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第3章

第456話 神々だけの知る秘密

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「ごめんなさい、お騒がせして。ちょっと取り乱しちゃって……。」
 意識を取り戻したヒルデが、咳払いをしながら目を閉じてそう言った。

「仕方がないわ、ヒルデさん。だって急にたくさんの神々と直接お会いしたんだもの。
 私も正直気絶しそう。」
 とミーニャが言った。

「でもまだ正直実感がわかないと言うか、頭はそうだと感じていて、混乱しちゃったんだけど、心が受け止めきれてないの。」
 とヒルデが胸を押さえつつ言う。

「そうなの?なら、証明しましょうか?」
「え。」
 ミボルフィア姉さまが笑顔でそう言ったものだから、ヒルデの目が丸くなる。

「そうだね、ここなら僕たちの領域ともつながっているし、力が使いやすいしね。
 見てて、ヒルデ。窓の外を。」
「──窓の外?」

 言うが早いか、外が突然の大雨になった。そして強い風が窓を打ち付けて、続いてそれが雹へと変わり、大きな物音を立てる。

「て、天気が急に変わった……?」
「マルグス兄さま、僕の城をいきなり壊すつもりですか!?」
「まだまだぁ!」

「私がやるわ、マルグス。」
 ミボルフィア姉さまがそう言うと、窓に強い風で打ち付けられていた雹が、ひらひらと舞い散るピンク色の花びらへと変わった。

「わ、キレイ……!」
 ミーニャが嬉しそうに窓を開けて、手のひらに飛んでいる花びらを受け止めている。

「な、ななななな……!」
 ヒルデはもう、大混乱だ。
「げ、幻覚、これは幻覚よ……!」
 両頬を押さえてそう叫んでいる。

「なら、触れられればどうかしら?
 ほら、こんなのはどう?
 新しい妖精を生んであげる!」

 空中に蕾が生まれたかと思うと、ポン、ポン、と音を立ててそれが開き、花の中央に小鳥や小動物が現れて、小鳥は羽ばたき、小動物は花ごと窓から入ってヒルデの頭や肩に乗り、自由自在に体の上で遊びだした。

 ヒルデはプルプルと震えながら、これは夢だわ……、これは夢よ……と、まだ信じられないらしくて、そう繰り返している。

 ミーニャはもうすっかり今の状況を受け入れて、リスや小鳥の姿をした妖精たちと、楽しげに戯れていた。……かあいい。

「えー、まだ駄目なの?どうすれば信じてくれるのかなあ。自分が自分である証明をするって、案外難しいんだねえ。」

「ふむ。ならば私たちにしかわからないことを教えてやろうではないか。」
 ディダ姉さまが顎に人差し指を当てつつ、ニヤリと笑う。

「そうだな!我らの可愛い弟の妻の座を射止めたからには、なんとしても我らを受け入れてもらわねばな!」
 レスタト兄さままでそう言い始める。

「兄さまたち、何をなさるおつもりなんですか?あまり変なことは……。」
「何、心配するでない。」
 とレスタト兄さまは胸を張った。

「ふむ、そういうことでしたら、まずは僕から。ヒルデさんは4歳の時、おねしょをしたことを隠す為に、わざと花瓶を割ってベッドを水浸しにしましたね。」

「え。」
「おかげでおねしょはバレませんでしたが、ベッドに割れた花瓶の欠片が入り込んで、藁を使えなくしてしまい、結局ご両親に怒られてしまいました。」

「な、ななな……。」
「6歳の頃は、人を落とし穴に落とすことにハマっていたのだったな。」

「教会の祭司さまが落ちてしまって、捻挫させてしまったのよねえ。」
「あの時も大目玉だったよな!」
 随分とやんちゃだったんだね?

「初めて好きになったのは、村にたまに来る行商人の息子さんだったわねえ。恥ずかしくてずっとツンツンしていたら、気持ちも伝えられないうちに、お嫁さんを連れて来られて泣いたのよねえ。確か8歳だったかしら。」

「え!?えええ!?な、なんでそれを、うちの家族だって知らないのに……!」
 ヒルデが青くなったり、赤くなったりして随分と忙しい。

「最近は刺繍にハマっているのよね?」
「そういえばいつアレックスに渡すんだ?
 あのハンカチ。」
 ガレシア兄さまがヒルデに尋ねる。

「刺繍?ハンカチ?」
 初めて聞く話ばかりだ。
「いやあああああ!」
 ヒルデが真っ赤になって悲鳴を上げる。

「え?ヒルデ、僕に刺繍したハンカチをくれようとしていたの?」
 恋人や奥さんからの刺繍入りのハンカチは贈り物の定番だし、特に初めて女性が刺繍したものは、お守りとされているんだよね。

「え、僕、欲しいな。
 くれないの?ヒルデ。」
「だ、だって、ミーニャから、すっごい上手なの、もらってたじゃないの、あんた!」

 確かにミーニャがくれた刺繍入りのハンカチを、お守り代わりにしてるけど。
「え?だって、僕の為に刺してくれた刺繍でしょう?そんなの、欲しいに決まってるじゃない。お守りのつもりだったんでしょ?」

「そ、そう、だけど……。」
 そう言ってミーニャをチラリと見ている。
「アレックスのそれ、本音だから。
 渡しちゃいなさいよ、ヒルデさん。」

「そ?そう、だったら……。はい。」
 ずっと持ち歩いていたのか、腰に下げていた小さなマジックバックの中から、刺繍したハンカチを取り出して僕にくれるヒルデ。

 僕がありがとう、と言って受け取ると、ヒルデはホッとしたように、ミーニャに近付いて何やら嬉しそうに話し合っている。

 え?僕じゃなくてミーニャに行くの?なんか知らない間に、2人、仲良くなってる?
 いいことだけどなんか寂しいかも……。

────────────────────

アレックスの本音が不安で素直になれないヒルデは、毎回アレックス評論家のミーニャに確認や相談をするようになり、そこからだいぶ親しくなっています。

ミーニャは第1夫人として、今後も増えるであろう妻たちのサポートや、メンタルケアをするつもりでいます。
ミーニャがいてこそ、成り立つハーレム。
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