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第30話 再びコボルトの集落へ①
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俺は朝食を食べた後、王立図書館に来ていた。冒険者登録証があれば、持ち出しは不可だが自由に閲覧出来ると、冒険者ギルドの受付嬢に教えて貰った為だ。
コボルトの歴史について調べるつもりでいた。
職員に教えて貰って、コボルトの歴史や、コボルトについて書かれている書籍を手に取った。
コボルトが魔物から獣人と呼ばれるようになった歴史はまだまだ浅く、ほんの100年ほど前の出来事だった。
それまでのコボルトは討伐対象であった。だが、獣人と呼ばれる以前にも集落を作り、割と文化的な暮らしを営んでいたようだ。
これは他の人型の魔物も同様で、ゴブリンは必ず集落を作って集団で生活するものらしい。
だが、女性が生まれにくく、人間の女性をさらって子どもを作ろうとする為、昔から討伐対象だったようだ。
金品にも興味があり、たまに強盗の真似事をしたりもする。言葉が通じない蛮族のような印象で捉えられているようだった。
言葉を話さないかというとそうでなく、彼ら独自の言語が存在する。
オークは動物に近く、オーガはゴブリンよりも力があるが、ゴブリンよりも知性がない野蛮な魔物らしい。特に興味深いのはトロールの項目だった。
トロールは知性も力もあり、悪戯好きで人のものを盗む傾向にある、変身能力と再生能力を持つ。知性の高いものとそうでないものの差が大きく、知性のあるものは魔法や薬草治療、金属工芸に秀でている。
日の光に当たると石に変わる為、日中は姿を表さない。元は精霊で、気に入った人間には富を、気に入らない人間には不運と破壊をもたらすとされていた。
──トロールは元は精霊だったのだ。
だが、今は魔物とされている。
コボルトは元は魔物。だが今は獣人だ。
金属工芸や薬草治療が出来るというのはかなりの知性の高さを示している。それにもかかわらず、トロールは魔物になり、コボルトは獣人になった。
どちらもなった時期が同じなのだ。
おそらく同時期に、影響を与える何かがあったと考えていいと思う。
俺はこの時期になにか特徴的な出来事がないかを調べることにした。
人間の世界の歴史書を開いて、当時の時代背景や出来事を探った。
「──勇者……?」
この頃、瘴気が強くなり、神は勇者と聖女をこの世界に遣わした。
その時、勇者の仲間の一人に、コボルトの冒険者がいたと記載されていた。このことはあまり一般には知られていないらしい。
「勇者に味方したことで、魔物から獣人に変わったのだろうか?」
その時に、神か聖女か分からないが、なにがしかの力が働き、コボルトを瘴気から守った可能性は捨てきれない。
同時にトロールが瘴気にやられてしまった可能性も。
「100年くらい前であれば、当時のことを知るコボルトが、まだ集落の中にいるかも知れないな。」
コボルトが果たしてどの程度生きるか分からないが、俺はそれをあたってみることにした。
「カイア、お出かけするぞ。」
俺は一度家に戻ると、カイアをアイテムバッグに入れて、乗合馬車に乗り、コボルトの集落へと出発した。
カイアについて聞きたいのだから、当時を知るコボルトに、カイアを直接見て貰ったほうが、話が早いだろうと思ったのだ。
コボルトの集落は前回と雰囲気が違っていた。アスターさんたちがいた時とは、俺を見る目線が違う。
俺は冒険者ギルドに立ち寄った。
前回と同じ微笑みをたずさえたララさんが出迎えてくれ、俺は思わずほっとした。
「もしご存知であれば、長く生きているコボルトを紹介して貰えないでしょうか?」
「長く生きているコボルトを……ですか?
知りたい内容はどんなことでしょう?」
ララさんが、少し眉根を寄せる。俺はそれに少し違和感を感じたが話を続けた。
「実は……、コボルトがある時から、瘴気の影響から逃れて獣人になったと、冒険者ギルドから伺いまして。
王立図書館で調べたところ、100年ほど前に勇者が現れた際に、同行したコボルトがいたという記録があったのです。」
冒険者ギルドの中が、少しピリついた気配がした。
コボルトの歴史について調べるつもりでいた。
職員に教えて貰って、コボルトの歴史や、コボルトについて書かれている書籍を手に取った。
コボルトが魔物から獣人と呼ばれるようになった歴史はまだまだ浅く、ほんの100年ほど前の出来事だった。
それまでのコボルトは討伐対象であった。だが、獣人と呼ばれる以前にも集落を作り、割と文化的な暮らしを営んでいたようだ。
これは他の人型の魔物も同様で、ゴブリンは必ず集落を作って集団で生活するものらしい。
だが、女性が生まれにくく、人間の女性をさらって子どもを作ろうとする為、昔から討伐対象だったようだ。
金品にも興味があり、たまに強盗の真似事をしたりもする。言葉が通じない蛮族のような印象で捉えられているようだった。
言葉を話さないかというとそうでなく、彼ら独自の言語が存在する。
オークは動物に近く、オーガはゴブリンよりも力があるが、ゴブリンよりも知性がない野蛮な魔物らしい。特に興味深いのはトロールの項目だった。
トロールは知性も力もあり、悪戯好きで人のものを盗む傾向にある、変身能力と再生能力を持つ。知性の高いものとそうでないものの差が大きく、知性のあるものは魔法や薬草治療、金属工芸に秀でている。
日の光に当たると石に変わる為、日中は姿を表さない。元は精霊で、気に入った人間には富を、気に入らない人間には不運と破壊をもたらすとされていた。
──トロールは元は精霊だったのだ。
だが、今は魔物とされている。
コボルトは元は魔物。だが今は獣人だ。
金属工芸や薬草治療が出来るというのはかなりの知性の高さを示している。それにもかかわらず、トロールは魔物になり、コボルトは獣人になった。
どちらもなった時期が同じなのだ。
おそらく同時期に、影響を与える何かがあったと考えていいと思う。
俺はこの時期になにか特徴的な出来事がないかを調べることにした。
人間の世界の歴史書を開いて、当時の時代背景や出来事を探った。
「──勇者……?」
この頃、瘴気が強くなり、神は勇者と聖女をこの世界に遣わした。
その時、勇者の仲間の一人に、コボルトの冒険者がいたと記載されていた。このことはあまり一般には知られていないらしい。
「勇者に味方したことで、魔物から獣人に変わったのだろうか?」
その時に、神か聖女か分からないが、なにがしかの力が働き、コボルトを瘴気から守った可能性は捨てきれない。
同時にトロールが瘴気にやられてしまった可能性も。
「100年くらい前であれば、当時のことを知るコボルトが、まだ集落の中にいるかも知れないな。」
コボルトが果たしてどの程度生きるか分からないが、俺はそれをあたってみることにした。
「カイア、お出かけするぞ。」
俺は一度家に戻ると、カイアをアイテムバッグに入れて、乗合馬車に乗り、コボルトの集落へと出発した。
カイアについて聞きたいのだから、当時を知るコボルトに、カイアを直接見て貰ったほうが、話が早いだろうと思ったのだ。
コボルトの集落は前回と雰囲気が違っていた。アスターさんたちがいた時とは、俺を見る目線が違う。
俺は冒険者ギルドに立ち寄った。
前回と同じ微笑みをたずさえたララさんが出迎えてくれ、俺は思わずほっとした。
「もしご存知であれば、長く生きているコボルトを紹介して貰えないでしょうか?」
「長く生きているコボルトを……ですか?
知りたい内容はどんなことでしょう?」
ララさんが、少し眉根を寄せる。俺はそれに少し違和感を感じたが話を続けた。
「実は……、コボルトがある時から、瘴気の影響から逃れて獣人になったと、冒険者ギルドから伺いまして。
王立図書館で調べたところ、100年ほど前に勇者が現れた際に、同行したコボルトがいたという記録があったのです。」
冒険者ギルドの中が、少しピリついた気配がした。
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