51 / 470
第19話 ネギ塩ルルクス(トマト)、ムルソー(こごみ)のお浸し、チーク茸(エリンギ)とオーク肉(豚肉)のオイスターソース煮込み③
しおりを挟む
「気に入ったか。」
「ええ。実に好きな味です。」
すると奥のカウンターに座っていた、冒険者らしき集団の中の1人の女性が、あやしく微笑みながら俺に近付いて来た。
「健啖家なのね。」
「はあ、まあ……。」
美人だが化粧が濃くて、香水か何かの匂いが臭く、この店には不似合いで、なおかつ胸元の防具が大胆にあいていて、大きな胸を見せつけてくる。普通は下に何か着るものじゃないのか?あんなんで守れるのか?
「……どう?今夜、アタシと。」
は?
こんな真っ昼間っから、初対面の男相手に夜の誘いだと?酒場じゃないんだぞ、どうなってんだ、この世界の常識は。
「いえ、結構です……。」
俺は嫌なものを見た、という表情で、目線も合わせずそれを断った。
「なっ……!」
断られるなんて予想外だったのだろう。女性の顔が怒りと羞恥で真っ赤に染まる。
「はーい、おまちどお。」
その時ナナリーさんが、おかわりのスープを持ってくる。
「パンは?」
「お願いします。実にうまいですね。
ご自分で考えられたんですか?」
「え?ええ。
お母さんが作ってくれたものに、自分なりに改良を加えて……。」
「酒と生姜がきいてますね。」
「はい、その組み合わせにたどり着くのには、結構苦労しました。」
ナナリーさんとは朗らかに話している俺に、女性が、ダンッ!と机を叩き、ナナリーさんがビクッとする。
「──ちょっと、アタシより、こんな女の方がいいって言うの?」
腕組みしながら俺とナナリーさんを睨む。
俺はちょっと女性を睨みながら、
「ええ、そうですね。
臭い匂いを漂わせて、派手な露出で場所もわきまえず男を口説く女性より、美味い飯が作れて、笑顔の明るい女性の方が、俺は好みですよ。」
「え?ええっ?えっと……。」
急に話題に巻き込まれてナナリーさんがオロオロしている。
実際これは本音だ。俺は一緒に暮らすなら、食の好みがあって愛嬌のある女性と決めている。価値観が合わないとキツイのだ。
「こんな太って年食った女のどこがいいのよ!この店にいる男は、全員アタシの方がいいって言うに決まってるわ!」
ナナリーさんが落ち込んだ表情を見せる。
「……いい加減にせんか。うちの孫娘と友人に絡むのはやめてもらおう。」
ヴァッシュさんが女性を睨む。
「そうだぞ、帰れ!ナナリーさんになんてこと言うんだ!」
「一晩寝るだけならお前を選ぶかも知れねえけど、嫁に貰うならナナリーさんだ!」
「えっ、ええっ!?」
店の常連客たちもワイワイと騒ぎ出し、ナナリーさんはますますオロオロしだす。
女性は悔しそうに俺たちを睨むと、
「出てくわよ!」
と叫んでドアに向かった。
「あ、あの、お代……。」
「後ろの男たちが払うわ!」
「おい、待てよ、ミーシャ!」
カウンターにいた男たちが、慌ててミーシャと呼ばれた女性を追いかけつつ、
「すまんな、これ、全員分だ。」
と、金を払って出ていった。
「あ、あの、私、奥に戻りますね!」
ナナリーさんは照れたような表情で、カウンターの奥へと消えて行った。
「兄ちゃん、若いのに見る目あんな。」
「けど、ナナリーさんは駄目だぜ?滅多な奴には渡せねえからな。」
職人らしき男たちが口々にそう言ってくる。
「意外と人気あるんじゃな、あいつ……。」
ヴァッシュさんが驚いたようにそう言った。
「実際素敵な人ですよ。」
俺は微笑みながらヴァッシュさんに言う。
「……本気か?」
「はい。」
「ジョージがもう少し年齢が上か、ナナリーがもう少し若ければ、くっつけたいとこだが、さすがに釣り合いが取れんわい。」
ヴァッシュさんは残念そうに言った。
俺の元の年齢なら、釣り合いが取れるどころか、若過ぎるくらいなんだがなあ。
いつもニコニコしていて料理がうまく、家族と仲のいい女性というのは、俺のような年齢の男ほど安らげるのだ。家の中でがなり立てられること程嫌なことはない。
「ええ。実に好きな味です。」
すると奥のカウンターに座っていた、冒険者らしき集団の中の1人の女性が、あやしく微笑みながら俺に近付いて来た。
「健啖家なのね。」
「はあ、まあ……。」
美人だが化粧が濃くて、香水か何かの匂いが臭く、この店には不似合いで、なおかつ胸元の防具が大胆にあいていて、大きな胸を見せつけてくる。普通は下に何か着るものじゃないのか?あんなんで守れるのか?
「……どう?今夜、アタシと。」
は?
こんな真っ昼間っから、初対面の男相手に夜の誘いだと?酒場じゃないんだぞ、どうなってんだ、この世界の常識は。
「いえ、結構です……。」
俺は嫌なものを見た、という表情で、目線も合わせずそれを断った。
「なっ……!」
断られるなんて予想外だったのだろう。女性の顔が怒りと羞恥で真っ赤に染まる。
「はーい、おまちどお。」
その時ナナリーさんが、おかわりのスープを持ってくる。
「パンは?」
「お願いします。実にうまいですね。
ご自分で考えられたんですか?」
「え?ええ。
お母さんが作ってくれたものに、自分なりに改良を加えて……。」
「酒と生姜がきいてますね。」
「はい、その組み合わせにたどり着くのには、結構苦労しました。」
ナナリーさんとは朗らかに話している俺に、女性が、ダンッ!と机を叩き、ナナリーさんがビクッとする。
「──ちょっと、アタシより、こんな女の方がいいって言うの?」
腕組みしながら俺とナナリーさんを睨む。
俺はちょっと女性を睨みながら、
「ええ、そうですね。
臭い匂いを漂わせて、派手な露出で場所もわきまえず男を口説く女性より、美味い飯が作れて、笑顔の明るい女性の方が、俺は好みですよ。」
「え?ええっ?えっと……。」
急に話題に巻き込まれてナナリーさんがオロオロしている。
実際これは本音だ。俺は一緒に暮らすなら、食の好みがあって愛嬌のある女性と決めている。価値観が合わないとキツイのだ。
「こんな太って年食った女のどこがいいのよ!この店にいる男は、全員アタシの方がいいって言うに決まってるわ!」
ナナリーさんが落ち込んだ表情を見せる。
「……いい加減にせんか。うちの孫娘と友人に絡むのはやめてもらおう。」
ヴァッシュさんが女性を睨む。
「そうだぞ、帰れ!ナナリーさんになんてこと言うんだ!」
「一晩寝るだけならお前を選ぶかも知れねえけど、嫁に貰うならナナリーさんだ!」
「えっ、ええっ!?」
店の常連客たちもワイワイと騒ぎ出し、ナナリーさんはますますオロオロしだす。
女性は悔しそうに俺たちを睨むと、
「出てくわよ!」
と叫んでドアに向かった。
「あ、あの、お代……。」
「後ろの男たちが払うわ!」
「おい、待てよ、ミーシャ!」
カウンターにいた男たちが、慌ててミーシャと呼ばれた女性を追いかけつつ、
「すまんな、これ、全員分だ。」
と、金を払って出ていった。
「あ、あの、私、奥に戻りますね!」
ナナリーさんは照れたような表情で、カウンターの奥へと消えて行った。
「兄ちゃん、若いのに見る目あんな。」
「けど、ナナリーさんは駄目だぜ?滅多な奴には渡せねえからな。」
職人らしき男たちが口々にそう言ってくる。
「意外と人気あるんじゃな、あいつ……。」
ヴァッシュさんが驚いたようにそう言った。
「実際素敵な人ですよ。」
俺は微笑みながらヴァッシュさんに言う。
「……本気か?」
「はい。」
「ジョージがもう少し年齢が上か、ナナリーがもう少し若ければ、くっつけたいとこだが、さすがに釣り合いが取れんわい。」
ヴァッシュさんは残念そうに言った。
俺の元の年齢なら、釣り合いが取れるどころか、若過ぎるくらいなんだがなあ。
いつもニコニコしていて料理がうまく、家族と仲のいい女性というのは、俺のような年齢の男ほど安らげるのだ。家の中でがなり立てられること程嫌なことはない。
453
お気に入りに追加
1,851
あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる