44 / 424
第17話 夏バテ対策肉味噌パワー素麺②
しおりを挟む
ヴァッシュさんは感心したように俺にそう言った。
「このネジというやつを、うちの工房で使わせて貰えないか?これは産業革命だよジョージ。」
「別に構いませんよ?
たくさんありますのでどうぞ。」
俺はネジをビニール袋ごとヴァッシュさんに渡そうとした。だが、ヴァッシュさんは袋を受け取ろうとはせずに首を横に振った。
「──ジョージ、それは駄目だ。
まずは商人ギルドと職人ギルドでネジの商標登録をしよう。
このままでは他の人間の、もしくはうちの工房だけの儲けになっちまうからな。」
別に俺は構わんのだが、ことが商標登録となると、ヴァッシュさんの工房も、俺も登録しなかったりしたら、誰かに勝手に登録されて、好きに使えなくなる可能性があるわけだ。それはさすがにまずいな。
「分かりました。
やり方を教えていただけますか?」
「まだ受付をしている時間だ。
案内してやるからギルドに行こう。
食器洗浄機の改良はそれからだ。」
俺はヴァッシュさんに連れられて、職人ギルドと職人ギルド双方で、ネジ山付きのクギ(ワッシャーヘッドタッピンネジ)とプラスドライバーの特許申請と商標登録を行った。
「食器洗浄機の改良が終わったら、それも後で現物を持って登録に来よう。」
なるほど、そちらも新製品ということになるから、その必要があるわけか。
「ちょっと飯に付き合ってくれんか。」
帰り道、そう言うヴァッシュさんに付き合って、工房に向かう途中の大衆食堂に入った。
「あら、おじいちゃん、毎日飽きないわね。
そんなにここのご飯が好きなの?」
ふくよかで朗らかな笑顔の女性店員が出迎えてくれる。
「肉体労働者にはとくにたまらんわい。」
ヴァッシュさんがそう答える。
席に案内されて店員が注文を聞いて去って行ったあと、
「あれはうちの孫娘でな。
いき遅れで困っとるよ。」
と笑いながら言った。そうはいいつつも、孫娘が嫁にいかないことを喜んでるようにも見える。
年の頃は30歳前後だろうか?
道を行き交う子連れの女性がまだ10代の見た目が多いこの世界では、かなり遅い方なのだろう。
「はい、どうぞ、おまちどお。」
目の前に見慣れない食材の炒めものとパンと水が置かれる。
既にロンメルさんとの料理対決で少し腹が膨れていたものの、いい匂いに誘われて腹が減ってきた俺は、ガツガツとそれを食った。
〈ヌルーソ炒め〉
キャプソンとママガッソを塩コショウとニュニュファイで味付けしたもの。ヌルーソ地方の郷土料理。
〈キャプソン〉
キプリーが育つ過程で掘り起こした若木。
生育過程は筍に似ているがれっきとした山菜。育つと樹木のように大きく太くなる。
〈ママガッソ〉
ママラを発酵させた保存食品。ママラはヌルーソの湖でのみとれる淡水魚。
〈ニュニュファイ〉
ヌルーソ地方独自の魚醤。
つまりは魚と山菜の炒めものか。独自の魚醤や発酵食品を使った炒めものという点に興味が惹かれた。食べてみると、とくにママガッソがうまい!これはハイボールが進みそうな味だな。帰りに買っていきたいが、どこで買えるのだろうか。
「すみません、このママガッソって、どこかで買えますかね……?」
俺はヴァッシュさんに訪ねてみた。
「各家庭で作っとるもんだから、売っとるのは見たことがないな。なんだ、気に入ったのか?」
「そうなんですか……。残念です。
はい、酒に合う味だなと思って、買っていきたいと思ったのですが。」
「なんだ、ジョージはいけるクチか。
今度良かったら飲みに行こう。」
「はい、ぜひ。」
「おーい、ナナリー。」
ヴァッシュさんが手を上げてお孫さんを呼んだ。
「なあに?おじいちゃん。」
ナナリーさんがカウンターの奥からやって来る。
「ジョージがお前の作っとるママガッソを気に入ったらしい。
少し分けてやってもらえんか。」
「そうなの?ちょっと待っててね。」
そう言って再びカウンターの奥へと消えていく。
「このネジというやつを、うちの工房で使わせて貰えないか?これは産業革命だよジョージ。」
「別に構いませんよ?
たくさんありますのでどうぞ。」
俺はネジをビニール袋ごとヴァッシュさんに渡そうとした。だが、ヴァッシュさんは袋を受け取ろうとはせずに首を横に振った。
「──ジョージ、それは駄目だ。
まずは商人ギルドと職人ギルドでネジの商標登録をしよう。
このままでは他の人間の、もしくはうちの工房だけの儲けになっちまうからな。」
別に俺は構わんのだが、ことが商標登録となると、ヴァッシュさんの工房も、俺も登録しなかったりしたら、誰かに勝手に登録されて、好きに使えなくなる可能性があるわけだ。それはさすがにまずいな。
「分かりました。
やり方を教えていただけますか?」
「まだ受付をしている時間だ。
案内してやるからギルドに行こう。
食器洗浄機の改良はそれからだ。」
俺はヴァッシュさんに連れられて、職人ギルドと職人ギルド双方で、ネジ山付きのクギ(ワッシャーヘッドタッピンネジ)とプラスドライバーの特許申請と商標登録を行った。
「食器洗浄機の改良が終わったら、それも後で現物を持って登録に来よう。」
なるほど、そちらも新製品ということになるから、その必要があるわけか。
「ちょっと飯に付き合ってくれんか。」
帰り道、そう言うヴァッシュさんに付き合って、工房に向かう途中の大衆食堂に入った。
「あら、おじいちゃん、毎日飽きないわね。
そんなにここのご飯が好きなの?」
ふくよかで朗らかな笑顔の女性店員が出迎えてくれる。
「肉体労働者にはとくにたまらんわい。」
ヴァッシュさんがそう答える。
席に案内されて店員が注文を聞いて去って行ったあと、
「あれはうちの孫娘でな。
いき遅れで困っとるよ。」
と笑いながら言った。そうはいいつつも、孫娘が嫁にいかないことを喜んでるようにも見える。
年の頃は30歳前後だろうか?
道を行き交う子連れの女性がまだ10代の見た目が多いこの世界では、かなり遅い方なのだろう。
「はい、どうぞ、おまちどお。」
目の前に見慣れない食材の炒めものとパンと水が置かれる。
既にロンメルさんとの料理対決で少し腹が膨れていたものの、いい匂いに誘われて腹が減ってきた俺は、ガツガツとそれを食った。
〈ヌルーソ炒め〉
キャプソンとママガッソを塩コショウとニュニュファイで味付けしたもの。ヌルーソ地方の郷土料理。
〈キャプソン〉
キプリーが育つ過程で掘り起こした若木。
生育過程は筍に似ているがれっきとした山菜。育つと樹木のように大きく太くなる。
〈ママガッソ〉
ママラを発酵させた保存食品。ママラはヌルーソの湖でのみとれる淡水魚。
〈ニュニュファイ〉
ヌルーソ地方独自の魚醤。
つまりは魚と山菜の炒めものか。独自の魚醤や発酵食品を使った炒めものという点に興味が惹かれた。食べてみると、とくにママガッソがうまい!これはハイボールが進みそうな味だな。帰りに買っていきたいが、どこで買えるのだろうか。
「すみません、このママガッソって、どこかで買えますかね……?」
俺はヴァッシュさんに訪ねてみた。
「各家庭で作っとるもんだから、売っとるのは見たことがないな。なんだ、気に入ったのか?」
「そうなんですか……。残念です。
はい、酒に合う味だなと思って、買っていきたいと思ったのですが。」
「なんだ、ジョージはいけるクチか。
今度良かったら飲みに行こう。」
「はい、ぜひ。」
「おーい、ナナリー。」
ヴァッシュさんが手を上げてお孫さんを呼んだ。
「なあに?おじいちゃん。」
ナナリーさんがカウンターの奥からやって来る。
「ジョージがお前の作っとるママガッソを気に入ったらしい。
少し分けてやってもらえんか。」
「そうなの?ちょっと待っててね。」
そう言って再びカウンターの奥へと消えていく。
408
お気に入りに追加
1,873
あなたにおすすめの小説
元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました
きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。
元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。
もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
オタクな母娘が異世界転生しちゃいました
yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。
二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか!
ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?
今のは勇者スキルではない、村人スキルだ ~複合スキルが最強すぎるが、真の勇者スキルはもっと強いに違いない(思いこみ)~
ねぎさんしょ
ファンタジー
【完結保証】15万字足らず、約60話にて第一部完結します!
勇者の血筋に生まれながらにしてジョブ適性が『村人』であるレジードは、生家を追い出されたのち、自力で勇者になるべく修行を重ねた。努力が実らないまま生涯の幕を閉じるも、転生により『勇者』の適性を得る。
しかしレジードの勇者適性は、自分のステータス画面にそう表示されているだけ。
他者から確認すると相変わらず村人であり、所持しているはずの勇者スキルすら発動しないことがわかる。
自分は勇者なのか、そうでないのか。
ふしぎに思うレジードだったが、そもそも彼は転生前から汎用アビリティ『複合技能』の極致にまで熟達しており、あらゆるジョブのスキルを村人スキルで再現することができた。
圧倒的な火力、隙のない肉体強化、便利な生活サポート等々。
「勇者こそ至高、勇者スキルこそ最強。俺はまだまだ、生家<イルケシス>に及ばない」
そう思いこんでいるのはレジード当人のみ。
転生後に出会った騎士の少女。
転生後に再会したエルフの弟子。
楽しい仲間に囲まれて、レジードは自分自身の『勇者』を追い求めてゆく。
勇者スキルを使うための村人スキルで、最強を証明しながら……
※カクヨム様、小説家になろう様でも連載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる