落?」
俺はこれからやろうとしていることを、ヴァッシュさんに説明した。
「そんな事情があったのか……。
わかった。そういうことなら、やってみよう。だが、ミスティ、本来の仕事に加えてそいつをすすめるとなると、時間が足らんのじゃないか?」
「私のつくった魔道具で、誰かを守れるのなら、寝る時間なんて惜しくないです。
絶対成功させてみせます。」
「睡眠は取ってくださいね……。」
不眠不休でやりとげそうな勢いのミスティさんに、俺は心配になって告げる。
「またしばらくしたらいらして下さい。
結果を報告しますので。」
「分かりました、どうか、よろしくおねがいします。」
お礼を言って工房を出た俺に、ロンメルが声をかけて引き止めてくる。
「なあ、ジョージ、ひょっとして、俺の食器洗浄機も、開発費用が本当ならかかるんじゃないのか?」
するどいな。
「まあ……そこはいいじゃないか。」
「よくないさ。お前がたてかえてくれてるんだろう?」
「開発出来て売りに出せば、別に元は取れるんだ、心配するなよ。」
ロンメルは何やら思案していた。
「町にコボルトの店を出すと言ったな、ジョージ。」
「ああ、そのつもりだ。」
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
448
お気に入りに追加
1,851
あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。


異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる